でんじゃらすでございます

打ち出の小槌

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第五章 白鈴の文

(六)正体は、さとり

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「ゆえに、とにもかくにも、ぶちりとやらか」
千石はおつむをひねる。
「もとは、ましらというひとらしいが、いまは猿のもののけとな」
「えたいの知れない」
小雪もおつむをひねる。
すっと阿国は立ち、そっと燭台を百学のわきに置いた。
「どう、調べてみたかい」
ええと、百学。
ゆらっと灯がゆれた。
「そも、ぶちりとは何なのか。そこまではなんとも。ただ、このぶちりと呼ばれる、もののけの類いは、なにか唐のにおいがする」
おうと王鈴がうなずく。
「霧やら幻は彭侯ほうこうやも、ひと喰らいは僵尸きょんしーやもね」
「やだね、お座敷で、きゅうきゅうって踊ってたよ」
千石がふむ。
「と、ぶちり猿も」
「明海は唐かぶれ。なら道教も深いはず。その呪術で呼ばれた、やからかも」
「おっと、あれか、絵巻草紙に安部のなんたらの陰陽師が、式神という鬼を呼ぶという、あれなのか」
「その陰陽道こそ、元をたどれば、唐の道教の呪術」
ひたと、小雪がつめ寄った。
「唐の呪術ゆえ、唐の鬼やらなの」
あるいはと百学。
「ただ、さすがに鬼を操るまでの腕はなかった」
「それが、このてんやわんやかね」
阿国はふむとなる。
ふうっと千石がため息をついた。
「道理で、和国のものには手を焼くわけか」
ぷいと、王鈴に向き直る。
「唐には唐」
はいと百学も相槌を打つ。
「鈴々さんの、鐘とやら」
ふふっと千石は笑う。
「こっちは、術はからっきしだが、それでもお陀仏にするものはねえか」
ようやく王鈴の瞳がきらりとなった。
「はいな。ならば、唐の武具ね。いよいよ秘宝を披露するよ」
よっこらと腰を上げた。
「それはこの船蔵だな。まさか店のままの、がらくたじゃねえだろうな」
「ふん、魂消るよ」

がちゃり。
錠前を外す音がした。ぎいと、船蔵の扉は重たそうに開く。
手燭を手に王鈴が入る。狭い階段を千石に百学、そして阿国に、なぜか小首を傾げる小雪が下りてゆく。みしみし音をさせ船底へ下りた。
鉄枠の扉を開け、王鈴が手燭の火を壁の燭台に灯す。
あっとなった。
床には所狭しと鎧やら兜がごろごろ。壁には唐の槍に青龍刀、それに牛刀や火縄銃まで飾られてあった。
蔵の中ほどに大きな卓が一つ。そこに壺や絵皿や人形の類い。さらに蓋の空いた鉄箱が置かれ、そこからあふれる指輪や宝石の数々。
蔵の奥まった処には瓶が三つ。一つは人参のような草根、一つは褐色の香木のようなもの、もう一つは干物に皮。
そばの棚には鐘に数珠、さらにお札がそれぞれ並べてある。そして、天井からは紐が垂れる黄色や赤色の紙の大玉がいくつもぶら下がってる。
「魂消たねえ」
阿国の瞳が真ん丸になった。
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