でんじゃらすでございます

打ち出の小槌

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第四章 才蔵のしくじり

(二)伊賀の里

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ふらりと歩き屋敷の端の、太い柿の木にもたれた。
ふんと口元がへの字になる。
少々いまいましい。
えい、甘酒ごときにふらふら。あの、おたんこは濁酒もけろりなのに。いや、紅丸さまに酔ったのか・・
きらきらと星が瞬く。
ふと、才蔵がにっと笑う。
「やあ。ちびのお猿やないか」
木の上から葉がひらり。
「お猿やない。子助や」
才蔵は、あははっ。
「さては、猿飛は安土にいってたな。そのおいてけぼりか」
返事がない。
「当たり。足手まといは、いらんな」
「や、やかましい。小助はお役目があるの」
「あら、なんの」
「紅丸屋敷をのぞく」
「ほう」
木にいるのがばればれでなにをいう。げらげらとなるのをこらえた。
「なにをのぞく」
「あそこは、なにかある」
「なら、敵にしゃべらせてみるという手もある」
「狐葉の兄いはしゃべるの」
「うふ。やってみたら」
「ま、まず紅丸さまは他所ものという。なのに今では、まるで頭のよう。小助はそれがなにかある」
「そも、柘植の頭の京の女とか。頭が病のあとは、ちゃっかり仕切ってる。ほんとのところはさっぱり」
「あの屋敷はよいとも、わるいともいう。小助はそれがなにかある」
「あそこはよく世話を焼く。おいらをはじめ他で弾かれたもの、使えぬものも拾ってくれる。ほれ、黒丸や白丸も。となると、こき使われるやつらも寄ってくる。腕のあるやつもちらほら。それが上は気に入らない。やれ、出来そこない、役立たずどもといいふらす」
「なら、小頭の猿飛の兄いは、なにゆえゆく。なにかあるからゆくのだろう」
才蔵は吹いた。
「あれは食いもの。鍋婆さまの飯を喰いに寄ってる。せっかくの、山菜の炊き込み飯をひとりで平らげやがった。筍もらったらから、ちゃらだけど」
「あ、相手を油断させて・・」
「おいらじゃあるまいし。おたんこのことはよく知ってるだろ」
「お、おう」
「ふっ。ともあれ、猿飛の二代目がちょくちょく来るから、嫌がらせはぱったり」
返事がない。
屋敷ではどっと笑いがあった。
「なあ、里の屋敷であれくらい楽しいところは、他にある」
返事がない。
「なら、のぞいてこい。ここじゃ冷える。あそこの汁飯はやたら美味いぞ」
ごくりと生唾があったが、もじもじしてる。
「ほれ、敵の懐に飛び込んでこそ、いっちょ前だろ」
すると、とんと下りてきた。
ちっちゃい顔をくいと上げる。
「ならば小助はゆく。あとで猿飛の兄いに知らせな」
「うむ。いってこい」
きらっと目を光らせ小助は走る。やがて屋敷から、ちびのお猿がきたと笑いがあった。
才蔵はこきと首を鳴らす。
「こっちは厠へ」
と、その足がぴたと止まった。
なに・・
「やあ、うまいもんや。もう小助を手なずけたんか」
ちっ、いらぬ客か・・
「やるなら、おたんこの声音はもっと弾む。陰気臭いのは抜けぬな、ましら」
ひたり。
柿木の後ろから、ずんぐりした者が出て来た。
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