裏切られた英雄を救うのは俺な件

七曜

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42.「確認」

 寝る段になって、マーレスがベッドの横に入って来たのを何気ない風を装って受け入れながらも心臓は正直だった。
 恋の病とは聞いたことはあったが、日に日に好きが重症化していくのを感じる。しかも、そんなマーレスに性的な知識を教えると約束してしまった。本当に嫌なら撤回も出来るだろうが本当に嫌な訳では無く、しかも俺が断ったらマーレスは調べに行ってしまうような、そんな気がしてならない。そこで食われるとかは物理的に無さそうだが、もしも他の奴に習われんのは気に食わない。

「頑張るか…。」

 溜息混じりに呟きながらも寝息を立てるマーレスの黒髪を撫でてると笑みが零れる。
 隙のある寝顔は年相応に見えるし、こっちとしても普段よりは落ち着いて見てられる。顔立ちは格好良いんだが可愛いなと、やっぱり恋してる奴の思考回路で和みながらいつの間にか眠っていた。







 夢を見ているなと、たまに夢の中で気づくことがあるー…。
 青々とした草原が広がり、そこに一匹の狼がいた。
 遠くにいるのにその姿は大きく、近くで見ればきっと見上げる程なんだろう。
 楽しそうに何処までも駆けて行く姿は陽気で、とても自由で、羨ましくさえ思える。
 一体、何処まで行くのかと微笑ましく見つめていると…視線が合った気がしたー…。







「ん…?」

 自分の声で目が覚めた。何だったかと瞬きを繰り返しながら思考を漁るが、夢を見ていたような感覚しか無い。頑張ったら思い出せないかと軽く唸るとマーレスが上半身を起こして覗き込んで来たんで驚いた。

「大丈夫か、ソル?」

「ああ、なんか…夢の内容を思い出そうとしたら唸っちまった。驚かせてごめんな。」

「いや、それなら良かった。おはよう。」

「ああ。…んっ」

 朝の挨拶に目を細めたんだが、軽い口付けが唇に降ってきて一瞬思考が停止して、何処の新婚家庭だと顔が熱くなった。

「…はよ。」

「うん。身支度したら朝食を取ってくるから、ソルはまだゆっくりしてると良い。」

 よしよしと髪まで撫でられて、なんだろうか奇声を発したい気分になりつつも元気そうなマーレスの様子を見守って、見送った。

 先伸ばしにすれば聞き辛くなるなと思って、朝食後に朝からする話題でもないがと前置きしてから昨日の話を持ち出した。

「まず、なんだが…マーレスは男役と女役、どっちが良いんだ?」

 何となく答えは分かってるもののはっきりさせて置こうと、暗に抱きたいのか抱かれたいのかと問えば少し不思議そうにされてからは即答だった。

「ソルを抱きたい。」

「…そうか…っ。」

「もしかして、嫌だったか…?」

「いや、嫌じゃねぇけど色々と心の準備はいるよなってやつだから、心配すんな。」

「そうか。なら、優しくする。」

「そうか…。」

 崩れ落ちそうな気分を抱えながらもそれならばと記憶を辿りつつ、一つ咳ばらいをしてから話し出す。

「娼婦の女から聞いた話なんだが、尻に挿入したがる奴がたまにいるらしくて…。それで、その為に腹の中を洗浄する魔法薬が界隈では売られてるらしい。それを使ってから、指とか、専用の器具で慣らして…だな…」

 説明してて、自分がするのかと若干遠い目と気持ちになってたらマーレスが片手を前に出して俯いてた。うん、ああ、なんか攻撃を食らったのは俺だけじゃ無かったらしい。

「ええと…続き言っても大丈夫そ?」

「ああ…、少し戸惑うが…。」

「気持ちは分かる。…えっと、慣らすには結構、時間が掛かるらしくて、指が何本かぐらいは入るようにしねぇとマーレスのは入んないと思う…。」

「………………そうか。」

 理解はしてくれたみたいだが、妙な沈黙が室内に落ちる。やっぱり朝から、真面目にする話では無かったなと暫くマーレスの旋毛を眺めてると顔が上がって視線が合った。

「実際にやってみないと分からない所もあると思うが、少しずつ慣らしても良いか…?」

「え…?」

「痛い思いはなるべくさせたく無い。だから、旅の合間に少しずつ。それから、魔法薬を買いに行くときは絶対に一緒が良い。そういう場所にソル一人で行って欲しくない。」

「お…おう、それはまぁ…。」

 良いんだろうか。発情したらどうしようかと考えて、でも昨日は途中で止めて貰ったお陰かその後、特に問題は無かった。

「そうだな。魔法薬が手に入ってから、発情しない程度にだったら大丈夫だと思う。その、最後までするのは何処か長めに落ち着ける所でも良いか…?」

 確認してから思ったんだが、大分大胆なことを聞いてる気がする。こういう所をマーレスに指摘されたんだったか。確か…。

「歯止めが効かなくなる、だっけ?」

「ソル…。」

 マーレスがまた顔を両手で覆ってから深い深いため息を吐き出した。なんかすまんと思って眺めてると不意に片手が頬へと伸びてきて…。

「んぁっ…?」

 親指の腹で犬歯をいきなり撫でられた。

「発情させたらすまない。その時も責任は取るから。」

 うん、どんな時でもマーレスは責任を取ってくれるだろうし、そんな挑発しながらもふんわり優しく笑うのって狡くないかって俺の方が顔を覆いたくなった。
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