12年目の恋物語

真矢すみれ

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番外編1 初めてのお見舞い

本編

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「ハル、そろそろ、みんな来る時間だよ」

 あの騒動から、ちょうど一週間目となる月曜日、午後二時前。
 オレはベッドで昼寝中のハルに声をかけた。
 天気は上々。窓の外には、初夏の日差しを受けた夏の花が咲き誇る。

「ハール」

 ハルの覚醒を促すように、そっとハルの頬に手を添える。ついでに、おでこをコツンと合わせて確認。
 よし、熱はない。

「……ん」

 ハルのまぶたがピクリと震えた。

「おはよう、ハル」

 まだ目の開かないハルにおはようのキスを落とす。

「……おは…よう」

 ようやく目を開けたハル。だけど、焦点はまだ合わない。
 祝日の今日、海堂、河野、今井、本城……グループワークの班のみんなが家に訪ねて来ることになっている。



 春から続いたあれこれに片が付いたその夜、ハルは体調を崩した。
 張りつめていた緊張が解けて、疲れがどっと出たようで、夜中に発作を起こして救急搬送。
 入院後も不整脈がなかなか治まらず、本当に心配した。
 熱ぐらいなら家でも療養できるけど、不整脈だとそうはいかない。何かあったら即命に関わるから。
 そんな訳で、一週間ほど入院し、昨日、ようやく退院してきたところだ。

「気分はどう?」

 不整脈こそ治まったけど、決して万全の体調ではない。それでも、出席日数を心配して、早めの退院を希望したハル。
 大学からは事情を考慮して、最大限の配慮をするからとは言われているけど、……その言葉にどっぷり甘えられたら、多分、それはもうハルじゃないんだろうな。

「ん。……大丈夫」

 ふわあっと小さなあくびを一つして、ハルはにこっと笑顔を見せた。

「どうする? ここに通す?」

 見舞いに来たいと言う海堂たちを受け入れると決めたのはハルだった。

「……起きる」

 そう言って、ハルは気だるげに身体を起こした。ハルの身体を支えながら、

「しんどかったら、寝てていいんだよ?」

 と声をかけるけど、ハルは小さく左右に首を振った。

「大丈夫」

 そして、もう一度、小さなあくびをした。

「今、何時?」

「二時、三分前」

「え? じゃあもう、来ちゃう?」

 ハルが驚いたように目を見開く。

「そろそろかな」

「ごめんね」

 そう言いながら、ハルはベッドから足を下ろした。

「ギリギリに起こしたのも、来客があるから昼寝をしないって言うのを無理に寝かせたのもオレだよ」

 笑いながら、ハルが立ち上がるのをそっと手伝う。
 よし、顔色も悪くないし、ふらついてもいない。
 これなら起きていても大丈夫かな?
 来客があるからって、ハルが着ているのはパジャマじゃなくてしわになりにくいゆったりとしたワンピース。それに、薄手のカーディガンを羽織らせる。

「はい、ハル」

「ありがとう」

 ハルはニコッと優しい笑顔を浮かべて、オレを見上げる。
 可愛い! 抱きしめたい!
 と言うか、思うと同時に、もう抱きしめていた。
 そのまま、手ぐしでハルの髪を整える。
 準備完了。このままリビングに移動すればいい。
 その時、ピンポーンと遠くでインターホンが鳴るのが聞こえた。

