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動いた運命、王都までの道程
5話 絶対絶命
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「君たちには、これから私の国へ来てもらう。もちろんずっと居ろとは言わない。元の世界に帰る方法が見つかるまででいい」
「信じられないな。俺たちをこの世界に喚んだ奴は俺たちを利用しようとしていた。あなた達もそうでないという理由がない」
鏡は抱いた不信感のままやや食い気味に話した。
「確かに、連合軍にも保護という名目で君達を受け入れ、気づかれないうちに兵士として育てようと考える国もあるかもしれないな」
「……」
エウレナは自身の言葉を疑う鏡に対して毅然とした態度で言う。
「だが私達は違う。私達の国は異世界人であったとされる勇者が暮らしていた国だ。勇者に幾度と無く危機から救われた。私達はその勇者から、もし異世界人が来たとき彼らを助けてほしいと頼まれていたんだ」
話すうちにエウレナの目つきがより一層真剣なものに変わる。
「ウォークの誇りにかけて、私達はあなた達をこの世界のすべての謀略と悪意から守ると誓おう」
武器を携えている側の左膝を立てて右膝を付き、目線を下げる。
洗練された所作で繰り出された片膝付きにコウトたちは戸惑ってしまう。
「私はいいと思うよ、王女さまがここまでするんだから。それに連合軍? 全体で決めたことなんじゃない?」
七篠が考えた通り、これは様々な国同士で組織された連合軍において代表達が話し合い決めたことだった。このことは異世界に住む人々にとって勇者という人物が尊重されるべき人だったということの証左でもあろう。
七篠の言葉に、確かにな。といった様子で他の5人にも了承するムードが漂う。
エウレナは顔を上げホッとした顔を見せた。
「ありがとう。この状況だ、私達の申し出は断られてもしょうがないと思っていたんだが……、受け入れてくれて安心した」
緊張が解けたからか、エウレナは安心したように笑った。彼女の容姿の端麗さ故か、その笑顔は今まで見たことがないほどに美麗でその場にいたほとんどの人間が僅かな時間だがその笑顔に見入る。コウトは彼女の笑顔が胸に溶けていくように感じた。
「帰る方法が見つかるまでと言っていましたが目処は立っているのですか?」
そんな中彼女の笑顔を物ともせずに鏡が言った。コウトは頬の1つも赤らめず、淡々と話す彼の正気を少しだけ疑った。驚いているコウトに森立が小声で言う。
「あんたがまだ寝てるときに言ってたけど、あいつ彼女いるのよ。だからあんなに必死になって元の世界に帰りたがってるってわけね。告白のためにたくさん努力したんだって言ってたわ」
なるほど、先程から彼が元の世界に帰りたがっているのは元の世界に愛する彼女を置いてきている事が理由のようだ。
エウレナの笑顔に動じないのもその為だとすると彼の愛の深さがうかがえる。
コウトが感心していると、不意に地面に魔法陣のようなものが浮かび上がった。
コウトは赤い光を放つそれに眩しさを感じ、目を逸らすように彼方を見る。
「今度は何よ!」
「またお前か!?」
「いや違いますって!!」
「これは……まずい、召喚魔法だ!」
エウレナが叫ぶと同時に、視線をむこうにやっていたコウトが一度まばたきをした間に、巨大な四足歩行の怪物が姿を表し轟音を上げる。
「何なんですかあいつ!」
コウトはエウレナに尋ねる。
「あれは多分……この地に眠るドラゴン。名前はノン・フォンジオーナ。私達この世界の人間はそう呼んでいる」
ドラゴンがもう一度咆哮すると大地が裂かれ、その亀裂から炎が噴き出す。
「どうしてアイツがここに現れたんだ……」
裂け続ける亀裂はコウト達の辺りを囲む。炎が噴出し、周りを覆われてしまう。
コウトが炎に意識を集中すると彼の瞳に四角が浮かぶ。炎は大量のマナを帯びていた。
「その目の模様、マナ知覚が使えるのか!?」
