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日常編:ビャクヤ✕キョーヤ/霧生兄弟
夏祭りと新しい家族
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夜の街が、提灯の柔らかな光に包まれていた。
蝉の鳴き声が遠くから響き、屋台の賑やかな声が混ざり合う。
「にーちゃん!どっから回る!?」
狂夜はすでに祭りの空気に飲まれ、目を輝かせている。
「……好きにしろ。」
白夜はゆっくり歩きながら、そんな弟の様子を見て微笑む。
焼きそばの屋台で、狂夜が大盛りを注文し、かき氷を買っては頭を痛くして騒ぎ、射的では景品を逃し悔しがる。
何かにつけて全力の狂夜を、白夜は静かに見守っていた。
「にーちゃん、花火始まるぞ!」
人混みを抜け、開けた場所へ向かう。
夜空に大輪の花火が次々と咲き、幻想的な光が二人の輪郭を浮かび上がらせる。
狂夜は目を輝かせながら、空を見上げた。
「……すっげぇな。」
「夏だからな。」
白夜は腕を組みながら静かに眺めている。
ひときわ大きな花火が夜空に開き、金色の光が流れ落ちる。
その瞬間、狂夜はふと思い出したようにつぶやいた。
「俺ら、昔も一緒に花火見たよな。」
夏の夜、二匹の犬と一緒に走り回った記憶が一瞬蘇る。
けれど、今この瞬間をただ静かに楽しむ。
花火も終わり、帰り際に白夜が金魚すくいの屋台の前で立ち止まる。
「にーちゃん、金魚すくいすんの?」
狂夜が意外そうな顔をする。
「……あぁ。」
白夜がポイを手に取り、静かに水面を見つめた。
ひとつ、ふわりとすくう。
器用な手つきで、赤く小さな金魚を慎重にすくいあげる。
「……マジか、さすがにーちゃん。」
狂夜は驚きながら、金魚が揺れる袋を眺めた。
白夜は黙ったまま、もう一度ポイを取り出す。
「……もうひとつ、すくうか。」
狂夜は目を丸くする。
「え、二匹も?」
「一匹じゃ、さみしいだろ。」
そう言って、白夜は慎重にもう一匹、小さな金魚をすくいあげた。
「……双子みたいだな。」
狂夜が笑いながら、二匹の金魚が泳ぐ袋をのぞき込む。
白夜はじっと、仲良く泳ぐ二匹の姿を見つめていた。
帰宅した二人は、帰り道に買ってきた小さな鉢に水を張り、金魚を迎え入れる。
赤いふたつの小さな影が、ゆらゆらと並んで泳いでいる。
「……いいな、これ。」
狂夜は腕を組みながら微笑んだ。
「名前、つけるか?」
白夜がぽつりと言った。
「……そうだな。」
兄弟は並んで、双子のような小さな家族の泳ぐ姿を静かに見つめていた。
夜の風がそっとカーテンを揺らし、夏の名残が四畳半にふんわりと広がる。
蝉の鳴き声が遠くから響き、屋台の賑やかな声が混ざり合う。
「にーちゃん!どっから回る!?」
狂夜はすでに祭りの空気に飲まれ、目を輝かせている。
「……好きにしろ。」
白夜はゆっくり歩きながら、そんな弟の様子を見て微笑む。
焼きそばの屋台で、狂夜が大盛りを注文し、かき氷を買っては頭を痛くして騒ぎ、射的では景品を逃し悔しがる。
何かにつけて全力の狂夜を、白夜は静かに見守っていた。
「にーちゃん、花火始まるぞ!」
人混みを抜け、開けた場所へ向かう。
夜空に大輪の花火が次々と咲き、幻想的な光が二人の輪郭を浮かび上がらせる。
狂夜は目を輝かせながら、空を見上げた。
「……すっげぇな。」
「夏だからな。」
白夜は腕を組みながら静かに眺めている。
ひときわ大きな花火が夜空に開き、金色の光が流れ落ちる。
その瞬間、狂夜はふと思い出したようにつぶやいた。
「俺ら、昔も一緒に花火見たよな。」
夏の夜、二匹の犬と一緒に走り回った記憶が一瞬蘇る。
けれど、今この瞬間をただ静かに楽しむ。
花火も終わり、帰り際に白夜が金魚すくいの屋台の前で立ち止まる。
「にーちゃん、金魚すくいすんの?」
狂夜が意外そうな顔をする。
「……あぁ。」
白夜がポイを手に取り、静かに水面を見つめた。
ひとつ、ふわりとすくう。
器用な手つきで、赤く小さな金魚を慎重にすくいあげる。
「……マジか、さすがにーちゃん。」
狂夜は驚きながら、金魚が揺れる袋を眺めた。
白夜は黙ったまま、もう一度ポイを取り出す。
「……もうひとつ、すくうか。」
狂夜は目を丸くする。
「え、二匹も?」
「一匹じゃ、さみしいだろ。」
そう言って、白夜は慎重にもう一匹、小さな金魚をすくいあげた。
「……双子みたいだな。」
狂夜が笑いながら、二匹の金魚が泳ぐ袋をのぞき込む。
白夜はじっと、仲良く泳ぐ二匹の姿を見つめていた。
帰宅した二人は、帰り道に買ってきた小さな鉢に水を張り、金魚を迎え入れる。
赤いふたつの小さな影が、ゆらゆらと並んで泳いでいる。
「……いいな、これ。」
狂夜は腕を組みながら微笑んだ。
「名前、つけるか?」
白夜がぽつりと言った。
「……そうだな。」
兄弟は並んで、双子のような小さな家族の泳ぐ姿を静かに見つめていた。
夜の風がそっとカーテンを揺らし、夏の名残が四畳半にふんわりと広がる。
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