「来たかな?」

「わ。大変」

 ハルが慌てて移動しようとするのを止める。

「沙代さんが、リビングに通してくれるから、慌てなくても大丈夫だよ」

「でも」

「ハル。みんな、遊びに来るんじゃなくて、ハルのお見舞いにくるんだからね? ハルは無理しない。じゃなきゃ、おかしいでしょ?」

「……はい」

 少しばかり納得のいかなさそうなハルの頭をぐりぐりなでて、頬にキスをして、それから二人でリビングへと向かった。



「ハルちゃん! 起きてて大丈夫なの!?」

 リビングへのドアを開けると、今井が飛駆け寄ってくる。

「あ、うん。大丈夫。心配かけてごめんね」

 そう答えながら、ハルは穏やかに微笑んだ。

「座ろうか?」

 そう言って、ハルの肩を抱いてソファへ誘導。

「みんなも座ってね」

 と、リビングへ目をやった瞬間、予定外の人物を見つけて、視線が止まる。
 ……え? なんで、えみちゃん?
 ローテーブルを挟んだ向こうでは、少しばかり小さくなって、両手を振るえみちゃんがいた。

「班メンバーで集まるって聞いたんだけど、どうしてもお見舞い来たくて。混ざっちゃって、ごめんね」

 えみちゃんの言葉にどう答えようかと迷っていると、ハルが笑顔で言葉を返した。

「ううん。お休みの日にわざわざありがとう」

 ……あれ?
 内心首を傾げていると、ハルは「あ」と声を上げ、オレを見上げて申しわけなさそうな顔をした。

「ごめんね、カナ」

「ん?」

「あの……昨日、えみちゃんからメールもらって、わたしが、ぜひ来てってお返事したの。……で、うっかりカナに言い忘れちゃった」

 ああ、なるほど。
 いくらハルに四六時中張りついてるって兄貴にからかわれても、本当に二十四時間な訳もなく、当然、死角はある。

「謝ることないよ」

 そう言って、ハルを抱き寄せ頭にキスを落とす。
 瞬間、えみちゃんを筆頭に女子三人が歓声を上げる。多分、オレは今、とろけそうなと兄貴が言うところの、甘すぎる表情をさらしているのだろう。

「……カナ」

 ハルが困った顔でオレを押し戻すのを見て、今度は部屋の中に笑い声が満ち溢れた。

「あ、飲み物準備するよ。何がいいかな? コーヒー、紅茶、ハーブティー、日本茶、中国茶……。ケーキあるからジュースはなしかな」

「種類多過ぎだろっ!」

 海堂が突っ込み、また笑い声があふれる。

「で、海堂は何がいい?」

「何でもいいから合わせる」

「別にバラバラでいいけど」

 そんなことを話している間に、いつの間にか本城が女子を取りまとめていた。

「コーヒー1つ、紅茶2つで!」

「了解」

 河野と海堂にも確認した後、ハルにも聞く。

「ハルはどうする?」

「んー、ミルクティがいいな」

「了解。沙代さんに頼んでくるね」

「ありがとう」

 にっこり微笑むハルが可愛すぎて、思わず頬にキスをすると、

「カナ!」

 と怒られた。
 うーん。家だと抑えが効かない。

「ごめんごめん」

 謝りながら抱きしめると、

「もう」

 と腕の中から諦めたような声が聞こえてきた。




「ムチャクチャ豪邸で、家間違ってたらどうしよって、インターホン押すまで三分悩んだよ」

「三分はないでしょ、三分は!」

「お庭も広そうだよね~」

「広そうってか、明らかに広いよね?」

「公園みたい!」



「え、うそ、このケーキ全部手作りなの!?」

「三種類もあるんだけど!」

「しかも、すごく美味しいし!」



「この紅茶もムチャクチャ美味しい!」

「コーヒーも旨いよ」

「そこらのカフェとか目じゃないね」



「あ、そうだ、お見舞い!」

「わ、ごめん! 出し忘れてた~!」

「ハルちゃん、ゼリーが好きって聞いたから、フルーツゼリーの詰め合わせ。ささやかだけど」

「みんなからだよ」



「ねえねえ、あそこに飾ってある写真、もしかして結婚式の!?」

「わ~、見せて見せて!」

「ハルちゃん、可愛い~!」

「あれ? どっかで見た人がいる」

「え? 大学院生のお兄さん? キャー、紹介して~!」



 女子三人が中心となってしゃべる場はとにかくにぎやかで。
 オレは割と平気で会話に混ざるけど、河野は若干引いてて、海堂は少しばかりあきれ顔。
 ハルはと言うと、にこにこと笑顔で話を聞きながら、たまに聞かれたことに答えていた。



