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踊り子の煩悩
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空気に触れて袖が流れる、風に弄ばれる藤の花のように揺らいで。一瞬一瞬、時を止めるように響く動作。
曲調は一気に加速し激しく情熱的になっていく。シンシアの舞も弾ける音のように激しさを増していく。
そのままフィニッシュに流れ込んだ。つま先までつんと張った静寂な余韻の中、シンシアは、ふうと息を着く。
流し目に彼を確認した。見ていてくれたんだ。座席の上からまっすぐに見つめられてそれだけで心臓がカッと熱くなる。
控えに戻った瞬間シンシアの足はそくさくと彼の元に向かった。
「どうでした? 私の舞は」
背後から現れたシンシアに男はビクリと肩を震わせて驚いたが、すぐに表情をほころばせた。
「すごかった! 流石だよ!」
純粋で素直な返答に、シンシアの心はきゅっと締め付けられる。
なんと答えればいいのかと真っ白になったシンシアの頬は赤く染まる。
「ま、まあ、当然でしょうね」
絞り出した言葉と態度は、かわいげのないもの。それでも彼は太陽のような笑みをこぼす。
「次の舞台はいつ? また見に来てもいい?」
ああ、敵わない。
素直になれるのは舞台の上だけだ。
クラクラとするような甘い眩暈を感じながら、シンシアは息を吐いた。(了)
----
✿当作は2019.12.11に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さん自主練にお題「踊り子の苦悩」で創作したものです。
曲調は一気に加速し激しく情熱的になっていく。シンシアの舞も弾ける音のように激しさを増していく。
そのままフィニッシュに流れ込んだ。つま先までつんと張った静寂な余韻の中、シンシアは、ふうと息を着く。
流し目に彼を確認した。見ていてくれたんだ。座席の上からまっすぐに見つめられてそれだけで心臓がカッと熱くなる。
控えに戻った瞬間シンシアの足はそくさくと彼の元に向かった。
「どうでした? 私の舞は」
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純粋で素直な返答に、シンシアの心はきゅっと締め付けられる。
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絞り出した言葉と態度は、かわいげのないもの。それでも彼は太陽のような笑みをこぼす。
「次の舞台はいつ? また見に来てもいい?」
ああ、敵わない。
素直になれるのは舞台の上だけだ。
クラクラとするような甘い眩暈を感じながら、シンシアは息を吐いた。(了)
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✿当作は2019.12.11に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さん自主練にお題「踊り子の苦悩」で創作したものです。
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