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44.「薬屋」
「ん…好きだ…、マーレス。」
「ソル…。」
途中で塞がれた唇が離れ、何度目かの好意の言葉を口にする頃にはすっかり逆上せたような状態になっていた。
もっと、甘い言葉でも何でも言いたいんだがと見つめているとマーレスも何となくこっちの状況を理解したのか、薄く笑ってから緩く抱き締めてくれる。
「ありがとう、ソル。凄く嬉しかった。」
「ああ、いや…もっと言いたいんだが、また、次でも良いか?」
「勿論。凄く嬉しい。」
甘く微笑まれて、この雰囲気に慣れねぇなとぎゅっとマーレスを抱き締め返せば、ぐるると喉が鳴った。
なんだろうか、もう何もかもかなぐり捨てて全力でマーレスに襲い掛かりたい気分なんだが、それが実際に出来ないのがもどかしい。
そんな気持ちのまま溜息を吐き、マーレスの髪を軽く避けて耳の端にガジガジと軽く噛み付くと少し笑われた。
暫く堪能して、ちゅっと耳の表面に口付けてから離れると視線が合う。何とも珍しく悩ましげな表情をしてたんで少し驚いてると強く抱き寄せられた。
「愛してる、ソル…。」
いやもう、不意打ち過ぎないか。
俺もだと囁き、また抱き締め返しながら、やっぱり体裁とか露骨だとかは投げ捨ててマグニフィクスに急ごうと固く決意した。
予定では何泊かしようとしていた宿を一泊だけで引き払ったんで、愛想の良かった宿の女と旦那らしき人には驚かれたものの、マーレスが好き過ぎて身が持たないんで出発するとは言える筈も無く、出発した。
本人は分かっているのかどうだろうかで、一先ず人の気配が無いからと移動中に手を繋いできてご機嫌と行動がいちいち可愛いらしい。
その反面、野宿での、寝るまでの触れ合いは相変わらず、いや、徐々に熱を帯びるようでいて本当にこっちの身が持たない。
しかも、止めて欲しいかと問われればそうでは無くて、渦巻くような欲を日に日に感じながらも平和に過ごせる旅の日々は本当に人生の中で得難くて、少し道中を急ぎながらも幸せに浸っていた。
「着いた…っ!」
「ここがそうなのか?」
マグニフィクスは最も近い花街がある街だ。
内陸に近付いたんで街の規模としてもそこそこあるし、旅の荷物を補充するのにも勿論良い。
一先ず、少し良い宿を確保してから日が沈む頃合いに花街に到着するように移動した。
「あ、そうだマーレス。」
「どうした、ソル?」
「場所が場所だから、客引きされる時があるだろうけど相手にしないか、はっきりと断れば問題無い。驚くかもしんねぇから、先に言っとこうと思って。」
俺は田舎者だったんで最初に花街へ行った時は正直戸惑った。その経験を思い出して早めに伝えると理解はしてくれたみたいなんだが、何故かじっとこちらを見られた。
「ちょ、マーレス!?」
「こうしてれば問題無い。」
何かと思う間に、まだそこまで賑わっていないが花街の入り口で手を繋がれて慄く。
確かに、これなら客引きされる確率は下がるものの、一定の好奇の目はあるだろう。
どうしたもんかとまごついてる間に、マーレスが歩き出したんで俺もつられて歩き出す。
「マーレス…。」
「ところで、どんな店なんだ?看板を見れば分かるか?」
「あ、ああ、大体、花街にある薬屋に置いてある場合が多いんだ。だから、それらしい看板か店を見つけて入るか、金を払って誰かから聞き出せば良い。」
「分かった。」
頷きながら短く返事をしたマーレスは周囲を見ながらどんどん進んで行く。
その内に営業を始めた娼婦の女や従業員であろう男が店から、客や通行人もちらほらと出てくる。
そういう店の立ち並ぶ一角なんでまだ理解があるのかもしれないが、手を繋いで歩く二人の男は目立つ。
