-RINNE-ボーイズラブ恋愛シミュレーション人狼『輪廻』

TERRA

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恋愛シミュレーション人狼RINNE

CHAPTER0輪廻/RINNE

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ブレーキ音が、突き刺さるように響いた。

キキィィィ――
鋭い金属音が狭い車内にこだまし、バスの車体が大きく軋んだ。床が波のように揺れ、天井の蛍光灯がぶるぶると震える。重たい空気が一瞬で恐怖に塗りつぶされ、悲鳴が幾重にも重なった。

咄嗟にシートの背を掴んだ僕の視界は、ぐらりと傾き、周囲の景色が異様に歪んで見えた。

何が起きているのか理解できない。理解しようとする余裕すらない。
ただ、揺さぶられる座席にしがみつくことしかできなかった。

「何だ……? 何が起きてるんだ……!」

喉を震わせて絞り出した声は、轟音と悲鳴にかき消される。返答を求めて周囲を見渡しても、そこにあるのは同じように顔を引き攣らせ、泣き叫ぶ生徒たちの姿だけだった。

窓の外では、急カーブの先に切り立つ崖が迫ってくる。
ハンドルを必死に操る運転手の声が聞こえた気がしたが、意味を成す前に全てが轟音の渦へと飲まれていった。

――そして。

車体が大きく傾き、空間全体が裏返るように崩れる。
その瞬間、車内を切り裂いたのは、絶望に満ちた最後の叫びだった。


テレビの画面には、漢義学園の校章が映し出されている。アナウンサーの沈痛な表情だけが、状況の重さをさらに際立たせていた。

「漢義学園の生徒四十人と教師らを乗せたバスが横転しました。生徒たちは校外学習へ向かう途中だったとのことです。なお、ブレーキには何者かによる細工の痕跡が見つかり――」

無機質に切り替わる映像。
谷底に転がる無残なバスの残骸。砕け散った窓ガラス、散乱した荷物、そして小さく動く救助隊の人影。惨状は目を背けたくなるほど生々しかった。

アナウンサーは表情を崩さぬまま言葉を継いだ。

「先ほど、最後の生存者の死亡が確認されました。これにより、乗客は全員死亡した模様です」

淡々と告げられたその一言で、僕の意識は急速に遠のいていく。


白い霧が立ち込めていた。
上下も境界もない、ただ無限に広がる白の空間。足裏に確かな感触はなく、自分が地に立っているのか、宙に浮いているのかさえ判然としない。

「……ここは……どこだ……?」

思わず零れた声は、霧の奥へと吸い込まれていった。

脳裏に断片的な記憶が点滅する。
友人の笑い声。窓から差し込んだ夏の光。小さな期待を抱えていた校外学習――そして、突然訪れた悲劇。

「僕は……死んだのか……?」

冷たい疑問が胸の奥を締めつける。

そのとき、不意に強烈な光が差し込み、霧の中に声が響いた。

「おめでとうございます。アナタに二度目のチャンスが与えられました」

冷ややかで機械的な抑揚。
意味を飲み込めず、思考が凍りつく。

「……チャンス? どういうことだ……?」

問いかけに答えは返らず、ただ光は強さを増していく。

「名前を教えてください」

頭を抱える。
どうしても、どうしても自分の名前が出てこない。

「名前……僕の名前……?」

虚ろな思考を断ち切るように、声は続けた。

「初期ネームは輪廻です。こちらでよろしいでしょうか?」

「……輪廻……それでいい」

口からこぼれた瞬間、奇妙な感覚が体内に走った。まるで皮膚の下に新しい血が流れ出すように、自分という存在が別の姿に塗り替えられていく。

目の前に浮かび上がるのは、アバター設定の画面。
眩暈にも似た感覚を振り払いながら、僕――輪廻は無意識にランダム生成を選択していた。

「アナタの分身となるアバターを設定してください。ランダム生成でよろしいですか?」

「……ああ……それでいい」

淡白なやり取りののち、画面には無機質な光と共に新たな姿が形を結ぶ。しかしそれを眺める心はどこか空洞で、現実感は薄れていく一方だった。

次に表示されたのは、ミッションの内容。
その一文を目にした瞬間、息が止まった。

「……ボーイズラブ恋愛シミュレーション人狼……? 何だそれ……!」

驚愕と困惑がないまぜになり、視線が画面に縫いつけられる。そこに並ぶ攻略キャラクターたちの微笑みの裏に、どこか禍々しい影が潜んでいる気がした。

「アナタは死にました。その原因となる人物がこの中に隠れています」

「……犯人……? 俺を殺した犯人が……ここに……?」

輪廻は深く息を吸い、画面に映るキャラクターの顔をひとつひとつ凝視した。

「怪しい人物を推理し、トゥルーエンドを目指してください」

声の宣告が響く中、彼は小さく呟く。

「分からない……でも……とにかく、この空っぽの場所から抜け出すんだ」
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