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「あぁ…その話は既に立ち消えているんだ…。
あっさりすっぱり、ぱぁっと消えた。
それなのに油断してしまった…済まない……ティルシーの方を優先したばかりにエリィが…」
ティルナスが頭を抱え込んでしまった。
ティルシーと言うのは、現在王立学院に通うエリルシアの姉で、件の王子とは同じ学年だったと記憶している。
尤も、エリルシアは幼いと言うだけでなく、貧困領地の為に日々忙しくしていた事もあって、色々と疎い。
おかげで知っている事と言えば、その程度だ。
「お父様…話が見えません…」
そう、何故姉を逃がすなんて事になっていたのか、それが何故エリルシアの婚約話に繋がるのか、さっぱりわからない。
「あぁ…そう、だな……。
エリィ、王家と私達貴族の間に色々とあった事は…知っているな?」
問われて頷く。
エリルシア達ウィスティリス家には他人事ではない事案だからだ。
エリルシア達が住まう此処は、ロズリンド王国と言う。
現王はそこそこ高齢で王太子夫妻も健在なのだが、この王太子夫妻は玉座に座る事なく飼い殺しされる事が決まっている。
その理由はと言うと、王太子がまだ学生だった時…隣国の姫との婚約話が持ち上がった頃にまで遡る。
諸外国との関係性を重んじて出た話だったのだが、当時の王太子には学院で恋仲となった令嬢がいた。
彼はその伯爵令嬢を妃にと、望んだのである。
隣国との婚姻話は、まだ成立してはいなかったものの、かなり大詰めの段階には入っていた為、隣国側がロズリンド王国に悪感情を持つに至ってしまったのだ。
そして尻拭いの為に、ロズリンド王国からは公爵令嬢が隣国に嫁ぎ、隣国からは侯爵令嬢がウィスティリス家に嫁いで来る事となる。
その頃はウィスティリス家も、現在の様に困窮していなかったので、無事隣国令嬢を迎える事が出来た。
先代のウィスティリス家に、丁度隣国の公爵令嬢が嫁いでいた事で成った縁だったのだが、これによって王家は失墜を免れたと言う。
当然の事だが、王家の求心力は著しく落ちた。
その為、王は王太子に王位は譲らず、その子、現王子に直接王位を渡すと決める。
だが、問題の根は深かった。
国家間の話でさえ、自分の感情で蹴ってしまった過去のある王太子夫妻…特に王太子への不信感は強く、その息子である王子に、娘を嫁がせたい、嫁がせても良いと考える貴族家がなかったのだ。
公爵家には見合う年齢の令嬢がいない……これは公爵家側が、見合う年齢の子を儲けないように調整したのではないかと言われている。
ウィスティリス家含む侯爵家は、急いで娘達の婚姻先を探し、早い者は花嫁修業と称して既に婚家入りさせる徹底ぶり。
先にティルナスが『姉を逃がす』と言っていたのがこれだ。
求心力を失った王家に、愛する娘を嫁がせて苦労させる等考えられない、もしくは旨味のない王家に嫁がせても…と考える親達だったのだろう。
何にせよ、娘としては喜ばしい限りに違いない。
法律として決められたものではないが、婚約には本人の意思確認も必要と、暗黙のうちに学院入学年齢以降というのが普通になっていた。
そして公爵家、侯爵家、共にその年齢に該当するフリーの令嬢は居なくなり、伯爵家以下から見繕うものと思われていたのだ。
まさか暗黙のルールを破ってくる等、想定外も甚だしい。
結果として、その油断をつかれ、エリルシアに婚約打診が舞い込んだと言う話だ。
勿論そんな暗黙のルールを無視したところで罰則などはないが、どうしても貴族達の心象は悪くなるだろう。
だが、それを破ってでも侯爵位以上の令嬢を、王家は欲した結果が今だった。
あっさりすっぱり、ぱぁっと消えた。
それなのに油断してしまった…済まない……ティルシーの方を優先したばかりにエリィが…」
ティルナスが頭を抱え込んでしまった。
ティルシーと言うのは、現在王立学院に通うエリルシアの姉で、件の王子とは同じ学年だったと記憶している。
尤も、エリルシアは幼いと言うだけでなく、貧困領地の為に日々忙しくしていた事もあって、色々と疎い。
おかげで知っている事と言えば、その程度だ。
「お父様…話が見えません…」
そう、何故姉を逃がすなんて事になっていたのか、それが何故エリルシアの婚約話に繋がるのか、さっぱりわからない。
「あぁ…そう、だな……。
エリィ、王家と私達貴族の間に色々とあった事は…知っているな?」
問われて頷く。
エリルシア達ウィスティリス家には他人事ではない事案だからだ。
エリルシア達が住まう此処は、ロズリンド王国と言う。
現王はそこそこ高齢で王太子夫妻も健在なのだが、この王太子夫妻は玉座に座る事なく飼い殺しされる事が決まっている。
その理由はと言うと、王太子がまだ学生だった時…隣国の姫との婚約話が持ち上がった頃にまで遡る。
諸外国との関係性を重んじて出た話だったのだが、当時の王太子には学院で恋仲となった令嬢がいた。
彼はその伯爵令嬢を妃にと、望んだのである。
隣国との婚姻話は、まだ成立してはいなかったものの、かなり大詰めの段階には入っていた為、隣国側がロズリンド王国に悪感情を持つに至ってしまったのだ。
そして尻拭いの為に、ロズリンド王国からは公爵令嬢が隣国に嫁ぎ、隣国からは侯爵令嬢がウィスティリス家に嫁いで来る事となる。
その頃はウィスティリス家も、現在の様に困窮していなかったので、無事隣国令嬢を迎える事が出来た。
先代のウィスティリス家に、丁度隣国の公爵令嬢が嫁いでいた事で成った縁だったのだが、これによって王家は失墜を免れたと言う。
当然の事だが、王家の求心力は著しく落ちた。
その為、王は王太子に王位は譲らず、その子、現王子に直接王位を渡すと決める。
だが、問題の根は深かった。
国家間の話でさえ、自分の感情で蹴ってしまった過去のある王太子夫妻…特に王太子への不信感は強く、その息子である王子に、娘を嫁がせたい、嫁がせても良いと考える貴族家がなかったのだ。
公爵家には見合う年齢の令嬢がいない……これは公爵家側が、見合う年齢の子を儲けないように調整したのではないかと言われている。
ウィスティリス家含む侯爵家は、急いで娘達の婚姻先を探し、早い者は花嫁修業と称して既に婚家入りさせる徹底ぶり。
先にティルナスが『姉を逃がす』と言っていたのがこれだ。
求心力を失った王家に、愛する娘を嫁がせて苦労させる等考えられない、もしくは旨味のない王家に嫁がせても…と考える親達だったのだろう。
何にせよ、娘としては喜ばしい限りに違いない。
法律として決められたものではないが、婚約には本人の意思確認も必要と、暗黙のうちに学院入学年齢以降というのが普通になっていた。
そして公爵家、侯爵家、共にその年齢に該当するフリーの令嬢は居なくなり、伯爵家以下から見繕うものと思われていたのだ。
まさか暗黙のルールを破ってくる等、想定外も甚だしい。
結果として、その油断をつかれ、エリルシアに婚約打診が舞い込んだと言う話だ。
勿論そんな暗黙のルールを無視したところで罰則などはないが、どうしても貴族達の心象は悪くなるだろう。
だが、それを破ってでも侯爵位以上の令嬢を、王家は欲した結果が今だった。
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