初夢はサンタクロース

木偶舞屋🌷旧阿沙

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「もっと、ひきつけろ。なんで、いつもよりここを弱くした?」
「弱くしてねえっての! だって、ここはこれでいいんだよ」
「クライマックス前の盛り上がるシーンの前だ。ここで、読者をひきつけて焦らさなくては、山場のカタルシスが半減する。もっと、松葉先生なら、大きなカタルシスがつくれるはずじゃないですか?」
「だから、これはこれでいいんだよ。さっきも言ったろ! これは流れの物語なんだって。流れるようにさら~と通り過ぎてほしいわけ! いちいち、溜めたり、ここでテンポ変えたりしないで、さら~っと」
「だから、いっただろう、展覧会なんだってば! 一歩一歩、読者は原稿の前で立ち止まって鑑賞をする! いいか、鑑賞だ!」
「だからだよ、ばかが! 展覧会なんだよ! 読者は読まねえの、ページをめくらねぇ! だから、これは、スマホまんが的なのね!」
「へ?」
「ほら、スマホって、一ページしか出せねえじゃんか! 本だったら見開き二ページ一気に見れるけど! 展覧会も、壁にはっつけるんだから、そりゃ一枚一枚って意識になるわな。だから、スマホまんが読んで研究したけど、リズムは一枚ずつ。そうしたら、流れるようにストレスなくすらーとしたほうがいいわけ! それに!」
 松葉は、話の途中でメロンソーダをすすりあげてから、言った。
「それに、展覧会だぜ? 読者は歩くんだよ。てくてく歩きながら、原稿を見るわけ。つーことはさ、ゆっくり歩く速度にこっちが合わせねえとだめだろ。だから、これは、これでいいの! ゆっくり、読者に歩かせる。そのために、途中で溜めちゃだめ! ストレスなく流れるようにするわけさ!」
 ああ、なるほど。
 千尋はうめいた。
 いつの間にか、この男、発表形態の状態も考慮にいれてネームをかけるようになっていたのか、と、驚く。
 そうだ。才能だけで成り上がったわけではない。彼は彼なりに努力、いや、自分に足りないものをちゃんと自分のなかにとりいれようとする力のある作家だった。
 こうなると、余計に、編集者として、口をいいだしたくなる。
「楽しくなってきましたね、先生」
 千尋が笑うと、松葉がこたえた。
「俺は全然たのしかないんだけどな。仕事なんてしたくない。ダーリンに会いたい」
 すなおでよろしい。
 千尋は、改めて彼のネームにむきあった。彼のコンセプトとしては、鑑賞者の歩行によりそう作品らしいのだが、さて、どう料理するべきか。
 楽しい。全身の細胞が活性化して、脳が回転を始める。さて、どう仕掛ける?
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