「そう言えば、演習の授業、先生変わるって噂あるけど、どうなんだろう」

 不意に海堂が話題を変えた。

「それホント? こんな中途な時期に」

「でも先週の火曜日から、全部の授業休んでるって」

「病気じゃない?」

「インフルエンザとか?」

 オレの方を見てニヤッと笑いながらの河野の言葉に、また笑い声があふれた。



 山野先生の研究室を訪ねた翌日、お義父さんが在宅の夜、学園長と大学長、それから学部長の久保田教授がうちに来た。
 ハルは病院、お義母さんも病院で仕事中ってことで、お義父さんとオレの二人で応対。
 ハルはICUに入れられていたから、その日、オレは病院に泊まることができなかった。そうでなかったら、心配で、たとえ数時間でもハルの側を離れられなかったかも知れない。

「本当に申し訳ありませんでした!」

 地位も名誉もある大人が三人揃って頭を下げる姿は、なかなか壮観だった。
 でも、少しばかり違和感を感じた。やった本人は来ないんだ、って。
 ひたすら平謝りする三人に笑顔で応対していたお義父さんは、実は静かな怒りを内包していたようで、小気味よく嫌みを飛ばす。

「いや、杜蔵学園に預けておけば安心だと思っていたんですよ。高等部までは本当に良くして頂いてましたし」

「娘から、経営学について教えて欲しいと言われて、素直に教えた私も馬鹿でした。まさか、大学の准教授ともあろう人が、このような事をするとは」

「ああ、そうだ。先生方は聞きましたか? 准教授の話された内容。……え? ああ、教授からのまた聞きですか。それでは、正確な判断はできないでしょう。叶太くん、データをお渡ししたら? あれは、やっぱり聞いていただいた方が良いだろう」

「いや、娘への見舞は結構です。ここにはいませんし。入学以来の疲れが溜まっているようでね、昨日の夜、発作を起こして救急車で運ばれて入院しました。医者から面会を禁じられていますから」

「まあ、本当に色んな人がいますからね。相手の人間性まで見極めて採用するのは、なかなか難しいでしょう。ええ、それは重々承知しているんですよ。
 ただね、まさか、重病を患っているから配慮をお願いしたいと、入学前からお願いに上がっていたのに、狙い撃ちでこのような目にあわされるとは、さすがに……。
 いや、どのようにしたら、そういう人間を排除できるのか、もし良策を思いついたら、ぜひ教えて下さい。私も採用の際に試したいですから」

 お義父さんの繰り出す言葉に、先生たちは冷や汗をかきつつ、ひたすら謝り続けていた。
 俺が渡した音声データを確認して、明日また来ると言って、その日は帰って行った。
 そして翌日、改めてやってきた先生方から聞かされたのは、山野先生の懲戒免職処分だった。



 尽きることない他愛のない会話をどれくらい聞いた頃だろう?
 ハルが何度か小さくあくびをした。

「ハル、大丈夫?」

「……うん」

 だけど、覗き込んだハルの目はトロンとしていて、かなり眠そう。
 これはそろそろ休ませないと、とタイミングを計っていると、左肩にトンとハルの重みが加わった。見ると、ウトウトと小さな寝息を立てはじめたハル。
 ゆらゆらと身体が揺れて反対側に傾きそうになった瞬間、手を添えて、自分の方に抱き寄せた。

