ーANDROIDAー 禁忌の“ココロ” 僕らは――もうどこにも存在しない 【完結】

ゆずたこぽんず

文字の大きさ
15 / 35
2.機械の友

15_ココロの源

しおりを挟む
「じゃあ~、“アンドロイダ”について話してあげよう! 気になるでしょ?ね、ね?」
「お……おう……」
「博士ってば、テンション上がりすぎ……君の悪い癖だ、すこし落ち着かないと」
「でもでもぉ~お二人揃って、なんだか懐かしいなぁってゼロワンは思いますぅ~」

 アグレーから溢れ出る話したいオーラに、ついにゼロツーから突っ込みが入った。 その傍らで、ゼロワンはニコニコと笑っている。 明美じゃないのに、明美が今もそこに居るような“存在”を感じていた。

「あはは~、いやぁ……旧友に会うと、積もる話も途切れんばかりでねぇ……えっと、何だっけ?そう“アンドロイダ”だったね。 ちょっとあそこのモニターを見てくれるかい?」
「モニター、ありすぎて分からん」
「あぁ、左から二番目の……そうそう、そこ」

 部屋の中に所狭しと並べられたモニターの中に、一つだけ……他の画面とは違った映像が流れているものがあった。 そこに……素肌がしっかりと作られた人形が、うつむいて地面にぺたりと座り……その傍らに、腰の曲がった老人が杖をつきながらやってきたかと思えば、近くの椅子に腰かけた。 しわがれた声で、老人は静かに語り始めた。

『……カメラは回っておるかね……いかん、この歳になると、手は震えて身体が言うことをきかん……ん……ワシは……藤ケ谷、蓮斗……もう、77歳になる』

「お、俺!?このおじいさんが、俺!?」
「しー、静かに!」

『わしは……もう、長いこと生きた。 愛しい妻は、若い頃に病気になって……もう、何十年も前の話だ。彼女はわしの側で永遠に氷の中で眠っておる……あの時救いを求めたが……もう手遅れじゃと……おぉっと、いかん、昔の話を長々としてしまったな』

 映像の中の老人は、小さなハンマーを持ち出し……近くのテーブルの上に置いてあった、自分の顔ほどの石を、ガンガンと叩き出した。 石は、ゴロゴロと崩れ、欠片となっていった。

『これは、わしが若い頃に空から落ちてきた隕石だ。 研究チームはこれを海外の探検家から譲り受けた。しかし、研究の結果、これはただの石ころだと……無価値な物であるとされ、わしがこの家に持ち帰った。
……あれから何十年……わしはこれに見向きもしなかった。 所が、つい最近のことじゃ、これを見てくれ』

 老人はよろめきながら立ち上がると、静かにカメラをアンドロイドに寄せた。
 まだ機械が露出している腹部には、動力部分となるコアが存在し……そこにはまだなにも入れられていない。

『これは、ワシが作り上げたアンドロイドじゃ。 なかなかイケメンじゃろう? 動力源が悩みじゃたが……そしたら、ついこの間、タンスに置き去りにしていたこの隕石が、地面に落下したのじゃ。 その時、こやつの指がピクリと反応したのを、わしは見逃さなかった』

 老人は、そっと動力源の中へ石を入れた。 開かれた蓋を閉めると、エネルギーが身体を循環していく光の流れが見えた。

『こうして、近くに寄せたら何だか良い反応を見せた……そこで、今みたいに動力源にいれてみてはどうかと、わしは思ったんじゃ。 それどうじゃ、動くかのぉ?』
『が……ピ……き……起動……開始……あ、あ……あなた……は?』
『おぉ……すごいぞ!ついに、ついに動き出した!! ほら見てくれ、これがわしのアンドロイド一号じゃ! わしらのネームを取って、彼をリズム・アグレ………』

 映像はそこで突然プツリと切れた。 画面が途切れる直前、視点が地面に落ちて行くようだった。 ふと、アグレーに視線を戻すと、ふっと笑って俺の事を見ていた。

「これこそ私の誕生だ。 そして、この時君は喜びのあまりカメラを落としてね……この映像は、壊れたカメラから何とか取り出したものだよ」
「ってすると、この隕石がアンドロイダってこと?」
「いかにも! この物質については未だに構造が不明なんだ! ……でも、僕たちのコア……そして、ココロの源として動いているのは確かなんだよね。 宇宙とは……今でも僕たちの神秘なる存在さ」

 今も昔も変わらずに、宇宙とは何か……何百年たった世界でも、その細部まで謎が解明されている事は、どうやら無かったようだ……。
 ただ、空から飛来した、たった一つの石が、この世界のことわりを変えたのも――紛れもない真実だった。 ……未来の、老人となった俺の手によって。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

書籍化の打診が来ています -出版までの遠い道のり-

ダイスケ
エッセイ・ノンフィクション
ある日、私は「書籍化の打診」というメールを運営から受け取りました。 しかしそれは、書籍化へと続く遠い道のりの一歩目に過ぎなかったのです・・・。 ※注:だいたいフィクションです、お察しください。 このエッセイは、拙作「異世界コンサル株式会社(7月12日に電子書籍も同時発売)」の書籍化の際に私が聞いた、経験した、知ったことの諸々を整理するために書き始めたものです。 最初は活動報告に書いていたのですが「エッセイに投稿したほうが良い」とのご意見をいただいて投稿することにしました。 上記のような経緯ですので文章は短いかもしれませんが、頻度高く更新していきますのでよろしくおねがいします。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...