-RINNE-ボーイズラブ恋愛シミュレーション人狼『輪廻』

TERRA

文字の大きさ
48 / 51
恋愛シミュレーションモード

紫苑/美術館デート

しおりを挟む

休日の朝。
澄んだ空気が漂う住宅街の道端で、輪廻は落ち着かない様子で立っていた。
鳥のさえずりと遠くの犬の鳴き声。
そんな静けさの中に、不意に低く響くエンジン音が近づいてくる。
艶やかなボディを光らせた高級車がゆるやかに停車し、運転席の窓がすっと下がった。

「待たせたかな?さぁ、乗って。」
紫苑が柔らかく微笑む。
その姿は街の風景よりも一段と洗練されて見えた。

「先生、すごい車ですね……ちょっと緊張します。」
輪廻は胸の鼓動を抑えきれず、戸惑いながら助手席に乗り込む。
革張りのシートが背中を包み込み、ほのかに漂う香水の香りが紫苑その人を思わせた。

「今日は特別な日だからね。リラックスして楽しむだけでいい。」
ハンドルを握る紫苑の声は、落ち着いた旋律のように心をほどいていく。
その響きに、輪廻の肩の力は自然と抜けていった。


向かった先は美術館。
石造りの外壁に朝の光が反射し、重厚な扉を抜けると静謐な空気が二人を迎える。
展示室には絵画や彫刻が並び、訪れる者たちは小声で囁きながら歩いていた。

「この絵、光の使い方が素晴らしいね。まるで時間が止まったようだ。」
紫苑が立ち止まり、柔らかな目でキャンバスを見つめる。

「先生って、こういうの詳しいんですね。僕はただ『綺麗だな』って思うくらいで……。」
輪廻は少し恥ずかしそうに呟く。

「それで十分だよ。アートは感じるものだからね。輪廻の感性も素敵だと思う。」
視線を向けられた瞬間、胸が熱くなる。
穏やかな褒め言葉が、どこか告白のように響いた。


展示を見終えた後、二人はミュージアムショップへ立ち寄る。
ガラスケースの中に並ぶアクセサリーがライトを反射し、小さな星々のように瞬いていた。
輪廻はふとネックレスに目を奪われる。
青白い光を宿したそのデザインは、まるで月明かりを閉じ込めたようだった。

「これ……すごく綺麗ですね。」
小さな呟きに気づいた紫苑がそっと手を伸ばし、ケースからネックレスを取り上げる。

「輪廻には、この光が似合うと思うよ。」
そう言って差し出す微笑みは、優雅でありながらどこか親密な温度を帯びていた。

「えっ……先生から?いいんですか……?」
戸惑いながら受け取る輪廻の指先が、紫苑の手とわずかに触れ合う。
心臓が跳ね、視線を逸らすこともできなかった。

「もちろん。君の喜ぶ顔が、僕にとっての贈り物だからね。」
その言葉に頬が熱を帯び、輪廻は小さく頷いてネックレスを胸に抱いた。


夕暮れ時、二人は高級レストランへ。
磨き上げられたグラスと白いクロスが並ぶテーブル。
天井からはシャンデリアの光が降り注ぎ、クラシック音楽が静かに流れていた。
輪廻は場違いなほど緊張し、椅子に腰を下ろすと自然に背筋を伸ばしてしまう。

「こういう場所、輪廻には少し早いかもしれないけれど、たまにはいいだろ?」
紫苑がグラスを掲げ、静かに微笑む。
その姿は一枚の絵のように整っている。

「先生と一緒なら……どこでも素敵な場所に感じます。」
口にした瞬間、自分でも顔が熱くなるのがわかった。

「それは嬉しいね。輪廻といると、時間がゆっくり流れる気がするよ。」
グラスの向こうに映る瞳は、柔らかくもどこか深い色を湛えていた。
視線を受け止めるだけで胸が苦しくなる。


夜が更け、再び高級車に乗り込む。
街灯が窓を流れ、静かな車内には心地よい沈黙が漂っていた。

「今日は楽しかったよ。輪廻といると、心が穏やかになる。」
ハンドルを握る横顔に、わずかな優しさと大人の余裕がにじむ。

「僕もです。先生と過ごす時間は……特別に思えます。」
真剣な眼差しを向けると、紫苑は小さく微笑んだ。

「また、こういう時間を過ごそう。まだ見せたい世界がたくさんあるからね。」
その約束のような言葉に、胸が高鳴る。

エンジン音が夜を切り裂きながらも、不思議と静けさは続いていた。
こうして二人の一日は、記憶に残る甘やかで優雅な余韻を残し、静かに幕を下ろした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

聞いてた話と何か違う!

きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。 生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!? 聞いてた話と何か違うんですけど! ※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。 他のサイトにも投稿しています。

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

紳士オークの保護的な溺愛

こむぎこ7g
BL
■ 世界と舞台の概要 ここはオークの国「トールキン」。 魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。 トールキンのオークたちは、 灰色がかった緑や青の肌 鋭く澄んだ眼差し 鍛え上げられた筋骨隆々の体躯 を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。 異世界から来る存在は非常に珍しい。 しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。 ⸻ ■ ガスパールというオーク ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。 薄く灰を帯びた緑の肌、 赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。 分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、 銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。 ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、 貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。 ● 彼の性格 • 極めて面倒見がよく、観察力が高い • 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い • 責任を引き受けることを当然のように思っている • 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手 どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。 ⸻ ■ 過去と喪失 ――愛したオーク ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。 家柄も立場も違う相手だったが、 彼はその伴侶の、 不器用な優しさ 朝食を焦がしてしまうところ 眠る前に必ず手を探してくる癖 を、何よりも大切にしていた。 しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。 現在ガスパールが暮らしているのは、 貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。 華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。 彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。 それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。 ⸻ ■ 現在の生活 ガスパールは現在、 街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。 多忙な職務の合間にも、 洗濯、掃除、料理 帳簿の整理 屋敷の修繕 をすべて自分でこなす。 仕事、家事、墓参り。 規則正しく、静かな日々。 ――あなたが現れるまでは。

処理中です...