【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

文字の大きさ
63 / 97
3章:竜の国 ユミルトゥス

スターリング領 2話

しおりを挟む
 ◆◆◆

 翌日、空は快晴。

 まるで、私たちのことを歓迎してくれているみたい。

 ローレンとチェルシーは私服、私も動きやすいドレスに着替えて朝食前に屋敷を出た。

 馬車に乗って揺られること三十分ほど。

 どんどんと中心部に近づいているのだろう。人々の賑やかな声が耳に届く。

 馬車の窓から外を眺めると、市場が開かれているのか、とても人が多い!

「すごいですね……」
「早朝はいつもこんな感じだよ。朝市が開かれているから、結構賑やかなんだ」

 朝市……! とじっくりと外を眺めていると、彼は「行ってみる?」と提案してくれた。

 その言葉にパァッと表情を明るくさせて、こくりとうなずく。

「じゃあ、近くで降りて見てみよう」
「楽しみですわ」

 近くに馬車をとめて、フィリベルトさまが先に降りる。

 すっと手を差し伸べたので、その手を取って馬車を下りた。

 そのあと、別の馬車に乗っていたローレンとチェルシーも降りてきて、私たちに近づいてくる。

「なんだかとっても賑やかですね!」
「どんなものが売られているのか、気になります」

 私たちは今日一日、スターリング領を楽しもうと思い、気合を入れていろいろと準備をしたの。

 歩きやすい服装に靴はもちろん、朝食も街でいただこうと思い、屋敷の食事の前に出発したのだ。

「ジェレミー、デリック、お前たちのほうがここら辺は詳しかったな?」

 ローレンとチェルシーの隣には、スターリング領でフィリベルトさまの護衛をしていた騎士の二人。

 サクリアナ王国で聞いていた、物語を書いている騎士がジェレミー、恋人を募集しているのがデリックだと紹介していただいたの。

 ジェレミーはローレン、デリックはチェルシーの隣にいる。

 ちらちらと彼女たちを見ているのは、どうやって声をかければいいのか悩んでいるから?

「うーん、なんだかいい匂いがしますね……」
「朝市でいろんなものを売っているので……チェルシーさんは、どんなものがお好きですか?」

 チェルシーがくんくんと辺りの匂いを嗅いで、しみじみとつぶやいた。

 すかさず、デリックが彼女の好みを聞き出そうとしている。

「美味しいものならなんでも! デリックさんは?」
「俺は貝類が好きですね。美味しいんですよ」
「わぁ、食べてみたいです!」

 うん、私も食べてみたい。

 なんて考えながら、彼女たちの会話を聞いて、心を和ませた。

 その一方で、ジェレミーが目をキラキラとさせながら、ローレンと会話しようとがんばっている姿が視界に入る。

 おそらく、ローレンのほうが年上ね。何歳なのかしら、彼。

「ローレンさんは、趣味をお持ちですか?」

「ええ。読書が趣味です」
「読書……あの、どんな本がお好きなのか、教えていただけますか?」

 と、こちらもローレンのことを知ろうと、いろいろ質問していた。

 私はフィリベルトさまを見上げる。

 婚約者と、侍女たち、さらに彼の護衛たちと一緒に歩くのって、なんだかとても楽しいわ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...