継ぐマホウ 〜曇り所により片頭痛、気がついたら異世界〜

パキ・パキ

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動いた運命、王都までの道程

13話 救出 

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「フゥ――」

 鏡が息をつき、森を焼いていた炎を消し去って―どうやらこれも彼の魔法のようだ―、コウトと目を合わせる。

「分かってる。辺りを探そう」

 コウトには鏡が言わんとしていることを理解することができた。盗賊たちは自分たちを指して2回目だと言った。つまり、最初の被害者がいるということ。
 自分たちは朝に起きたばかりであり、最初の被害者が出てからあまり時間が経過していないはずだ。

 2人は彼らがその場で殺されていないのなら、救出の見込みは十分にあると考えていた。

 森を探していると少し離れたところでマナオオカミが吠えた。声のする方へ行くと1組の男女が4輪の荷車の上で手足を縛られていた。

 2人とも40代ぐらいに見え、男性はがっしりとした体つきで薄い白いシャツのようなものに下は茶色いズボンを、女性の方は痩せ気味な体を緑のシャツと白のマキシスカートのようなもの、といった服装だ。

 怯える2人に盗賊は全員倒したことを伝えると安心した様子を見せた。鏡は縄をほどこうとしていたが、固く結ばれていてなかなかほどくことができない。

 手こずっていると近くで炎が炸裂した。マナオオカミがギャンッという鳴き声とともに地面に倒れ込む。

「誰だ!」

 鏡が叫ぶと、森から1人の男がゆっくりと歩いてきた。マナオオカミへの攻撃は彼の仕業であるようだ。男の格好は先程の盗賊達と同じであり、彼らの仲間であることが窺える。

「てめぇらがカシラ達を殺したのかッ!」

 男は叫んで右手を突き出した。コウトはすぐさまマナ知覚を発動する。すでに男の右手にマナが集まり始めているのを確認し、彼に向けて風魔法を放つ。男も同時に2回目の魔法を放った。

 風と炎がぶつかり合った瞬間、それぞれの魔法に使用されていたマナが交わり合い爆発を起こした。衝撃でコウトの体が吹き飛ぶ。

「ぐぅッ」

 地面に叩きつけられた体を呻きながら起こして男を見やると、うつ伏せに倒れていた。

「倒せた……のか?」

 コウトはもう起きることはないだろうと考え、マナオオカミの下へ行く。マナオオカミの体には火傷の痕があった。痛々しいが生死に関わるような怪我はないようで、ガウと元気に鳴いてコウトを見つめてくる。

「ハハ、元気そうだな」

 どういう感情なのだろうかなどと考えていると、野太い雄叫びが聞こえた。振り向くと、倒したはずの男が短剣を片手に突進してきていた。

「うぉぉぉッ、死ねェ!!」

 彼と男の間の距離がみるみるうちに縮まりあと数歩でコウトの体が裂かれるだろうという時、男の横から炎がふりかかる。

「ギャァッ‼」

 炎はそのまま獲物を呑み込み、消え去った。

「これで借りは返せたかな。……コウト君?」

 コウトはその場でへたり込んでしまっていた。
 短剣がその身に届くことはなかった。だが生まれて初めてすぐそばに感じた死への恐怖は、かけられた声に反応を返せない程の動揺を引き起こした。

 それでも一応話は聞いているようで、見開かれた目で必死に相槌を返してくる。

「……俺が使うことのできる魔法の中に未来予見があると言っただろう。彼が死んだふりをして君を襲う未来を見たんだ」

 鏡が先程はこの魔法を使えるほど心に余裕はなかったがなと続けながら、落ちている短剣を拾い上げる。

 しばらくそっとしておいてあげた方がよさそうだという判断で、1人捕まっている人等の救出を始めた。

――縄は……短剣コレで切るか。

 鏡は捕まっていた2人の下へ行き縄を切る。コウトはいまだあの瞬間から戻ってこれない様子で荒い息を吐いている。

「本当にありがとうッ!! 君たちが来なかったらどうなっていたことか……」

 男性は感激した様子でお礼を言う。しかし感動のあまり鏡にハグをかましていて、そのふるまいはややオーバー気味だ。


「なぜあいつらに捕まっていたのですか?」

 鏡が苦しそうに男性の背中をタップしながら聞く。聞かれた男性はクソッ、と顔を歪ませた。

「最近酒場で意気投合して契約した仕入れ先業者の男に、荷車が壊れたから代わりになるものを持って来てほしいと言われて様子を見に来たんだが――あの野郎ッ! 盗賊の仲間だったんだ」

 男性はそこで唐突に表情を変える。

「おっとすまない、自己紹介がまだだったな。私の名はブレイグ。彼女は妻のミーラだ」

「鏡勇斗といいます。彼は美坂コウト」

「カガミユウト……ミサカコウト……慣れない響きだな」

 ブレイグと名乗った男は2人の名前を呟き、服装を舐めるように見る。やはり彼等の格好はドレッドでは浮いてしまうようだ。

 一方、いくらか平静を取り戻せたコウトは2人の会話を座ったままぼんやりと聞いていた。
 ふと、彼に手が差し伸べられる。

「大丈夫ですか?」

 その手はミーラのもので、差し出された手は震えている。彼女も自分と同じように恐怖を味わっただろうに、彼女はそれでも手を差し伸べてくれているのだ。助けに来たのに情けないと手と足に力を込めて立ち上がる。

「大丈夫です。少し驚いただけですから」

 ミーラを―ともすれば自分を―励ますように笑って答えるが、ミーラはコウトの動きを不安をにじませた表情で注視している。その様からまだ緊張が解けていないことが伝わってくる。

「コウト君、ブレイグさん夫婦の家はコールンにあるらしい。このまま案内してもらおうと思うんだが、いいかな」

 ブレイグとの会話を終えた鏡が駆け寄ってきて聞く。

「このまま……」

 コウトは抱き合い無事でいることに涙を流しているブレイグとミーナを見る。早く2人を安心できる場所まで届けてあげたい。その場所が自分たちが目指す場所ならばなおさら早く。その思いは強いが、

 でもやるべきことはそれだけじゃない――。

 無言のままでいたコウトが口を開く。



「ごめん、それはできない」




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