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✿03:淫紋の次は淫呪かよ、知りたくなんかない!!
***20.魔物の通り道(2)
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✿
癒月は必死に懇願して、グレイと共に、案内役の男と共に、その場所へと移動していた。
「グレイさん」
「何?」
「道中せっかくなので、今ここで起きていることについて俺にも教えてもらえないでしょうか」
「ユージィンちゃん……」
「ここに流されてからまだ月日はそんなに経っていませんが、俺、もうすでにこの街にいる、この街の住人ですから」
「そ、そうだよね……えっと、まずは……そうだ。この街、ローザタウンの周囲には、聖女の薔薇が植えられていて、それが邪悪なものへの結界になっているんだけど……」
「はい、その話は知っています」
「実はそれが数日前に破壊されたんだ」
「は?」
「グレイさん! ここです!!」
街はずれまで、走ってきたグレイと癒月であったが、目の前の光景に絶句した。
「なんて……ひどい……」
そこには、街をぐるりと取り囲むようにして作られた花畑があった。だが、その花畑に一列、まるで通り道を作るかのように無残にも散らされた白い花びらと、無理矢理引き抜かれたあとのような、ちぎれた茎と根の残骸、――ひどくその場は荒らされていた。
「こ、これが……」
「そうだよ、これが、聖女の薔薇だったんだけど……こんな……」
グレイが悔しそうに歯をかみしめる。
「一体誰がこんなことを?」
癒月の質問にグレイは答えられない。首を横に振った。
「ユージィンちゃん、さっきの話だけどね、この聖女の薔薇の結界は三重に施されている。ひとつは、この街外れの第一環、そしてさらに第一環を超えた先に第二環、そのさらに向うに第三環」
「……はい」
「そしてすべての薔薇が断たれたときに、それは結界としての役目を終えてしまう。もし、外の世界がそうと知ったら、この町は集中砲火を浴びて消されることになっている」
「……」
「グレイさん! ここを!」
ここまで案内してくれた男が、植え込みの上に堂々と残された大きな足跡を見せた。
「おそらく先ほどのものはここを通って街に侵入してきたと思われます」
「そうか……確かにこれは、人間のものじゃないな」
癒月もそれを覗き込んだ。魔物のものだ。
「それじゃあ、もしかして、外側の二つの薔薇も……」
「いや、それはないよ、ユージィンちゃん」
「え?」
「第一環と第二環の間にはああいう緑色ゴブリンらの住処がある」
「つまり、破られたのは第一環だけ、ということですか?」
「……おそらくはな? おい、第二環の見張りと連絡は?」
「はい、今、伝書鳩の帰りを待っています」
(連絡スキル持ちはこの街にいないのかよ……)
そう思って苦笑いする癒月であるが、彼の所持スキルの中にもその連絡スキルはない。
「そうか、連絡が付き次第、俺に知らせてくれ」
「はい!」
「修復の者を寄こそう。お前は、連中が来るまでここで待っていてくれないか?」
「承知!」
「さ、ユージィンちゃん、きみは俺が送るからね」
と、いわれて。
「あ!!」
「ん? どうしたの?」
「あ、ああ、いや、なんでもないです」
(やっべぇ、俺、家ないじゃんか。今更思い出してどうしろってんだ……)
慌てる癒月にグレイが微笑んだ。
「俺ん家くる?」
「え!? あ、でも……」
(行ったら絶対、アレされる……のは承知してる、承知してるんだからなぁ)
癒月は戸惑った。が、そのとき。
「ユージィンちゃん?」
声がした。
癒月は必死に懇願して、グレイと共に、案内役の男と共に、その場所へと移動していた。
「グレイさん」
「何?」
「道中せっかくなので、今ここで起きていることについて俺にも教えてもらえないでしょうか」
「ユージィンちゃん……」
「ここに流されてからまだ月日はそんなに経っていませんが、俺、もうすでにこの街にいる、この街の住人ですから」
「そ、そうだよね……えっと、まずは……そうだ。この街、ローザタウンの周囲には、聖女の薔薇が植えられていて、それが邪悪なものへの結界になっているんだけど……」
「はい、その話は知っています」
「実はそれが数日前に破壊されたんだ」
「は?」
「グレイさん! ここです!!」
街はずれまで、走ってきたグレイと癒月であったが、目の前の光景に絶句した。
「なんて……ひどい……」
そこには、街をぐるりと取り囲むようにして作られた花畑があった。だが、その花畑に一列、まるで通り道を作るかのように無残にも散らされた白い花びらと、無理矢理引き抜かれたあとのような、ちぎれた茎と根の残骸、――ひどくその場は荒らされていた。
「こ、これが……」
「そうだよ、これが、聖女の薔薇だったんだけど……こんな……」
グレイが悔しそうに歯をかみしめる。
「一体誰がこんなことを?」
癒月の質問にグレイは答えられない。首を横に振った。
「ユージィンちゃん、さっきの話だけどね、この聖女の薔薇の結界は三重に施されている。ひとつは、この街外れの第一環、そしてさらに第一環を超えた先に第二環、そのさらに向うに第三環」
「……はい」
「そしてすべての薔薇が断たれたときに、それは結界としての役目を終えてしまう。もし、外の世界がそうと知ったら、この町は集中砲火を浴びて消されることになっている」
「……」
「グレイさん! ここを!」
ここまで案内してくれた男が、植え込みの上に堂々と残された大きな足跡を見せた。
「おそらく先ほどのものはここを通って街に侵入してきたと思われます」
「そうか……確かにこれは、人間のものじゃないな」
癒月もそれを覗き込んだ。魔物のものだ。
「それじゃあ、もしかして、外側の二つの薔薇も……」
「いや、それはないよ、ユージィンちゃん」
「え?」
「第一環と第二環の間にはああいう緑色ゴブリンらの住処がある」
「つまり、破られたのは第一環だけ、ということですか?」
「……おそらくはな? おい、第二環の見張りと連絡は?」
「はい、今、伝書鳩の帰りを待っています」
(連絡スキル持ちはこの街にいないのかよ……)
そう思って苦笑いする癒月であるが、彼の所持スキルの中にもその連絡スキルはない。
「そうか、連絡が付き次第、俺に知らせてくれ」
「はい!」
「修復の者を寄こそう。お前は、連中が来るまでここで待っていてくれないか?」
「承知!」
「さ、ユージィンちゃん、きみは俺が送るからね」
と、いわれて。
「あ!!」
「ん? どうしたの?」
「あ、ああ、いや、なんでもないです」
(やっべぇ、俺、家ないじゃんか。今更思い出してどうしろってんだ……)
慌てる癒月にグレイが微笑んだ。
「俺ん家くる?」
「え!? あ、でも……」
(行ったら絶対、アレされる……のは承知してる、承知してるんだからなぁ)
癒月は戸惑った。が、そのとき。
「ユージィンちゃん?」
声がした。
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