エリートオメガ受佐美の秘密

TERRA

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エリートオメガ受佐美の出張

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岩陰に身を潜めながら、受佐美は必死に呼吸を整えていた。
湯気に包まれ、耳に届くのは自分の速まる心音と、ザブン……と湯をかき分ける音。

「なぁ、やっぱりこの匂い……すげぇよな。」
「本当……どこだ?絶対近くにいるはずだろ。」

低い声が重なり、複数の足音がこちらへと近づいてくる。
まるで獲物を探すかのような気配。
受佐美は唇を噛んで、湯の中に身を沈める。

(くそ……動け……動けよ……!)

身体がいうことをきかない。
熱い湯が心地いいはずなのに、冷たい悪寒が背を這う。
遠ざかるはずの男たちの気配は、むしろじわじわと包囲するように強まっていく。

「ここら辺じゃないか?」
「なんか……ゾクゾクする。」

ひとりが岩場のすぐ近くまで来て、手を伸ばす気配がした。

(ダメだ……っ)

肩にお湯が揺れる感触。
まるで誰かがすぐ後ろに立ったようで、受佐美は反射的に身をすくめた。
その瞬間、ほんの小さな声が漏れる。

「……っ、聞こえた?今……。」
「いる……この辺に……。」

ザブ……ザブ……と確実に近づく音。
霧のような湯気が目の前で揺れて、ぼんやりと人影が浮かび上がる。
息を呑んで目を伏せる受佐美。
湯の中で硬直した足が震えるのが自分でもわかる。

(誰か……来い……っ)

祈るように目を閉じた、その時。

「……あっ。」

短く誰かが声を上げた。
肩越しに、湿った空気を揺らして視線が突き刺さる。
やられた、と悟った時には、もうひとりの男が嬉しそうに近寄ってきていた。

「……見っけた。」
「何隠れてんだよ……すげぇいい匂い、マジで……。」
「こっち来いよ、ちょっとだけ話そうぜ?」

声色は穏やかに装っているが、その奥に見え隠れする欲望に、受佐美の背筋は凍り付く。
じわり、と湯の中を歩み寄る男たち。
受佐美は思わず湯から這い出そうとするが、足元がふらつき、すぐに岩場に手を突いた。

「……っ、触るな……!」
かすれた声で拒絶するが、男たちはニヤニヤと笑いながら詰め寄る。

「そんな怖い顔すんなって。俺たち、悪いことしねぇし……な?」

ひとりがそっと肩に触れようとする。
受佐美は逃れようとするが、寒さと動揺で体が言うことをきかない。

「ちょっとだけでいいから……な?」
「や、やめろ……っ!」

声が震える。
必死で距離を取ろうとするが、じりじりと包囲され、後ろはもう岩壁しかなかった。
どうしようもない閉塞感が胸を押し潰し、視界がにじむ。

「おい、ちょっと強がりすぎじゃね?こっちは好意で……。」


「おいッ!!」

鋭い怒声が響き渡り、湯けむりを切り裂くように足音が近づいてきた。

「何やってんだ、お前ら!!」

攻田だった。
いつもとはまるで違う怒りの声に、男たちがぎょっとして振り返る。

「……っち、なんだよ、こっちは何も……。」

「さっさとどけよ!先輩から離れろ!」
勢いに押されるように、男たちはしぶしぶその場を後にする。
攻田は振り向きもせず、急いで受佐美のもとへ駆け寄った。

「先輩……っ!」

震える体を見て、すぐに大判のタオルを掛ける。
その目は珍しく真剣で、何かを必死で堪えているようだった。

「もう大丈夫っす……俺がついてますから。」

受佐美はうなずこうとしたが、声が出なかった。
ただ、攻田の腕を弱々しく掴むと、深く息をついた。
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