「あれ? ハルちゃん、寝ちゃった?」

「可愛い~」

「安心しきってるね」

 女子の言葉に続いて、

「いや、疲れたんだろ? そろそろ失礼しようか」

 と河野が言うのを受けて、当初の目的を思い出した本城が慌てて答えた。

「そっか、そうだよね。昨日まで入院してたんだよね。まだ体調悪いよね」

 今井が心配そうにハルに目を向けた。

「ごめんね、長居しちゃって」

「いや、大丈夫」

「部屋で寝かしてやったら?」

 海堂の言葉にどうしようかと一瞬迷い、頭をなでながら、ハルに声をかけた。

「ハル、部屋行こうか?」

 そう聞くと、ハルがわずかに身じろぎした。
 やっぱり、まだ何となく意識あるよな。
 と思っていると、ハルが囁くように何かを言った。

「……や……に、…る」

 イヤ、ここにいる、かな?
 どうやら、ハルはこのにぎやかな空気が心地よいらしい。
 そのまま、ハルはもたれていたオレの半身からずるりと滑り落ちるようにして、オレの膝に頭を落とした。

「え、ハルちゃん!?」

 えみちゃんが驚いたように立ち上がる。

「あ、大丈夫。寝てるだけだから」

 オレはハルの身体を少し動かして、楽な体勢にする。
 一人で部屋に戻りたくないのなら、もう少し眠りが深くなるまで、リビングにいればいい。

「でも」

「あ、じゃあ、そのピアノの横にある籠の中から、タオルケット取ってくれる?」

「うん! ちょっと待ってね」

 えみちゃんは急ぎ足でピアノの方に移動して、「これかな?」と籠の中からタオルケットを取り出した。

「うわ。すごく軽くて柔らかい」

「気持ちいいだろ? 六重ガーゼなんだって」

 手を伸ばして受け取り、ふわりとハルにかける。
 軽すぎてすぐには落ちてこない上掛けがハルの身体に沿うのを待ってから、裾を引き掛けなおす。ついでに、ハルの髪をなでながら整えていると、

「愛しくて仕方ないって空気、ダダ洩れだよね」

 えみちゃんが感心したように言い、女子二人がまた笑った。

「そりゃもう、愛しすぎてとても隠しきれないでしょ」

 その言葉に、また場が沸く。
 今、ハルが起きていたら、きっと真っ赤になるんだろうな。
 なんて、そんなことを思いながら、ハルの髪をなで、背をなで……。

 それから、十分くらい話した後、誰からともなく、そろそろお開きにしようかという空気となった。

「休みの日に、長々とごめんね」

「ハルちゃん、疲れちゃったかな?」

「明日、学校来れそう?」

 みんな代わる代わる、ハルの顔を見に来ては何かしらの声をかけていく。
 だけど、ハルはぐっすり眠っていて目を覚まさない。

「今度はハルちゃん、元気な時に遊びたいね」

「そうだね。涼しくなったら、ぜひ」

 今既に良くない体調は、夏本番になると、もっと悪くなる。土日は多分、ほとんど起きられない。
 その上、夏休みの最初は例年通り検査入院の予定で、その後は別荘で避暑。

「今日は本当にありがとう」

 ハルの背に手を置きながら、座ったままであいさつしていると、沙代さんがリビングの入り口から声をかけてくれた。

「叶太さん、お車の準備ができましたよ」

「ありがとう」

「こちらへどうぞ」

 沙代さんの言葉に促されて、一人、また一人とリビングを後にした。
 オレは見送りはパス。ハルの側を離れる気にはとてもならない。
 最後にえみちゃんが、ハルの顔を覗き込んで、

「ハルちゃん、またね」

 と声をかけ、オレに向かって軽く両手を合わせた。

「ホントごめんね、突然、お邪魔しちゃって」

「ううん。ハル、すごく楽しそうだった。来てくれてありがとう。これからもよろしく」

 そう。
 苦手なタイプかと思っていたけど、気が付くとハルはえみちゃんとすっかり仲良くなっていたらしい。いつかのカフェでも、ハルはとても楽しそうにおしゃべりに興じていた。