思わず、一時的な効果ではあるものの盗賊のスキルで目眩しを打ちかまそうかと真剣に悩み出した所で、マーレスが店を発見した。
「ここか?」
「そ…うだな、薬草の匂いもするし、恐らく薬屋だろう。」
鼻腔を擽る独特な香りに頷くと木製の扉を開け、迷い無く店へマーレスが入って行くと自動的に俺も入店を果たす。
思わず息を吐き出せば、カウンターから女の小さな笑い声が聞こえたんで視線を向けると波打つ暗い紫の長髪で片目を隠した印象的な雰囲気の女が同色の切れ長な目を細め、甘い香りのする煙管をふかしながらこちらを見ていた。
「いらっしゃい。随分と仲が良さそうなので…つい。お気を悪くなさらないで貰えると嬉しいのだけれど。」
「いや、まあ、そうなるよな。別に気は悪くしてない。」
「それは、重畳。ですが、お探しの物があるのでしたらお詫び…のような、まぁ、ご案内致しますよ。」
深みのある声とゆっくり話す口調も相まって本当に不思議な雰囲気の女なんだが、親切ではあるらしい。
尋ねる内容がアレなんで一瞬戸惑ったが、最終的には聞かなければ分からない。
「あ、じゃあ、体内の洗浄に使う魔法薬…は、売ってるか?」
「ああ、アポスティロシ…ね。在庫はあるのだけれど、何回分でしょうか?」
「何回…。」
回数なんて考えて無かったし、分からない。思わず黙っちまうと女が不思議そうに首を傾げてから指を三本立て、次に二本立てた。
「三十回分で金貨二枚。半分でも大丈夫でしょうが、保存期間は三年と長い薬になりますので余り頻繁に店に来られない…まぁ、事情がお有りでしたり、使用回数が多い場合は三十回分を勧めております。どうされますか?」
なんだろうか、色々と察せられているような説明をされたんだが、正直、助かる。
俺がなんとか三十回分でと呟くとマーレスが物凄く自然に自腹で代金を払ってくれたことに後から気が付いた。
「ソル…。」
途中で塞がれた唇が離れ、何度目かの好意の言葉を口にする頃にはすっかり逆上せたような状態になっていた。
もっと、甘い言葉でも何でも言いたいんだがと見つめているとマーレスも何となくこっちの状況を理解したのか、薄く笑ってから緩く抱き締めてくれる。
「ありがとう、ソル。凄く嬉しかった。」
「ああ、いや…もっと言いたいんだが、また、次でも良いか?」
「勿論。凄く嬉しい。」
甘く微笑まれて、この雰囲気に慣れねぇなとぎゅっとマーレスを抱き締め返せば、ぐるると喉が鳴った。
なんだろうか、もう何もかもかなぐり捨てて全力でマーレスに襲い掛かりたい気分なんだが、それが実際に出来ないのがもどかしい。
そんな気持ちのまま溜息を吐き、マーレスの髪を軽く避けて耳の端にガジガジと軽く噛み付くと少し笑われた。
暫く堪能して、ちゅっと耳の表面に口付けてから離れると視線が合う。何とも珍しく悩ましげな表情をしてたんで少し驚いてると強く抱き寄せられた。
「愛してる、ソル…。」
いやもう、不意打ち過ぎないか。
俺もだと囁き、また抱き締め返しながら、やっぱり体裁とか露骨だとかは投げ捨ててマグニフィクスに急ごうと固く決意した。
予定では何泊かしようとしていた宿を一泊だけで引き払ったんで、愛想の良かった宿の女と旦那らしき人には驚かれたものの、マーレスが好き過ぎて身が持たないんで出発するとは言える筈も無く、出発した。
本人は分かっているのかどうだろうかで、一先ず人の気配が無いからと移動中に手を繋いできてご機嫌と行動がいちいち可愛いらしい。
その反面、野宿での、寝るまでの触れ合いは相変わらず、いや、徐々に熱を帯びるようでいて本当にこっちの身が持たない。
しかも、止めて欲しいかと問われればそうでは無くて、渦巻くような欲を日に日に感じながらも平和に過ごせる旅の日々は本当に人生の中で得難くて、少し道中を急ぎながらも幸せに浸っていた。
