継ぐマホウ 〜曇り所により片頭痛、気がついたら異世界〜

パキ・パキ

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動いた運命、王都までの道程

14話 助ける理由

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「ごめん、それはできない」
「……どうしてだ?」

 聞き返す鏡の声は強く厳しい。

「七篠さん達が心配なんだ。合流したい」

 七篠達のことがコウトには気がかりだった。コウトの言葉に鏡は一瞬、呆れたような表情をした。

「コウト君、君はついさっきまで殺されるような目にあって心底怯えていたはずだよ。それなのにどうして危険な真似をしようと思えるんだ」

「確かに怖かった。けど七篠さん達だって同じ思いをしているかもしれない」
「ブレイグさん達はどうする気だ。ここにおいていくのか?」

 鏡は批判するような物言いだ。

「鏡くんが残ってくれれば――」
「駄目だ。君1人で戻ってあの怪物たちを相手にどうするつもりだ。逆に君がここに残ったとして、何かがあったときに2人を守れるのか?」
「……」

 ブレイグとミーラは魔法が使えない。コウトも相手に直接ダメージを与えることのできる魔法は現時点では使えるのかどうかわからない。拳を強く握り、非力な自分を呪う。

「多分2人は魔法が使えない。この世界ではそういった人達のほうが多い。魔法は誰にでも使えるものじゃないんだ」

 魔法を使うことのできる者とそうでない者がいる。これはコウト達を召喚した国の王ザドが言っていたことだった。
 実際、この世界において魔法を使える人間は3分の1ほどでありそのほとんどは軍などに属している。

「マナオオカミも手負いだからあまり戦力として期待するのは酷だ」

 谷嶋のせいで使うことのできる魔法を他人に教えることに抵抗がある雰囲気が生まれてからは、鏡も無理に聞こうとはしなかった。そのため3人の魔法についてはよく知らない。

 いや、谷嶋は使える魔法をこぼしていたっけか。ともかく突如として現れた怪物たちの数は多かった。王国の騎士であろうトイルがいるからといってあの数相手に無事でいられるだろうか。

 鏡が続けようとして一瞬、口をつぐむ。コウトにはやはり、彼が何を言おうとしているのか理解できてしまう。

「それに君も見ただろう? あれだけの数だ……手遅れかも――」
「ッ!! それは関係ない」

 コウトは鏡の声を遮り言い切る。目をまっすぐ見つめて、真剣に。

「“無事じゃないかも”なんて考えで助けないなんてことはしたくない! どんな状況でも助けに行く。もう他人じゃないんだ」

 もう他人じゃない。彼は異世界ドレッドに呼び出された人たちについてそう認識していた。
 苦しんでいたところを助けてもらった。年齢が近い人もいて、皆同じように分けもわからないままこの世界に振り回されている。同じ境遇にある仲間を見捨てたくない。

 そしてそれは鏡も同じ。できることなら助けに行きたい、だからといって目の前で困っている人に対して中途半端に手を貸して終わりになんてしたくない。だから彼は七篠たちが無事であることに賭け、目の前の2人をコールンまで送ろうとしているのだ。

「今ので確信した。僕はやっぱり何があっても助けに行くよ。どうするべきかわからない状況だけど、そうするべきだと思った」

 2人の間に少しの沈黙がながれた。それはやがて、低いがよく通る声で破られた。ブレイグの声だ。

「仲間が危ない目に遭っているのか? なら早く助けに行ってやってくれ。危ないところを助けてもらったってのに、俺たちの都合で君たちの仲間に何かあったなんてことにはなってほしくない」

 ミーラもその意見に納得しているようで、ブレイグの言葉にまだ少し緊張している顔でコクコクと頷いている。

 コウトはそれを聞くと、これ以上は待てないといった様子でマナオオカミのもとへ行き動けそうか、と話しかける。
 その行動には何か言われる前に勢いで押し切ってしまおうという考えもあるのかもしれない。

 鏡はというと、助けるべきだと考えていた2人からの言葉を聞き黙り込んでしまっていた。
 マナオオカミを連れたコウトが鏡の前に来る。

「足並みを乱すようなことしてごめん」

 鏡がハッとしたようにコウトを見る。

「みんなの無事を確認したら、事情を説明して先にコールンに戻る旨を伝えてすぐに戻ってくる。もちろん1人でどうにもできそうになかった場合はすぐにひきかえす」

 鏡はようやく口を開く。

「……コウト君。どの口が言うんだと思うだろうけど俺からも頼む。みんなが心配だ。戻って無事を確かめて来てほしい」
「……ッ!! あぁ、もちろん。ついでにトイルさんにマナオオカミをもう1頭喚べないか相談してみるよ。1頭だけで4人を運ぶのは辛いだろうからね」

 コウトは戻ることに反対した鏡に悪態をつくことも、悪い感情を抱く様子もなく柔らかい笑みを浮かべながら答えた。

 もともと鏡の考えはコウトにも理解できたし、コウトの言うことも鏡は理解できていたのだ。2人の間に誤解は生じない。

 マナオオカミに乗り駆けていくコウトの背中を眺めながら鏡は呟いた。

「そう……だよな。仲間、なんだよな」

 召喚された当初は繋がりのない個人だった彼等も、この世界ドレッドではそうもいかなくなる。コウトと鏡は召喚されてしまった人間同士という繋がりに仲間意識を持ったようだ。

    
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