「ありがとう!」

 えみちゃんはニコリと満面の笑みを浮かべた。

「それじゃあ、ハルちゃん、お大事に!」

「ああ、気を付けて帰ってね」



 みんなが帰った後、ハルをベッドに寝かせて、同じ部屋でオレは課題を片付ける。
 途中、よく分からない箇所が出て来ると、ついハルの方を振り返ってしまう。オレが頭を悩ませるところも、ハルにはまったく問題がないようで、いつも考えることもなくサラリと教えてくれる。
 たまに、ハルの頭の中は一体どうなっているんだろう?と思う。
 だけどきっと、それは、ハルが幼い頃から、ずっと、コツコツと積み重ねてきたものの集大成。テスト前しか勉強しないようなオレとは違って、ハルはきっと体調が許す限りいつも勉強していたのだろうから。
 だから、ハルの頭の良さをねたんだりするのは、絶対に違うと思うんだ。

 そんな事を考えていると、腹の奥から、また怒りがふつふつと湧き上がって来る。
 ……いや、それはもう終わったことだから。
 決して忘れられないし、忘れてはいけないとは思うけど、ここで怒りを再燃させるのは違うだろ。
 ふうっと息を吐き、深呼吸をする。
 ……ハルの顔見て落ち着こう。
 やりかけの課題を置いて、立ち上がると、大きく伸びをする。
 やっぱ、身体動かすと気持ちいい。

 そっか。ハルがコツコツと頭を鍛え続けてきたのだったら、オレは身体だな。
 オレより鍛えている人なんて幾らでもいるだろうけど、オレも結構頑張ってる方だとは思う。
 多分、ハルが勉強を意識し始めるのと同じ頃には、オレも身体を鍛えることを意識し始めていた。
 まったく方向性が違うけど、同じくらいの年月頑張って来たというハルとの共通点を見つけて、オレの気持ちは大きく浮上する。

 気が付くと表情が緩み、笑顔が溢れる。
 緩みきった顔のままにハルの方へと向かうと、ただでさえだらしない顔が更に緩むのを感じた。
 カーテン越しに差し込む夕刻の柔らかな光に包まれたハルは、静かな寝息を立てていた。
 顔色は決して良くはないけど、入院中に比べたら、ずっといい。
 退院翌日に、知り合って日の浅い友人たちのお見舞い。疲れたのだろうけど、ハルはとても楽しそうにしていた。

 思えば、高校までの友人たちで、家まで来るのは志穂や斎藤たちくらいで、本当に少ししかいない。
 ……まあ、私立のせいで、みんな遠くから通ってたからってのもあるだろうけど。
 放課後や土日に遊びに行ったりは、ハルには多分荷が重い。体力が持たないだろう。だけど、たまに家で遊ぶくらいは良いのかも知れない。
 それもこれも、夏が終わってからの話か。

 そのまま、まったりとハルの枕元の椅子に座ろうとした瞬間、我に返る。
 ……いかんいかん。宿題しよ。
 ハルが起きている時は、できる限りハルの側でハルを見つめていたいから、脳みそのできが今一つのオレは、ハルの寝ている間にやることをやっておかなきゃダメなんだ。
 ハルを起こさないように、そっとハルの髪に手を触れる。
 緩いカーブを描いた髪を触っていると、ハル自身に触れたくてたまらなくなる。
 ……大丈夫かな?
 そっと髪の毛越しに頭に触れて、続いて、頬に手を動かす。
 一瞬、ハルが小さく身じろぎしたので慌てたけど、起きる気配はなく、静かな寝息はそのままで……。
 だから、思わず、これが最後とばかりに、ハルのおでこにささやかに口付ける。

 また、後でね。
 ハル、大好きだよ。
 声には出さず、心でそう語りかけ、オレは後ろ髪引かれながら、課題の待つデスクへと戻った。
 背中にハルの気配を感じられる幸せを噛みしめながら。


 《 完 》
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