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#029 皆様のおかげです
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スミマセン。
今回も最終話もどちらも5000文字以上あります。
(;´Д`)
――――――――――――――――――――――――――――――
――――― …神子様…、神子様…
遠いところから、俺を呼ぶ声がする。
これは。
マクミランの声だ。
ああ、俺、死んだのかもな。
何かもう、俺ってもっと冷静な人間だと思っていたけど、あ~ぁ、やっちゃったな。
ミランを助けるどころじゃなかったじゃん。
…ゴメン、ミラン。
でもそうだとしたら、俺達一緒に冥途の道行き?
一緒に行けるの?
黄泉路の旅を二人で。
…ああ、それって、ある意味理想かもな…。
なんて、ぼんやりとポジティブな思考に漂っているウチに、すこ~しずつ、細かい事が気になり始めた。
あのとき、周りに居た人達、無事だったかな。
巻き込まれちゃったとしたら、申し訳無かったな…。
多分俺、死んでるから、もう巻き込まれて負傷した人の事治してあげられないよな。
仙元さんと榊さんにお願いするしか…
…と言うところまで考えて。
「ヤバっ!仙元さんと榊さん、至近距離にいたじゃん!真っ先に巻き込まれて…ッ」
思わずクワッと目を開けて少し起き上がりかけた。
目の前に、深い森の色の瞳が、向こうも思い切り見開いていて、酷く間抜けな俺の顔を映していた。
あまりにビックリしすぎて、暫く見つめ合ってしまったのだが、そのうちに深緑の瞳がみるみる潤み、俺の顔にボタボタと滴がこぼれてきた。
「神子様ァー―ーっ!!」
マクミランは俺の頭を抱え込むように、覆い被さっておんおんと泣いた。
え、ちょっと待って。
何?
なに?なに?
辺りを見回すと、そこはどう見ても王宮だった。
王宮に滞在する際に、いつも使わせてもらっている、俺達用の部屋。
ミランの声に反応したのか、扉の外からどやどやと人の近づく気配がする。
いや、別にミランの声に反応したんじゃ無いな。
よく見ると、室内には何人もの侍女も、看護師もいる。
扉を少し開けて外の人に何か呼びかけている看護師の後ろ姿もあった。
ドアが大きく開いて、なだれ込んでくる人々。
王族の皆さんやら、義兄ご夫妻やら、何でかエンドファンとお師匠様まで居る。
侍女さん達やら…あ、仙元さんと榊さん。
アレ?
俺、寝てたの?
夢、見てたの?
つか、どこからが夢?
ヌシ様は?
ミラン…。
あ、そうだよ。ミラン。生きてる。
戻ってる。
そう思って俺はミランの顔を両手で挟んで撫で繰り回した。
うわ、涙と鼻水とヨダレでぐちゃぐちゃだ。ああ、もう、折角の好い男が!
とっさに清浄魔法をかけようとして、その違和感に気づいた。
…魔力が枯渇している…?
…あ…
……え……
俺…。
魔力、失った?
…え、…ってことは。もう、神子様廃業?
色んな考えがぐるぐる巡って、これからは冒険者の仕事で野営しているときに清浄魔法使えないの?とか、あ、そもそも魔力無くなったら冒険者の仕事出来ないじゃん、とか、ハズレの村に戻っても治癒の仕事受けられないのかよ、とか、細かい事が気になって、思わず何でか、両掌を見てしまった。
そんな俺の姿を見て、仙元さんがため息をついた。
「今はカラッカラになって居るだけですよ?時間をかけてゆっくり休めば回復します」
「まったく…、ホントに、無茶しましたね。…まあ…マクミラン殿があの状態で、仕方なかったとも言えますが」
榊さんも眉間を揉みながらぐったりしていた。
「あのー、お二人が助けて下さったんですか?」
「…まあ、そういう事になるのかな?」
「いやもうホント、勘弁して下さいよー。マジ焦ったわ。何なんすかもー」
仙元さんと榊さんの顔色も良いとは言えない。
「神子様は、一週間ほどずっと眠り続けておられました」
無表情を装っているけれど、焦燥した様子のシモン様が呟くように告げてきた。
…ああ、まあ。だよね。
死ななかったのが奇跡なくらい、根こそぎ放出してしまった手応えがあった。
いや、何かそんなに窶れた表情見せられると、ものすごく申し訳無い。
シモン様って、何かと無表情で容赦ない突っ込み入れてくる人だけど…、もしかして俺達って意外と親友だったのかな?
