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66.「恩恵」
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巻き込んだ上に心から真面目に働くトリウィに申し訳なくも有り難く、客室の食事を取る部屋で朝食を終えた後、そのままカーリタースに会う為の算段に協力して貰った。
まずは聖都にあるエチル商会へ向かいたい旨を伝えると聖城に商会を呼んだ方が良いと丁寧な口調で提案されたんで、目的は商会会長のカーリタースに会いたい事と彼女が何処にいるのか所在不明の為に一度連絡を店から取って貰う必要があると伝えた。
「承知しました。一度、上の者に報告してからになりますが、可能であれば私、若しくは信頼の置ける者に伝言を依頼致します。カーリタース様と会える段取りが整ってから、マーレス様とソル様でエチル商会に向かわれるのであれば馬車を、カーリタース様が聖城へ上がられる際はお部屋のご用意を致します。それで、話を報告しても宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだな…その方が良いか。マーレスもそれで良いか?」
「構わない。手土産に関してはどうする?」
「そうだった、買いに行っても良いんだが…余り外は彷徨つかない方が良いか…やっぱり外套を着て、口布してても目立つか、トリウィ?」
「ええ…はい。私の見解になってしまいますが、門前で瞳を拝見しただけで魅入られるような感覚がございました。現在、恐れ多くもお姿を顕現して頂いておりますが、余り直視すると神々しさに平伏しそうな心持ちでございます。」
ああ、だから俺とマーレスが落ち着いている食事用の椅子から離れて扉の方で立ったまま妙に視線が泳いでたのか。単純に出入りの一番多いトリウィにまで一々姿を隠すのが面倒だったんで、マーレスに聞いてから姿を晒しただけなんだが…。余計な苦労を増やしてたか。
若干、遠い目をしながらもそれならばとカーリタースの手土産にする予定の酒も見繕って貰う件もお願いした。礼なので金もこちらが絶対に払うからと前もって多めに渡すと、めちゃくちゃ恐縮されながら押し頂くようにして受け取った後に元の場所へ戻って行く。
「本当に心労を掛けて申し訳ないが、出会ってから今まで物凄く助かってる。個人的には何か礼をしたい…ん?だ…あっ…!」
「えっ…」
まさに一瞬の出来事だった。
驚いた後には、俺から発せられた緑色の魔力の一部がトリウィの体に吸い込まれて、額の中央、眉間の辺りに小さめの白い円とそれを囲うような形で上部にだけ両端を跳ね上げた白い紋様が刻まれる。何処となく狼の顔を彷彿とさせる形に、見覚えのある白い紋様。
言わずもがな、犯人は…俺だ!
「…っ…わりぃ!」
「ソルのせいじゃない。」
思わず声を裏返らせながら慌てて立ち上がり、状態を確認しようとする間に間髪入れず、マーレスのフォローが入ったがどう考えても苦しい。気持ちは嬉しいが何か害が有っては申し訳なさ過ぎる。
心底感謝をしてたんで不用意に力が飛んで行ったんだとも思うが、制御不足が甘かったのは否めない。
混乱しているトリウィに近づいて一先ず体に異常がないか確認すると、苦しかったりは無く、寧ろ体が軽くなったと言い出したので、まさかと思い軽く跳んで貰ったら余裕で高く白い天井に手が届いた。
「………………他には…?」
聞くのが怖い。けれども、聞かずにはいられない。
相反する感情を抱えたまま、ふかふかの真紅の絨毯に綺麗に着地し何処か呆然としているトリウィに尋ねると何かを探るように視線を泳がせてごくりと息を飲んでから口を開く。
「体内の魔力保有量が上がっている気がします…後…。」
「後…?」
思わず身を乗り出しながら尋ねるとトリウィが片手を前に出し、掌を上に向けると小さな竜巻が発生した。
「風魔法は使えませんでした…剣の威力を少し上げる程度に使っていた軽い身体強化と生活魔法が使えただけなのですが…。今ですと猪程度でしたら簡単に吹き飛ばせそうな気がします…。」
「………そうか………。」
俺は意味も無く天井を仰いだ。
心做しか頭痛がする気がする。
心配してくれたマーレスが背中を軽くポンポンと叩いてから撫でてくれたんで、何とか現実に帰っては来れたが。
「メラムに先に相談に行くか…。何かあれば声を掛けてくれって言ってくれてたし。本当に悪いが二人共付き合ってくれるか?」
「勿論だ。」
「はっ、お供させて頂きます!それと…恐れ多くもお力を授かっただけかと感じておりますので、余り気に病まないで頂ければと。」
「いや、本当にトリウィ…良い奴だな…。」
