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✿04:男の味なんて知りたくなかった
****22.犯人(2)
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(……っ!?!?)
鼻の奥にはりつくような異臭。
その物体が歩くたびに響く鈍い足音。
焦茶のような斑点と緑色のぬめっとした体表。
歪なゴーレムのような造型。
(これ……)
癒月は、グレイの言っていたことばを思い出した。
――「いや、それはないよ、ユージィンちゃん。第一環と第二環の間にはああいう緑色ゴブリンらの住処がある」――
(これ、が、もしかしたら……もしかしなくても、緑色ゴブリン……)
勇者として活動をしていた頃、癒月はゴブリンになど何度も遭遇している。けれど、このような亜種は初めて見た。
否。違う。
これはあの時の――街中ですれちがったあの異形ではないか!
もし、敵としてなら、この程度なら――。そう思いかけて、昔の自分と今の自分は全く違うのだということを思い出した。
(どうする? ここに俺がいるのが、バレたら――)
冷や汗がそっと癒月の体表を流れていった。
(いや、だけど、どうして、ここにこんなものがいるんだ? 魔物が人間の街に出現するか? 狩られる可能性だってある――それに……)
「おい、何か、匂わないか」
(……!?)
その物体が、急に動きを止めた。
「ああ、何か……」
やつはあたりをきょろきょろと見渡し始めた。
(まずい……! 気付かれたかっ……!)
必死で気配を消そうとするも、今まで使っていたスキルはもうこの手にはない。己の身一つ隠すことが、こんなにも大変だったとは――。
「……気のせいか?」
ぎしぎしとかの物体が再び動作を開始する。
(た、助かった……)
この場にいることが、バレずに、ほっとした癒月であったが、その後、背後から聞こえた声に、戦慄した。
「おい、そこで何をしている」
鼻の奥にはりつくような異臭。
その物体が歩くたびに響く鈍い足音。
焦茶のような斑点と緑色のぬめっとした体表。
歪なゴーレムのような造型。
(これ……)
癒月は、グレイの言っていたことばを思い出した。
――「いや、それはないよ、ユージィンちゃん。第一環と第二環の間にはああいう緑色ゴブリンらの住処がある」――
(これ、が、もしかしたら……もしかしなくても、緑色ゴブリン……)
勇者として活動をしていた頃、癒月はゴブリンになど何度も遭遇している。けれど、このような亜種は初めて見た。
否。違う。
これはあの時の――街中ですれちがったあの異形ではないか!
もし、敵としてなら、この程度なら――。そう思いかけて、昔の自分と今の自分は全く違うのだということを思い出した。
(どうする? ここに俺がいるのが、バレたら――)
冷や汗がそっと癒月の体表を流れていった。
(いや、だけど、どうして、ここにこんなものがいるんだ? 魔物が人間の街に出現するか? 狩られる可能性だってある――それに……)
「おい、何か、匂わないか」
(……!?)
その物体が、急に動きを止めた。
「ああ、何か……」
やつはあたりをきょろきょろと見渡し始めた。
(まずい……! 気付かれたかっ……!)
必死で気配を消そうとするも、今まで使っていたスキルはもうこの手にはない。己の身一つ隠すことが、こんなにも大変だったとは――。
「……気のせいか?」
ぎしぎしとかの物体が再び動作を開始する。
(た、助かった……)
この場にいることが、バレずに、ほっとした癒月であったが、その後、背後から聞こえた声に、戦慄した。
「おい、そこで何をしている」
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