「ヌシ様はどうなったのでしょうか」
ちょっとしょんぼりしながらその質問をして居る俺の横では、マクミランが義兄の刺しだしてきたハンカチで顔中を拭いてお鼻をチンしていた。
ヨシヨシ。
無意識に頭を撫でてしまう。
仙元さんと榊さん、そしてミランから聞いた話を断片的に聞いて纏めると。
俺が渾身の攻撃魔法を(可能だけど攻撃魔法は特段得意分野では無い。浄化と治癒と防御と援護が本来の能力だから)放った時に、とっさに仙元さんと榊さんで俺の周辺をまるっと結界で包み込んだらしい。
そうとも知らず、完全にガルガル状態の俺は、放つ放つ、大した殺傷力も無い攻撃魔法を。
でも、先輩神子様のお二人に完全に封じられて。
さすがにヌシ様はあそこまで俺が怒ると思っていなかったらしい。
だって、ミランを殺す気は毛頭無かったし、乗っ取るって言ってもヌシ様が憑依している間だけ、というつもりだったらしい。
因みに、ヌシ様は殆どの時間眠っているから、その、目覚めて人の体の方が動くのに便利と感じたときだけ、と言う事だったらしい。
えっ、そんならそうと最初から言ってくれ。
まあ、どうも詳しい説明を聞く前に俺がキレた訳だけど。
あと、ヌシ様もやっぱり安眠妨害されて、予定外の時期に起こされてイラついていたから、無駄に煽る感じになったらしい。
まあ、その辺は俺が気を失った後、頼れる先輩神子様達が冷静にヌシ様と話したらしい。
ふう、さすがですよ。
伊達に国際機関の幹部職に在籍してないですよね。
取りあえず、あの結界で囲ってある区域の、開発と経済利用はヌシ様も承認してくれた。
ただし、いくつかの条件を出された。
ひとつは、ヌシ様や眷属様が暮らしている区域を“神域”として、人間がその神域に入れないように反対側からの結界も張るようにと言うお達し。
満月の夜には、必ずコンセデスワインを大樽で、温泉まんじゅう300個と、白パン120個を忘れずに祭壇に捧げる事。
それ以外の日も、今までと同じくらいの頻度と量でのお供物は、欠かさない事。
1年に二度、春分と秋分の日には、ヌシ様を奉じる儀式を行う事。
複数造る露天風呂のうち、眷属様が利用出来る大きめの湯船も設置する事。眷属様が利用している間は人間は近寄らない事。(眷属様が利用していないときにはそこに人間が入ってもヨシらしい)
…等々。
満月の夜は、ヌシ様は必ずお目覚めらしいのだ。
普段のお供物は精霊様と眷属様分らしいが、満月の時はヌシ様に供されるらしい。
あと、もし今後、更にヌシ様から何かご通達があるときには、神子組が聞きに来るようにと。神子達だけは神域に入るのを許可するという事だった。
うん。
つまりはキレイに棲み分けて、円満に利用するならば了承という事なのだよね?
「…え、じゃあ…、ミランの体を乗っ取るって言っていた件は…?」
「それに関しては、ホラ、こうして元に戻してくれましたから…」
マクミランは自分の体を見せつけるように胸を張って、元気をアピールするポーズを取りつつ更に言った。
「まあ、あの時、眷属様を助けてくれた礼もあるし、と仰っていましたよ。白フクロウの眷属様を助けたじゃないですか」
そうだった。
あの時は本当に危なかった。あと数分遅ければ、あの眷属様は命を落としていたところだ。
さすがに死んだものを生き返らせる事は出来ない。
でもその理屈なら、ミランだって、大鷲の眷属様をあのバカ冒険者のブーメランから救ったのだ。
それだけでも、ミランには感謝してやってくれよ。
乗っ取る発想自体、その時点でやめておいてもらいたかったですかね、ヌシ様。
何だかんだで、俺が倒れている間にも、工事は粛々と続けられていた。
あとで、近隣の公道整備も含む、あの地の開発と商業化に関わるヒト・モノ・カネの動きの規模を、帳簿で見せられて気が遠くなったよ。
国家事業ってコワイ。
それを俺は、誕生日のお祝い何が良い?って質問に対して、シャレにならないこの規模の公共事業を強請っておきながら「あ、じゃあ要らない。やめる」と簡単に言っちまったのか…。
いや、もしまた同じようにミランが人質に取られたら、迷い無く直ぐ「じゃあ要らない」って言うと思うけど。
勿論あの一瞬で、この事業のために公募されて集まった作業員達の事は、シャンド王国にもらった海辺の村に俺の館を建てることにして、そっちに振り分けてもらおう、とか、グリエンテ商会や王家にはもう馬車馬のように働いて、これからの人生の年月を全てなげうってでも穴埋めに努めさせてもらおうという想いがよぎったりもした。
