60 / 65
エリートオメガ受佐美の苦悩
8
しおりを挟む「……ほぉ、やっぱり君は見ていて飽きないな。」
顧客はふと、國立を鋭い目で見やる。
「だが……國立くん。私はね、君がいつも見せる余裕綽々の顔には飽きてるんだ。」
「……何が言いたい。」
國立が低く返す。
顧客は唇を歪め、グラスをテーブルに置くと、國立の腕をぐいと引き寄せた。
「今日は……君の別の顔が見たい。」
「っ……。」
言葉を失う國立。
その顎をぐっと引き上げられ、顧客が不敵に笑いながらキスを落とす。
「……!」
國立は一瞬抵抗するが、押し付けられる力にじっと耐えるしかなかった。
「机に手をつけ。」
「……ふざけるな……。」
「命令だ。國立部長。」
顧客の声が鋭く響く。
國立は奥歯を噛みしめ、しかしゆっくりと机の方へ向かい、無言で手をつく。
その背中はわずかに震え、普段の冷徹な姿はそこにはなかった。
「ふふ……いいね、その無様な姿。いつも威張り散らしてる部下にも、ぜひ見せてやりたいものだ。」
顧客はゆっくりと鞭を手に取り、國立の背後に立つ。
國立は唇を噛みしめ、押し殺した息を漏らす。
「ほら、國立。声を出すなよ。せいぜい君の誇りで、最後の砦を守るんだな。」
鞭の音が鋭く空気を裂き、國立の肩がびくりと跳ねる。
その光景を、受佐美は呆然とした表情で見ていた。
國立のいつもの冷たい瞳が、わずかに揺れている。
その姿は、これまで見たことのないものだった。
「ほら……誰がやめていいと言った?もう一度机に手をつけ。國立。」
顧客の声が響く。
國立はじっと睨みつけるが、ゆっくりと机に手をついた。
その背中はわずかに強張り、静かに肩が上下している。
「ふふ……従順になってきたな。」
顧客は鞭を手に取り、國立の背後に立つ。
「さあ、見せてみろ。君の本当の顔を。」
パシィンッ!
鋭い音が響き、國立の肩がびくりと跳ねる。
低く息を吸い込む声が聞こえる。
「……っ……。」
「どうだ?部下の前で無様な姿を晒す気分は。」
國立はじっと前を見据えているが、唇がわずかに震える。
その姿を見て、顧客は満足げに笑う。
「いつも偉そうにしてるお前が……今日は素直でいいな。」
再び鞭が振り下ろされる。
パシィンッ!
「……ッ……!」
國立は堪えながらも拳をぎゅっと握りしめる。
鞭が下ろされるたび、全身が硬直する様子が隠せない。
「ふふ……まったく、これは面白いな。見ろ、受佐美。君の上司は、こんなにも素直だ。」
受佐美は息を飲み、ただその光景を呆然と見つめていた。
國立の、これまで決して見せなかった表情。
プライドを必死で守ろうとするその姿に、複雑な感情が湧き上がる。
「もっと見せてもらおうか。君の限界を。」
顧客の声がいやらしく響く中、國立はなおも沈黙を貫き、背筋を伸ばしていた。
その目の奥には、決して折れない意志が、かすかに光っていた。
10
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
雨の放課後、君が泣いた理由
雪兎
BL
■あらすじ
放課後の教室。窓の外は冷たい雨。
偶然残っていた悠真は、教卓の端で俯く陸を見つける。
「…泣いてるのか?」
ふいに顔を上げた陸の目は赤く、唇が震えていた。
原因を聞き出そうとする悠真に、陸は小さく呟く。
「だって…悠真が、俺のこと避けるから…」
ほんの些細なすれ違いが、互いを苦しめていたことを知る二人。
雨音が消える頃、握られた手はもう離さないと決めていた。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる