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来る征戦の騎士、明かされる聖剣の未知
43話 浮かぶ痣
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柳葉をまっすぐ見て、竜は許可を求める。彼に迫る危機を打ち倒す許可を、もう一度彼とともに戦う許可を。だが柳葉は答えない。
「……主よ――」
時間がないと返答を急かそうとした声をひどく落ちた声が遮った。
「断る」
柳葉は俯いていてその表情を窺うことはできない。だが彼を見つめる竜にそんなことは関係ない。竜には柳葉が考えていることがわかってしまう。彼は今、怒りを抱いている。
「お前、なんで俺の前に出てきた? 何年も俺の右腕から離れなかっただろう」
柳葉にとって物心つく前からあった右腕の痣は忌むべきものだった。
「なんであの時じゃなく、今なんだ? ……今俺の右腕からは痣がなくなっている。お前は自分の意志で俺から離れられたのか? だとしたらなんであの時俺の腕から消えなかった」
淡々と問い詰めるようだった言葉は次第に熱を帯びる。
「前に言ったことがあったよな、頼むから出て言ってくれって! 俺が根性無しどもに嗤われていた時、あんたはなんで離れてくれなかった!? 母さんが家を出ていったとき、こうして自分で思考して話せるあんたは何も考えてなかったってのか!?」
握りしめられる拳に、熱くなる体。口から出る声は意図せずかすれてしまう。
「知っているだろ。お前のせいで、俺の人生はメチャクチャになったんだッ!!」
柳葉の叫びに対し、竜の様子は先程と変わらない。やがてその生き物はゆっくりと語りだした。
「あの頃の私は、人間というものを理解できていなかった。言葉に傷つくことも、主が泣いていた理由も、痣が宿っていた体を特異なものとして見られていたことさえ」
1人の人間に取り憑いた竜は、その人間が失ったものを取り返せなくなった後でようやく理解したのだ。
「……主がどのような生を生きたのかは我も知っている。向けられた同情、勘繰り、悪意のその全てを憶えている。投げられた愚にもつかぬ言葉の数々は私に向けられていたも同然だった」
「…………」
「……主の人生をどうするか。これからは、そしてこの世界では、それは主次第なのだ」
気づけば柳葉が黙りこみ、竜が話していた。
「この世界はあの場所とは違う。もし貴様がここでやり直すというのなら我は貴様を守ろう。主よ、我は2度と過ちを冒さない」
竜はもう一度やり直そうと、そう言っている。自らが原因で壊れた心を、日々を異世界でやり直させてくれと、そのチャンスがあると。
「もしこの世界が主にあの頃のような思いをさせたとき、その時こそがこの世界の最後だ。主とともにこちらへ来た人間たちにすらも平等に約束させよう」
「許可をくれ、主よ」
目の前にいる存在は随分と自分勝手だ。しかしそれは自分も同じなのかもしれない。柳葉は心の中で自嘲する。
めちゃくちゃにされた人生でも、まだ死にたくないと思っている自分がいる。望みを絶ってきた人生にまた期待してしまっている。異世界でならと……。
「……死ぬってどういうことだ」
「危機が迫っている。主が眠る場所を破壊せんと進行するものがいるのだ」
「俺はどうすればいい」
「ただ一言許可をくれ。戦う許可を」
竜は大蛇のような躰を降ろし、柳葉の前に顔を持ってくる。
「我は主の全ての命令に従う」
「……ひとまずそいつを倒す。これからどうするかはその後で考える。――許可しよう。だが、2度と俺の腕に戻るな」
柳葉と竜は同時に心に決める。
「同じ轍は踏まない」
「同じ轍は踏ませない」
「……主よ――」
時間がないと返答を急かそうとした声をひどく落ちた声が遮った。
「断る」
柳葉は俯いていてその表情を窺うことはできない。だが彼を見つめる竜にそんなことは関係ない。竜には柳葉が考えていることがわかってしまう。彼は今、怒りを抱いている。
「お前、なんで俺の前に出てきた? 何年も俺の右腕から離れなかっただろう」
柳葉にとって物心つく前からあった右腕の痣は忌むべきものだった。
「なんであの時じゃなく、今なんだ? ……今俺の右腕からは痣がなくなっている。お前は自分の意志で俺から離れられたのか? だとしたらなんであの時俺の腕から消えなかった」
淡々と問い詰めるようだった言葉は次第に熱を帯びる。
「前に言ったことがあったよな、頼むから出て言ってくれって! 俺が根性無しどもに嗤われていた時、あんたはなんで離れてくれなかった!? 母さんが家を出ていったとき、こうして自分で思考して話せるあんたは何も考えてなかったってのか!?」
握りしめられる拳に、熱くなる体。口から出る声は意図せずかすれてしまう。
「知っているだろ。お前のせいで、俺の人生はメチャクチャになったんだッ!!」
柳葉の叫びに対し、竜の様子は先程と変わらない。やがてその生き物はゆっくりと語りだした。
「あの頃の私は、人間というものを理解できていなかった。言葉に傷つくことも、主が泣いていた理由も、痣が宿っていた体を特異なものとして見られていたことさえ」
1人の人間に取り憑いた竜は、その人間が失ったものを取り返せなくなった後でようやく理解したのだ。
「……主がどのような生を生きたのかは我も知っている。向けられた同情、勘繰り、悪意のその全てを憶えている。投げられた愚にもつかぬ言葉の数々は私に向けられていたも同然だった」
「…………」
「……主の人生をどうするか。これからは、そしてこの世界では、それは主次第なのだ」
気づけば柳葉が黙りこみ、竜が話していた。
「この世界はあの場所とは違う。もし貴様がここでやり直すというのなら我は貴様を守ろう。主よ、我は2度と過ちを冒さない」
竜はもう一度やり直そうと、そう言っている。自らが原因で壊れた心を、日々を異世界でやり直させてくれと、そのチャンスがあると。
「もしこの世界が主にあの頃のような思いをさせたとき、その時こそがこの世界の最後だ。主とともにこちらへ来た人間たちにすらも平等に約束させよう」
「許可をくれ、主よ」
目の前にいる存在は随分と自分勝手だ。しかしそれは自分も同じなのかもしれない。柳葉は心の中で自嘲する。
めちゃくちゃにされた人生でも、まだ死にたくないと思っている自分がいる。望みを絶ってきた人生にまた期待してしまっている。異世界でならと……。
「……死ぬってどういうことだ」
「危機が迫っている。主が眠る場所を破壊せんと進行するものがいるのだ」
「俺はどうすればいい」
「ただ一言許可をくれ。戦う許可を」
竜は大蛇のような躰を降ろし、柳葉の前に顔を持ってくる。
「我は主の全ての命令に従う」
「……ひとまずそいつを倒す。これからどうするかはその後で考える。――許可しよう。だが、2度と俺の腕に戻るな」
柳葉と竜は同時に心に決める。
「同じ轍は踏まない」
「同じ轍は踏ませない」
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