力無く呟き、その後、外套と口布を装備してからメラムの元へ先触れを出して貰ってから尋ねると、神からの『祝福』を受けた状態だと説明された…。
まずは聖都にあるエチル商会へ向かいたい旨を伝えると聖城に商会を呼んだ方が良いと丁寧な口調で提案されたんで、目的は商会会長のカーリタースに会いたい事と彼女が何処にいるのか所在不明の為に一度連絡を店から取って貰う必要があると伝えた。
「承知しました。一度、上の者に報告してからになりますが、可能であれば私、若しくは信頼の置ける者に伝言を依頼致します。カーリタース様と会える段取りが整ってから、マーレス様とソル様でエチル商会に向かわれるのであれば馬車を、カーリタース様が聖城へ上がられる際はお部屋のご用意を致します。それで、話を報告しても宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだな…その方が良いか。マーレスもそれで良いか?」
「構わない。手土産に関してはどうする?」
「そうだった、買いに行っても良いんだが…余り外は彷徨つかない方が良いか…やっぱり外套を着て、口布してても目立つか、トリウィ?」
「ええ…はい。私の見解になってしまいますが、門前で瞳を拝見しただけで魅入られるような感覚がございました。現在、恐れ多くもお姿を顕現して頂いておりますが、余り直視すると神々しさに平伏しそうな心持ちでございます。」
ああ、だから俺とマーレスが落ち着いている食事用の椅子から離れて扉の方で立ったまま妙に視線が泳いでたのか。単純に出入りの一番多いトリウィにまで一々姿を隠すのが面倒だったんで、マーレスに聞いてから姿を晒しただけなんだが…。余計な苦労を増やしてたか。
若干、遠い目をしながらもそれならばとカーリタースの手土産にする予定の酒も見繕って貰う件もお願いした。礼なので金もこちらが絶対に払うからと前もって多めに渡すと、めちゃくちゃ恐縮されながら押し頂くようにして受け取った後に元の場所へ戻って行く。
「本当に心労を掛けて申し訳ないが、出会ってから今まで物凄く助かってる。個人的には何か礼をしたい…ん?だ…あっ…!」
「えっ…」
まさに一瞬の出来事だった。
驚いた後には、俺から発せられた緑色の魔力の一部がトリウィの体に吸い込まれて、額の中央、眉間の辺りに小さめの白い円とそれを囲うような形で上部にだけ両端を跳ね上げた白い紋様が刻まれる。何処となく狼の顔を彷彿とさせる形に、見覚えのある白い紋様。
言わずもがな、犯人は…俺だ!
「…っ…わりぃ!」
「ソルのせいじゃない。」
思わず声を裏返らせながら慌てて立ち上がり、状態を確認しようとする間に間髪入れず、マーレスのフォローが入ったがどう考えても苦しい。気持ちは嬉しいが何か害が有っては申し訳なさ過ぎる。
心底感謝をしてたんで不用意に力が飛んで行ったんだとも思うが、制御不足が甘かったのは否めない。
混乱しているトリウィに近づいて一先ず体に異常がないか確認すると、苦しかったりは無く、寧ろ体が軽くなったと言い出したので、まさかと思い軽く跳んで貰ったら余裕で高く白い天井に手が届いた。
「………………他には…?」
聞くのが怖い。けれども、聞かずにはいられない。
相反する感情を抱えたまま、ふかふかの真紅の絨毯に綺麗に着地し何処か呆然としているトリウィに尋ねると何かを探るように視線を泳がせてごくりと息を飲んでから口を開く。
「体内の魔力保有量が上がっている気がします…後…。」
「後…?」
思わず身を乗り出しながら尋ねるとトリウィが片手を前に出し、掌を上に向けると小さな竜巻が発生した。
「風魔法は使えませんでした…剣の威力を少し上げる程度に使っていた軽い身体強化と生活魔法が使えただけなのですが…。今ですと猪程度でしたら簡単に吹き飛ばせそうな気がします…。」
「………そうか………。」
俺は意味も無く天井を仰いだ。
心做しか頭痛がする気がする。
心配してくれたマーレスが背中を軽くポンポンと叩いてから撫でてくれたんで、何とか現実に帰っては来れたが。
「メラムに先に相談に行くか…。何かあれば声を掛けてくれって言ってくれてたし。本当に悪いが二人共付き合ってくれるか?」
「勿論だ。」
「はっ、お供させて頂きます!それと…恐れ多くもお力を授かっただけかと感じておりますので、余り気に病まないで頂ければと。」
「いや、本当にトリウィ…良い奴だな…。」
力無く呟き、その後、外套と口布を装備してからメラムの元へ先触れを出して貰ってから尋ねると、神からの『祝福』を受けた状態だと説明された…。
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