コレは全て、俺の勝手で始まった。
でも、それでも、迷うことは微塵もないだろう。
ああ、本当に。
ヌシ様が話の分かる神竜様でヨカッタ。
何より、頼りになる先輩神子様が居てくれてヨカッタ。
その後、チノ山原生林地帯の温泉村が完成したのはほぼ1年後。
あの最初の“生誕祭”から、実に1年半後だった。
着工したのは春になってからだったけど、水面下での計画が推し進められ始めたのは、生誕祭の直後からだった。
そこそこの部屋数を擁する俺の別荘が一等地にある。
温泉施設と言いながら、小洒落た洋館だ。
館の裏庭に張り出しているコンサバトリー仕様の大浴場と、そこから出て行ける露天風呂は、どことなく古代ローマっぽい。
白御影石っぽい質感の、美少年像が抱える水瓶から、湯が止めどなく湯船に注ぎ込まれてくる。
別の所では、カッコいい幻獣の口から湯が湧き出ている。
なんだろう。
ものすごくステキだし豪華なんだけど。
ちょっぴりラブホっぽいなどと思ってしまう俺は、根がとことん俗なんだと思う。
こんな広大でゴージャスなラブホなんてねえよ!というツッコミも込みで。
露天風呂も、天然の石で周りを囲むと思っていた。
いや、天然石なのか。コレも。
大理石みたいにキレイに表面磨いてあるから、日本の露天風呂とは違う印象になって居るだけで。
まあ、色々と想像していたモノとは随分違う印象で完成した。
ステキはステキだよ?それは本当。
でもね。
最終的にはスゴい事になっちゃったんだよね。
まず、当初の予定よりも大幅に変更となったところ。
拠点になる露天風呂付き俺の別荘の他に、3棟のホテル…というか、宿泊施設も建設されている。
…それが…ですね。どの建物も大変に大きい。
それが加わった事もあり、本来はあの時の生誕祭から見て、翌年の俺の誕生日に間に合うように進められていたはずだったんだけど…。
この後から追加された3棟の建設と、それらが加わった事によるインフラ整備などが上乗せされて、結局、翌初夏まで延びたというわけだ。
結果、本当に一つの温泉街っぽい感じになった。
洋風だけど。
今回も最終話もどちらも5000文字以上あります。
(;´Д`)
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――――― …神子様…、神子様…
遠いところから、俺を呼ぶ声がする。
これは。
マクミランの声だ。
ああ、俺、死んだのかもな。
何かもう、俺ってもっと冷静な人間だと思っていたけど、あ~ぁ、やっちゃったな。
ミランを助けるどころじゃなかったじゃん。
…ゴメン、ミラン。
でもそうだとしたら、俺達一緒に冥途の道行き?
一緒に行けるの?
黄泉路の旅を二人で。
…ああ、それって、ある意味理想かもな…。
なんて、ぼんやりとポジティブな思考に漂っているウチに、すこ~しずつ、細かい事が気になり始めた。
あのとき、周りに居た人達、無事だったかな。
巻き込まれちゃったとしたら、申し訳無かったな…。
多分俺、死んでるから、もう巻き込まれて負傷した人の事治してあげられないよな。
仙元さんと榊さんにお願いするしか…
…と言うところまで考えて。
「ヤバっ!仙元さんと榊さん、至近距離にいたじゃん!真っ先に巻き込まれて…ッ」
思わずクワッと目を開けて少し起き上がりかけた。
目の前に、深い森の色の瞳が、向こうも思い切り見開いていて、酷く間抜けな俺の顔を映していた。
あまりにビックリしすぎて、暫く見つめ合ってしまったのだが、そのうちに深緑の瞳がみるみる潤み、俺の顔にボタボタと滴がこぼれてきた。
「神子様ァー―ーっ!!」
マクミランは俺の頭を抱え込むように、覆い被さっておんおんと泣いた。
え、ちょっと待って。
何?
なに?なに?
辺りを見回すと、そこはどう見ても王宮だった。
王宮に滞在する際に、いつも使わせてもらっている、俺達用の部屋。
ミランの声に反応したのか、扉の外からどやどやと人の近づく気配がする。
いや、別にミランの声に反応したんじゃ無いな。
よく見ると、室内には何人もの侍女も、看護師もいる。
扉を少し開けて外の人に何か呼びかけている看護師の後ろ姿もあった。
ドアが大きく開いて、なだれ込んでくる人々。
王族の皆さんやら、義兄ご夫妻やら、何でかエンドファンとお師匠様まで居る。
侍女さん達やら…あ、仙元さんと榊さん。
アレ?
