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「衣装合わせ?」
「学園祭前に採寸しただろ? もう完成したから、実際に着てチェックしてもらいたいんだ」
僕は鷹松の目の前で、両手を合わせて頼んだ。
現在、演劇部部員は二週間前に控えた学園祭に向けて各々最後のスパート中だ。演技の追い込みにフル全力な彼に今更のお願いで申し訳ないのだが、来週から衣装を着たリハーサルが始まるのだ。その前に衣装は絶対のものにしておきたい。
「分かった。準備室空いているはずだから、そこで」
瞳の奥で彼の役者魂が揺れたような気がした。彼の真剣な表情に思わず見とれてしまう。
「おい、ぼけっとすんなよ、早く!」
「えっ、今から?」
「ああ、早くしないと昼休みが終わっちゃうぜ」
彼に急かされて準備室まで来たが鍵がかかっている。どうしようかと思っていたが、彼がポケットから合鍵を取り出して開けてくれた。「少しでも時間があれば練習したいから、貸してもらっている」と早口で鷹松。
「じゃ、いい?」
ドアを締め切ると二人だけの空間になる。持ってきた衣装に着替えてもらわねば。後ろを向いた僕の背中に彼が「見るなよ」と声をかけてきた。
背後から衣擦れの音。学校一の美少年と二人きり。意識するとちょっといけない気分になってしまう。
「とりあえず着れた」
彼の言葉を合図にゆっくりと振り返る。
「どう、かわいい?」
茶目っ気一杯の笑顔で尋ねられて反射的に、うんうん、とうなずいてしまう自分が悲しい。
「でも、ちょっと動きにくそうだな」
腕の部分を少し直そう、それから――。
遠くからチャイムが聞こえる。でももうちょっとだけ――。
君を独り占めできる今だけが、僕の至福の時間。(了)
----
✿当作は2019.11.02に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さんにお題『瞳の奥/「かわいい?」』で創作したものです。
「学園祭前に採寸しただろ? もう完成したから、実際に着てチェックしてもらいたいんだ」
僕は鷹松の目の前で、両手を合わせて頼んだ。
現在、演劇部部員は二週間前に控えた学園祭に向けて各々最後のスパート中だ。演技の追い込みにフル全力な彼に今更のお願いで申し訳ないのだが、来週から衣装を着たリハーサルが始まるのだ。その前に衣装は絶対のものにしておきたい。
「分かった。準備室空いているはずだから、そこで」
瞳の奥で彼の役者魂が揺れたような気がした。彼の真剣な表情に思わず見とれてしまう。
「おい、ぼけっとすんなよ、早く!」
「えっ、今から?」
「ああ、早くしないと昼休みが終わっちゃうぜ」
彼に急かされて準備室まで来たが鍵がかかっている。どうしようかと思っていたが、彼がポケットから合鍵を取り出して開けてくれた。「少しでも時間があれば練習したいから、貸してもらっている」と早口で鷹松。
「じゃ、いい?」
ドアを締め切ると二人だけの空間になる。持ってきた衣装に着替えてもらわねば。後ろを向いた僕の背中に彼が「見るなよ」と声をかけてきた。
背後から衣擦れの音。学校一の美少年と二人きり。意識するとちょっといけない気分になってしまう。
「とりあえず着れた」
彼の言葉を合図にゆっくりと振り返る。
「どう、かわいい?」
茶目っ気一杯の笑顔で尋ねられて反射的に、うんうん、とうなずいてしまう自分が悲しい。
「でも、ちょっと動きにくそうだな」
腕の部分を少し直そう、それから――。
遠くからチャイムが聞こえる。でももうちょっとだけ――。
君を独り占めできる今だけが、僕の至福の時間。(了)
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✿当作は2019.11.02に一次創作BL版深夜の真剣一本勝負さんにお題『瞳の奥/「かわいい?」』で創作したものです。
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