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第8話 『きみの、きみたちの、いない世界で』
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「ホマレっ!! ホマレええええええっ!! うあああああああああああ!!!」
もう、こらえられなかった。
朝起きてから、何度もウソだと思いこもうとした。スマホのアドレス帳にあいつの名前がないのだって、知らないうちにまちがえて消しちまったからだって。
だけど、学校に来て。教室に、あいつの席がないのを見て。
――出席番号1番で、俺の名前が呼ばれて。
もう、泣き散らすのを止めることができなかった。
事情のわからないクラスメイトたちはどよめいている。隣りのヤツが、おどけながら話しかけてきた。
「どうしたんだよ蒲帆? ホマレって、なんだ? また新しいウソでも……」
「ウソなんかじゃねぇ!! なんでホマレのこと忘れてるんだよ、木本! おまえ去年もおなじクラスだっただろ!?」
俺はたまらず立ち上がって、みんなに向かって叫ぶ。
「ホマレだけじゃねぇ、ミアのことも……なんで、なんでみんな忘れちまったんだよ!! こんなのおかしいだろ!!」
「蒲帆、保健室へ行こう」
こっちにやってきた本間先生が、そう言って俺の肩に手をのせた。
「一時間目は自習とする。各自、教室で静かにすごすように」
俺は本間先生に連れられて、保健室に来た。
ベッドに行くように言われて、大人しくしたがう。本間先生は保健の先生に言って、しばらく2人だけにしてほしいと言った。深刻な状況だって察してくれたのか、保健の先生は席を外してくれた。
扉を閉めた本間先生が戻ってきて、俺のいるベッドの傍に置いてある椅子に腰かけた。
もう我慢できなくなって、俺はまた泣き始めた。横になるのも嫌で体育座りをしていたけど、腕と腕の間に顔を埋め、あとはもう涙が流れるままに泣いた。
「ホマレ……ホマレぇ……!! うっ、う……ああああああっ!!」
「……東間は昨日、ゲームに負けたんだな」
「俺のせいだ……本当は俺が、狼に喰われるはずだったんだ! それをあいつ、かばって……!!」
詰めが甘かった。竹内兄を使ったジュースの罠にハマった俺は、なんの準備もしないまま昨日のゲームに臨んで……あの結果を招いてしまった。竹内妹があんなふうになるってわかっていたはずなのに、兄貴がジュースと組んでいたのに焦って、追い詰めて……!
俺のずさんさが、ホマレをこの世から消してしまった。
だから朝からずっと、同じことばかり考えている。
「先生……俺、もう、だめだ……」
「蒲帆……?」
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