俺、寝てたの?
夢、見てたの?
つか、どこからが夢?
ヌシ様は?
ミラン…。
あ、そうだよ。ミラン。生きてる。
戻ってる。
そう思って俺はミランの顔を両手で挟んで撫で繰り回した。
うわ、涙と鼻水とヨダレでぐちゃぐちゃだ。ああ、もう、折角の好い男が!
とっさに清浄魔法をかけようとして、その違和感に気づいた。
…魔力が枯渇している…?
…あ…
……え……
俺…。
魔力、失った?
…え、…ってことは。もう、神子様廃業?
色んな考えがぐるぐる巡って、これからは冒険者の仕事で野営しているときに清浄魔法使えないの?とか、あ、そもそも魔力無くなったら冒険者の仕事出来ないじゃん、とか、ハズレの村に戻っても治癒の仕事受けられないのかよ、とか、細かい事が気になって、思わず何でか、両掌を見てしまった。
そんな俺の姿を見て、仙元さんがため息をついた。
「今はカラッカラになって居るだけですよ?時間をかけてゆっくり休めば回復します」
「まったく…、ホントに、無茶しましたね。…まあ…マクミラン殿があの状態で、仕方なかったとも言えますが」
榊さんも眉間を揉みながらぐったりしていた。
「あのー、お二人が助けて下さったんですか?」
「…まあ、そういう事になるのかな?」
「いやもうホント、勘弁して下さいよー。マジ焦ったわ。何なんすかもー」
仙元さんと榊さんの顔色も良いとは言えない。
「神子様は、一週間ほどずっと眠り続けておられました」
無表情を装っているけれど、焦燥した様子のシモン様が呟くように告げてきた。
…ああ、まあ。だよね。
死ななかったのが奇跡なくらい、根こそぎ放出してしまった手応えがあった。
いや、何かそんなに窶れた表情見せられると、ものすごく申し訳無い。
シモン様って、何かと無表情で容赦ない突っ込み入れてくる人だけど…、もしかして俺達って意外と親友だったのかな?
「ヌシ様はどうなったのでしょうか」
ちょっとしょんぼりしながらその質問をして居る俺の横では、マクミランが義兄の刺しだしてきたハンカチで顔中を拭いてお鼻をチンしていた。
ヨシヨシ。
無意識に頭を撫でてしまう。
仙元さんと榊さん、そしてミランから聞いた話を断片的に聞いて纏めると。
俺が渾身の攻撃魔法を(可能だけど攻撃魔法は特段得意分野では無い。浄化と治癒と防御と援護が本来の能力だから)放った時に、とっさに仙元さんと榊さんで俺の周辺をまるっと結界で包み込んだらしい。
そうとも知らず、完全にガルガル状態の俺は、放つ放つ、大した殺傷力も無い攻撃魔法を。
でも、先輩神子様のお二人に完全に封じられて。
さすがにヌシ様はあそこまで俺が怒ると思っていなかったらしい。
だって、ミランを殺す気は毛頭無かったし、乗っ取るって言ってもヌシ様が憑依している間だけ、というつもりだったらしい。
因みに、ヌシ様は殆どの時間眠っているから、その、目覚めて人の体の方が動くのに便利と感じたときだけ、と言う事だったらしい。
えっ、そんならそうと最初から言ってくれ。
まあ、どうも詳しい説明を聞く前に俺がキレた訳だけど。
あと、ヌシ様もやっぱり安眠妨害されて、予定外の時期に起こされてイラついていたから、無駄に煽る感じになったらしい。
まあ、その辺は俺が気を失った後、頼れる先輩神子様達が冷静にヌシ様と話したらしい。
ふう、さすがですよ。
伊達に国際機関の幹部職に在籍してないですよね。
取りあえず、あの結界で囲ってある区域の、開発と経済利用はヌシ様も承認してくれた。
ただし、いくつかの条件を出された。
ひとつは、ヌシ様や眷属様が暮らしている区域を“神域”として、人間がその神域に入れないように反対側からの結界も張るようにと言うお達し。
満月の夜には、必ずコンセデスワインを大樽で、温泉まんじゅう300個と、白パン120個を忘れずに祭壇に捧げる事。
それ以外の日も、今までと同じくらいの頻度と量でのお供物は、欠かさない事。
1年に二度、春分と秋分の日には、ヌシ様を奉じる儀式を行う事。
複数造る露天風呂のうち、眷属様が利用出来る大きめの湯船も設置する事。眷属様が利用している間は人間は近寄らない事。(眷属様が利用していないときにはそこに人間が入ってもヨシらしい)
…等々。
満月の夜は、ヌシ様は必ずお目覚めらしいのだ。
普段のお供物は精霊様と眷属様分らしいが、満月の時はヌシ様に供されるらしい。
あと、もし今後、更にヌシ様から何かご通達があるときには、神子組が聞きに来るようにと。神子達だけは神域に入るのを許可するという事だった。
うん。
つまりはキレイに棲み分けて、円満に利用するならば了承という事なのだよね?
