-RINNE-ボーイズラブ恋愛シミュレーション人狼『輪廻』

TERRA

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男子寮のミステリー

屋上の住人/男子寮のミステリー

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男子寮の夜は、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
窓の外には濃紺の夜空が広がり、わずかに揺れるカーテン越しに月明かりが机の上を照らす。

輪廻はその光を頼りに本の頁をめくっていた。
ページをめくる音と時計の針の進む音だけが響く、穏やかな時間。

だが、その静寂は唐突に破られた。

バンッ、と勢いよくドアが開かれる。
「なぁ、聞いた? 屋上から幽霊の声が聞こえるって噂!」

息を切らして飛び込んできたのは緑だった。
顔は青ざめ、瞳は怯えで潤んでいる。

「えっ……幽霊の声?」
輪廻は驚き、緑の表情に目を凝らす。

「本当に聞こえるんだよ!『出て行け……』『ここは私の場所だ……』って……。怖すぎるよな!」
緑の声は震え、両手がわなわなと揺れていた。

輪廻が返答に迷っていると、再びドアが開く。

「またまたぁ、幽霊とか大げさすぎ。」
姿を現した桃瀬は、腕を組んで二人を見下ろしながら、くすりと笑った。

「……でも、面白そうじゃん。調べに行こうよ!」

その目は好奇心にきらめいていて、冗談半分で済ませる気配はない。

「えっ……でも屋上って施錠されてるんじゃ……。」
輪廻の声は消極的だったが、桃瀬の軽やかな笑みに押されるように、首を縦に振ってしまう。

「さっさと準備してよ、緑。怖がりのくせに幽霊話なんて持ち込んだんだから、最後まで付き合いなよ!」
桃瀬は緑をからかうように肩を小突く。

「そ、そんなぁ……!」
緑は泣きそうな顔で小声をこぼしたが、結局二人の後を追った。

――廊下に出ると、夜の寮は不気味なほど静かだった。
靴音が響くたび、まるで誰かに見られているような錯覚に囚われる。

三人が階段を上ると、手すりに奇妙な羽毛が絡まっているのを見つけた。

「ほら、見てみて。この羽毛……怪しいよねぇ。」
桃瀬が指でつまみ、月光に透かす。白い羽は淡く光り、不気味な存在感を放っていた。

「でも……屋上の鍵は閉まってるはずだよね? どうして声が聞こえるんだろう……。」
輪廻は羽毛を見つめながら呟く。

「も、もう帰ろうよ……なっ? 絶対なんかいるって……!」
緑は小さな悲鳴を洩らし、桃瀬の背中に隠れるように縮こまる。

「怖がりすぎだって。……いいから録音してみようよ。」
桃瀬はポケットから小型の録音機を取り出し、階段の陰に仕掛けた。

夜の十時を回った頃。

「出て行け……ここは私の場所だ……」

低く、ぞっとする声が静寂を裂いた。
風が窓を揺らす音と重なり、まるで亡霊が訴えかけているように響く。

「ひぃっ……!」
緑は耳を塞ぎ、必死に身を震わせる。

「うわっ、録音できてる! すごい、本当に声が入ってる!」
桃瀬の声は恐怖よりも興奮に近かった。

輪廻は眉を寄せ、声の発生源に視線を向ける。
「……待って。なにか、おかしい。」

その言葉に、桃瀬も真剣な眼差しを向けた。
「……もしかして。」

やがて、桃瀬が隠し持っていた合鍵で屋上の扉を開ける。

そこにいたのは――。

「出て行け! ここは私の場所だ!」

不気味に響く声の主は、月明かりに照らされた一羽のオウムだった。
看板の上に止まり、ペットショップで覚えた言葉を繰り返していたのだ。

「な、なんだ……オウムかぁ!」
桃瀬は吹き出すように笑い、肩をすくめる。

「えぇぇ!? オウムが……?」
緑は腰を抜かし、呆然と叫んだ。

輪廻は安堵の息を吐きながら、胸に手を当てる。
「なるほど……ペットショップから逃げてきてたんだね。謎が解けてよかった……。」

オウムは保護され、後日ペットショップへ無事に戻された。
男子寮に広がっていた幽霊騒ぎは幕を閉じ、日常が戻ってくる。

数日後。

「オウムが犯人だったなんて、最高だったよね! またこんな事件、起きないかなぁ。」
桃瀬が笑うと、輪廻は安心したように微笑んだ。

「僕は、次はもっと静かな夜がいいな……。」

緑は両手をぶんぶん振って必死に叫ぶ。
「もう二度と屋上なんか行かないからなっ!」

その声に二人は笑い、部屋は穏やかな笑い声に包まれた。

夏の夜の冒険は終わりを告げたが、三人の胸に残ったのはただの恐怖ではなかった。
背筋を冷たく這ったあの夜の出来事は、互いの距離をほんの少し近づける、不思議な余韻を残していた。
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