コウトの目を見たエウレナは驚いて言う。
「なかなか高位の魔法だぞ……持って生まれた性質に近い」
「そんなこと言ってる場合じゃないです! あと少しで炎の噴出が止まります、その時を見計らって急いで避難しましょう!!」
大地の裂け目の底に溜まるマナが尽きかけていた。マナがなくなれば退路を断っている炎が止むはずだ。
「そろそろです。3、2、1! 溜まっていたマナが消えました、今です!」
コウトのカウントとともに炎が消える。クリウルが亀裂を飛び越えて叫ぶ。
「お前らも来い!」
「無理ですよ……。俺たちにこの大きさの亀裂を飛び越える力はない!!」
絶望した表情を浮かべる鏡達にエウレナが言う。
「いや、できるはずだ。今や君達の体は元の世界にいた時のものではなく、この世界で活動できるよう調整された体になっているんだ」
「そんな……」
「なによそれ! 元の体じゃないってどういうこと!?」
エウレナの言葉に詰め寄る森立。だがクリウルの急かす声に今の状況を思い出し、優先順位をあらためる。
「すまないが今は説明している暇はないんだ。もし失敗しても私が助ける。早く行け!!」
すると不意に、タンッという軽快な音と共に七篠の体が亀裂の向こうへと飛び、ヒラリと着地する。助走をつけた様子はなかった。
「本当。力を少し入れるだけでいいんだ」
七篠は興奮した様子でこちらに呼びかけてきた。
その姿を見て覚悟を決めたのか鏡、森立、少し間を開けて谷嶋の順で亀裂を飛び越える。
怪物がもう一度攻撃を繰り出すために咆哮する。再び大地が裂け始めた。
コウトも裂け目を飛び越え、怪物を注視する。
体表からマナが溢れ、裂け目に流れ込んでいる。
「アレか……」
コウトはこのマナを炎に変えて噴出させるのがあのドラゴンの攻撃手段なのだと予想した。
「ッ!!」
エウレナは自身がいる場所にピンポイントで向かってきた亀裂に足を取られ、跳躍に失敗してしまう。
「エウレナさん!!」
エウレナはこれから襲い来る運命を予感し、強く瞳を閉じた。
――数秒後には噴き上がる炎に全身を焼かれ、苦しみの果てに死ぬのだろう――
死を受け入れるために空になる心。その心を諦めの感情が支配した。
「信じられないな。俺たちをこの世界に喚んだ奴は俺たちを利用しようとしていた。あなた達もそうでないという理由がない」
鏡は抱いた不信感のままやや食い気味に話した。
「確かに、連合軍にも保護という名目で君達を受け入れ、気づかれないうちに兵士として育てようと考える国もあるかもしれないな」
「……」
エウレナは自身の言葉を疑う鏡に対して毅然とした態度で言う。
「だが私達は違う。私達の国は異世界人であったとされる勇者が暮らしていた国だ。勇者に幾度と無く危機から救われた。私達はその勇者から、もし異世界人が来たとき彼らを助けてほしいと頼まれていたんだ」
話すうちにエウレナの目つきがより一層真剣なものに変わる。
「ウォークの誇りにかけて、私達はあなた達をこの世界のすべての謀略と悪意から守ると誓おう」
武器を携えている側の左膝を立てて右膝を付き、目線を下げる。
洗練された所作で繰り出された片膝付きにコウトたちは戸惑ってしまう。
「私はいいと思うよ、王女さまがここまでするんだから。それに連合軍? 全体で決めたことなんじゃない?」
七篠が考えた通り、これは様々な国同士で組織された連合軍において代表達が話し合い決めたことだった。このことは異世界に住む人々にとって勇者という人物が尊重されるべき人だったということの証左でもあろう。
七篠の言葉に、確かにな。といった様子で他の5人にも了承するムードが漂う。
エウレナは顔を上げホッとした顔を見せた。
「ありがとう。この状況だ、私達の申し出は断られてもしょうがないと思っていたんだが……、受け入れてくれて安心した」
緊張が解けたからか、エウレナは安心したように笑った。彼女の容姿の端麗さ故か、その笑顔は今まで見たことがないほどに美麗でその場にいたほとんどの人間が僅かな時間だがその笑顔に見入る。コウトは彼女の笑顔が胸に溶けていくように感じた。
