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布のこすれる音で目を覚ました。
背中の向こうで隣で寝ているはずの彼が尋常ではない回数の寝返りを打っている。時計に目をやれば、蛍光の文字盤は午前二時。少し身動きを取っただけで、隙間から入ってくる冷気が肌を撫でる。
「ひゃっ」
だが肌を撫でたのは冷気だけではなかった。寝間着の上からだが、氷のような何かに腹部を撫でられ、肩をすくめる。
「お前、何してんの!」
「えへへ、ばれちゃった」
起きていた彼は、子供のように俺の布団の中に潜りこんでくる。
「お前が侵入してきて三度くらい温度が下がった」
「大丈夫。あんたが俺をあっためてくれる」
「馬鹿言え、これだけ冷やしといて」
「じゃあ、もっと近寄る」
布団の中で進退を繰り返しながら、いいポジションを見つけると俺の身体に絡みついて来る大きな両手。
「きつい、苦しいって」
一枚の布団の中に大の男が二人も入れば窮屈になるのは分かりきっている。その上、後ろから強く抱きしめられたら寝るどころではなくなってしまう。
彼の手を剥がそうとして触れた時、思わず「あっ」と小さく叫んでしまった。
「どうした?」
俺の様子に気が付いた彼が心配そうに尋ねてくる。首筋に吐く息が当たり、なんだかこそばゆく思いながらも、彼の手首を掴んだ。
「荒れてる」
「え?」
「ガッザガザだぞ、ほら」
指の関節を中心に乾燥は彼の手をむしばみ、すり鉢のようにとげとげとした表面にいつの間にか変化していた。
「あー、冬の間はこうなるよな」
「馬鹿。ちゃんとケアくらいしろよ、大事な手なんだから」
「あーそんな言い方はやめてくれ。確かに触られ心地は悪いかもだが……」
「ぎゃっ、どこ触ってんだよ、やめろって!」
脇腹をくすぐられて自然に腹筋が揺れる。
「えへへ、どうだ!」
息が上がったところで、またぎゅうと抱きしめられた。
「ね? 触る対象に対しての愛は人一倍、いやに倍くらいだから、サメ肌でも嫌うなよ」
そんなこと言われなくたって、俺だって人二倍だ。
(了)
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✿当作は2019.12.01に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さんにお題「布団の中/荒れた手/そんな言い方はやめてくれ」で創作したものです。
背中の向こうで隣で寝ているはずの彼が尋常ではない回数の寝返りを打っている。時計に目をやれば、蛍光の文字盤は午前二時。少し身動きを取っただけで、隙間から入ってくる冷気が肌を撫でる。
「ひゃっ」
だが肌を撫でたのは冷気だけではなかった。寝間着の上からだが、氷のような何かに腹部を撫でられ、肩をすくめる。
「お前、何してんの!」
「えへへ、ばれちゃった」
起きていた彼は、子供のように俺の布団の中に潜りこんでくる。
「お前が侵入してきて三度くらい温度が下がった」
「大丈夫。あんたが俺をあっためてくれる」
「馬鹿言え、これだけ冷やしといて」
「じゃあ、もっと近寄る」
布団の中で進退を繰り返しながら、いいポジションを見つけると俺の身体に絡みついて来る大きな両手。
「きつい、苦しいって」
一枚の布団の中に大の男が二人も入れば窮屈になるのは分かりきっている。その上、後ろから強く抱きしめられたら寝るどころではなくなってしまう。
彼の手を剥がそうとして触れた時、思わず「あっ」と小さく叫んでしまった。
「どうした?」
俺の様子に気が付いた彼が心配そうに尋ねてくる。首筋に吐く息が当たり、なんだかこそばゆく思いながらも、彼の手首を掴んだ。
「荒れてる」
「え?」
「ガッザガザだぞ、ほら」
指の関節を中心に乾燥は彼の手をむしばみ、すり鉢のようにとげとげとした表面にいつの間にか変化していた。
「あー、冬の間はこうなるよな」
「馬鹿。ちゃんとケアくらいしろよ、大事な手なんだから」
「あーそんな言い方はやめてくれ。確かに触られ心地は悪いかもだが……」
「ぎゃっ、どこ触ってんだよ、やめろって!」
脇腹をくすぐられて自然に腹筋が揺れる。
「えへへ、どうだ!」
息が上がったところで、またぎゅうと抱きしめられた。
「ね? 触る対象に対しての愛は人一倍、いやに倍くらいだから、サメ肌でも嫌うなよ」
そんなこと言われなくたって、俺だって人二倍だ。
(了)
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✿当作は2019.12.01に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さんにお題「布団の中/荒れた手/そんな言い方はやめてくれ」で創作したものです。
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