「着いた…っ!」
「ここがそうなのか?」
マグニフィクスは最も近い花街がある街だ。
内陸に近付いたんで街の規模としてもそこそこあるし、旅の荷物を補充するのにも勿論良い。
一先ず、少し良い宿を確保してから日が沈む頃合いに花街に到着するように移動した。
「あ、そうだマーレス。」
「どうした、ソル?」
「場所が場所だから、客引きされる時があるだろうけど相手にしないか、はっきりと断れば問題無い。驚くかもしんねぇから、先に言っとこうと思って。」
俺は田舎者だったんで最初に花街へ行った時は正直戸惑った。その経験を思い出して早めに伝えると理解はしてくれたみたいなんだが、何故かじっとこちらを見られた。
「ちょ、マーレス!?」
「こうしてれば問題無い。」
何かと思う間に、まだそこまで賑わっていないが花街の入り口で手を繋がれて慄く。
確かに、これなら客引きされる確率は下がるものの、一定の好奇の目はあるだろう。
どうしたもんかとまごついてる間に、マーレスが歩き出したんで俺もつられて歩き出す。
「マーレス…。」
「ところで、どんな店なんだ?看板を見れば分かるか?」
「あ、ああ、大体、花街にある薬屋に置いてある場合が多いんだ。だから、それらしい看板か店を見つけて入るか、金を払って誰かから聞き出せば良い。」
「分かった。」
頷きながら短く返事をしたマーレスは周囲を見ながらどんどん進んで行く。
その内に営業を始めた娼婦の女や従業員であろう男が店から、客や通行人もちらほらと出てくる。
そういう店の立ち並ぶ一角なんでまだ理解があるのかもしれないが、手を繋いで歩く二人の男は目立つ。
思わず、一時的な効果ではあるものの盗賊のスキルで目眩しを打ちかまそうかと真剣に悩み出した所で、マーレスが店を発見した。
「ここか?」
「そ…うだな、薬草の匂いもするし、恐らく薬屋だろう。」
鼻腔を擽る独特な香りに頷くと木製の扉を開け、迷い無く店へマーレスが入って行くと自動的に俺も入店を果たす。
思わず息を吐き出せば、カウンターから女の小さな笑い声が聞こえたんで視線を向けると波打つ暗い紫の長髪で片目を隠した印象的な雰囲気の女が同色の切れ長な目を細め、甘い香りのする煙管をふかしながらこちらを見ていた。
「いらっしゃい。随分と仲が良さそうなので…つい。お気を悪くなさらないで貰えると嬉しいのだけれど。」
「いや、まあ、そうなるよな。別に気は悪くしてない。」
「それは、重畳。ですが、お探しの物があるのでしたらお詫び…のような、まぁ、ご案内致しますよ。」
深みのある声とゆっくり話す口調も相まって本当に不思議な雰囲気の女なんだが、親切ではあるらしい。
尋ねる内容がアレなんで一瞬戸惑ったが、最終的には聞かなければ分からない。
「あ、じゃあ、体内の洗浄に使う魔法薬…は、売ってるか?」
「ああ、アポスティロシ…ね。在庫はあるのだけれど、何回分でしょうか?」
「何回…。」
回数なんて考えて無かったし、分からない。思わず黙っちまうと女が不思議そうに首を傾げてから指を三本立て、次に二本立てた。
「三十回分で金貨二枚。半分でも大丈夫でしょうが、保存期間は三年と長い薬になりますので余り頻繁に店に来られない…まぁ、事情がお有りでしたり、使用回数が多い場合は三十回分を勧めております。どうされますか?」
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俺がなんとか三十回分でと呟くとマーレスが物凄く自然に自腹で代金を払ってくれたことに後から気が付いた。
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