「帰る方法が見つかるまでと言っていましたが目処は立っているのですか?」
そんな中彼女の笑顔を物ともせずに鏡が言った。コウトは頬の1つも赤らめず、淡々と話す彼の正気を少しだけ疑った。驚いているコウトに森立が小声で言う。
「あんたがまだ寝てるときに言ってたけど、あいつ彼女いるのよ。だからあんなに必死になって元の世界に帰りたがってるってわけね。告白のためにたくさん努力したんだって言ってたわ」
なるほど、先程から彼が元の世界に帰りたがっているのは元の世界に愛する彼女を置いてきている事が理由のようだ。
エウレナの笑顔に動じないのもその為だとすると彼の愛の深さがうかがえる。
コウトが感心していると、不意に地面に魔法陣のようなものが浮かび上がった。
コウトは赤い光を放つそれに眩しさを感じ、目を逸らすように彼方を見る。
「今度は何よ!」
「またお前か!?」
「いや違いますって!!」
「これは……まずい、召喚魔法だ!」
エウレナが叫ぶと同時に、視線をむこうにやっていたコウトが一度まばたきをした間に、巨大な四足歩行の怪物が姿を表し轟音を上げる。
「何なんですかあいつ!」
コウトはエウレナに尋ねる。
「あれは多分……この地に眠るドラゴン。名前はノン・フォンジオーナ。私達この世界の人間はそう呼んでいる」
ドラゴンがもう一度咆哮すると大地が裂かれ、その亀裂から炎が噴き出す。
「どうしてアイツがここに現れたんだ……」
裂け続ける亀裂はコウト達の辺りを囲む。炎が噴出し、周りを覆われてしまう。
コウトが炎に意識を集中すると彼の瞳に四角が浮かぶ。炎は大量のマナを帯びていた。
「その目の模様、マナ知覚が使えるのか!?」
コウトの目を見たエウレナは驚いて言う。
「なかなか高位の魔法だぞ……持って生まれた性質に近い」
「そんなこと言ってる場合じゃないです! あと少しで炎の噴出が止まります、その時を見計らって急いで避難しましょう!!」
大地の裂け目の底に溜まるマナが尽きかけていた。マナがなくなれば退路を断っている炎が止むはずだ。
「そろそろです。3、2、1! 溜まっていたマナが消えました、今です!」
コウトのカウントとともに炎が消える。クリウルが亀裂を飛び越えて叫ぶ。
「お前らも来い!」
「無理ですよ……。俺たちにこの大きさの亀裂を飛び越える力はない!!」
絶望した表情を浮かべる鏡達にエウレナが言う。
「いや、できるはずだ。今や君達の体は元の世界にいた時のものではなく、この世界で活動できるよう調整された体になっているんだ」
「そんな……」
「なによそれ! 元の体じゃないってどういうこと!?」
エウレナの言葉に詰め寄る森立。だがクリウルの急かす声に今の状況を思い出し、優先順位をあらためる。
「すまないが今は説明している暇はないんだ。もし失敗しても私が助ける。早く行け!!」
すると不意に、タンッという軽快な音と共に七篠の体が亀裂の向こうへと飛び、ヒラリと着地する。助走をつけた様子はなかった。
「本当。力を少し入れるだけでいいんだ」
七篠は興奮した様子でこちらに呼びかけてきた。
その姿を見て覚悟を決めたのか鏡、森立、少し間を開けて谷嶋の順で亀裂を飛び越える。
怪物がもう一度攻撃を繰り出すために咆哮する。再び大地が裂け始めた。
コウトも裂け目を飛び越え、怪物を注視する。
体表からマナが溢れ、裂け目に流れ込んでいる。
「アレか……」
コウトはこのマナを炎に変えて噴出させるのがあのドラゴンの攻撃手段なのだと予想した。
「ッ!!」
エウレナは自身がいる場所にピンポイントで向かってきた亀裂に足を取られ、跳躍に失敗してしまう。
「エウレナさん!!」
エウレナはこれから襲い来る運命を予感し、強く瞳を閉じた。
――数秒後には噴き上がる炎に全身を焼かれ、苦しみの果てに死ぬのだろう――
死を受け入れるために空になる心。その心を諦めの感情が支配した。
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