「…え、じゃあ…、ミランの体を乗っ取るって言っていた件は…?」
「それに関しては、ホラ、こうして元に戻してくれましたから…」
マクミランは自分の体を見せつけるように胸を張って、元気をアピールするポーズを取りつつ更に言った。
「まあ、あの時、眷属様を助けてくれた礼もあるし、と仰っていましたよ。白フクロウの眷属様を助けたじゃないですか」
そうだった。
あの時は本当に危なかった。あと数分遅ければ、あの眷属様は命を落としていたところだ。
さすがに死んだものを生き返らせる事は出来ない。
でもその理屈なら、ミランだって、大鷲の眷属様をあのバカ冒険者のブーメランから救ったのだ。
それだけでも、ミランには感謝してやってくれよ。
乗っ取る発想自体、その時点でやめておいてもらいたかったですかね、ヌシ様。
何だかんだで、俺が倒れている間にも、工事は粛々と続けられていた。
あとで、近隣の公道整備も含む、あの地の開発と商業化に関わるヒト・モノ・カネの動きの規模を、帳簿で見せられて気が遠くなったよ。
国家事業ってコワイ。
それを俺は、誕生日のお祝い何が良い?って質問に対して、シャレにならないこの規模の公共事業を強請っておきながら「あ、じゃあ要らない。やめる」と簡単に言っちまったのか…。
いや、もしまた同じようにミランが人質に取られたら、迷い無く直ぐ「じゃあ要らない」って言うと思うけど。
勿論あの一瞬で、この事業のために公募されて集まった作業員達の事は、シャンド王国にもらった海辺の村に俺の館を建てることにして、そっちに振り分けてもらおう、とか、グリエンテ商会や王家にはもう馬車馬のように働いて、これからの人生の年月を全てなげうってでも穴埋めに努めさせてもらおうという想いがよぎったりもした。
コレは全て、俺の勝手で始まった。
でも、それでも、迷うことは微塵もないだろう。
ああ、本当に。
ヌシ様が話の分かる神竜様でヨカッタ。
何より、頼りになる先輩神子様が居てくれてヨカッタ。
その後、チノ山原生林地帯の温泉村が完成したのはほぼ1年後。
あの最初の“生誕祭”から、実に1年半後だった。
着工したのは春になってからだったけど、水面下での計画が推し進められ始めたのは、生誕祭の直後からだった。
そこそこの部屋数を擁する俺の別荘が一等地にある。
温泉施設と言いながら、小洒落た洋館だ。
館の裏庭に張り出しているコンサバトリー仕様の大浴場と、そこから出て行ける露天風呂は、どことなく古代ローマっぽい。
白御影石っぽい質感の、美少年像が抱える水瓶から、湯が止めどなく湯船に注ぎ込まれてくる。
別の所では、カッコいい幻獣の口から湯が湧き出ている。
なんだろう。
ものすごくステキだし豪華なんだけど。
ちょっぴりラブホっぽいなどと思ってしまう俺は、根がとことん俗なんだと思う。
こんな広大でゴージャスなラブホなんてねえよ!というツッコミも込みで。
露天風呂も、天然の石で周りを囲むと思っていた。
いや、天然石なのか。コレも。
大理石みたいにキレイに表面磨いてあるから、日本の露天風呂とは違う印象になって居るだけで。
まあ、色々と想像していたモノとは随分違う印象で完成した。
ステキはステキだよ?それは本当。
でもね。
最終的にはスゴい事になっちゃったんだよね。
まず、当初の予定よりも大幅に変更となったところ。
拠点になる露天風呂付き俺の別荘の他に、3棟のホテル…というか、宿泊施設も建設されている。
…それが…ですね。どの建物も大変に大きい。
それが加わった事もあり、本来はあの時の生誕祭から見て、翌年の俺の誕生日に間に合うように進められていたはずだったんだけど…。
この後から追加された3棟の建設と、それらが加わった事によるインフラ整備などが上乗せされて、結局、翌初夏まで延びたというわけだ。
結果、本当に一つの温泉街っぽい感じになった。
洋風だけど。
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