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しおりを挟む最初は……ホメロトスがつけてくれた侍女が、きちんと教育を受けた女性で、色々と教えて貰った事が切っ掛けだったと思う。
蓋を開けて見れば、エリルシアの基本的教養やマナーには、全くと言って良い程問題が無かった。
流石は元・大国ネデルミスの公爵令嬢……祖母の教えは完璧だったと言う事である。
祖父母亡き後も、自身で勉強は続けていた。
何より、前世やそれ以前の記憶が戻ったせいで、レベルが段違いになってしまったのだ。
おかげで手を抜いていても、侍女他に絶賛されるようになり、それを聞きつけたのか、ホメロトスが教師を派遣してくれるようになった。
姉ティルシーは学院に通っていて、きちんとした教育を受けているが、エリルシアは祖父母の教えのみで、今までこの国での正式な教育と言うモノを受けた事がない。
だからだと思う……教師から習うと言う初めての経験に舞い上がってしまった。
例え祖父母の教えがあろうと、独学に励んでいようと、また前世以前の記憶を手にしたとしても、この世界、この国に即した学びと言うモノがある。
例えば、災害に対しての行動等、基本は変わらなくても、地形一つで大きく異なる等々…。
だから、とても新鮮で楽しくて、興味が尽きなかった。
瞬く間に吸収し、教師達が感心する程になり、なんのかんのと済し崩しに相談や書類が、持ち込まれるようになり始める。
だが……それさえも些末に思える程の事をやらかしてしまった。
「こんにちは、ウィスティリス嬢、今、時間空いてる?」
先触れもなく、ノックされた扉から姿を現したのは、あれほど近づくまいと決心していたラフィラス王子…。
御尊顔を初めて見たのは挨拶の時だったが、直ぐに意識を失ったので、実を言うとあまり覚えていなかった。
美少年だな~程度の事。
ホメロトスは何かにつけて会わせようとしていたが、のらりくらりと躱しながら会わないようにしていた。
だが、機会は突然訪れた。
あの日は確か…エリルシアが倒れ、図書館と魔具保管庫に通いながらも、楽しく教師から学んでいた頃の事。
エリルシアは領地に戻れば領地経営の一環として、害獣、害虫対策も行わなければならない。その中には魔物も含まれている。
その為、祖父母亡き後、更に困窮が深まってから、少しでも助けになればと冒険者ギルドに登録していた。
魔物に対する知識も深めたかったし、一石二鳥ならぬ一石数鳥を実践している。
武器の扱いや戦闘技術は祖父が叩き込んでくれたので、特に不安にも思わず登録したのだが、これがなかなか性に合っていた。
あれよあれよという間にランクが上がり、現在は既に5階級となっている。
最低ランクの1階級から始まって、数字が上がるほど高ランクとなっている。
領地では流石にドラゴンや大蛇等の超級の魔物は出現しないので、そろそろ頭打ちだろうが、だからと言って何もしなければ腕は鈍って行く。
その為、勉強の合間に騎士達の訓練に参加させて貰っていたのだ。
仮にも貴族令嬢が冒険者だなんて、あまり良く言われない事はわかっていたから、実力を出さないように気を付けていたのだが、ある時、騎士見習の少年の一人が、訓練用の木剣をすっ飛ばしてしまった。
疲労で握りが甘くなっていたのだろうが、いくら木製と言ってもそれなりに勢いがあれば、十分凶器になってしまう。
ましてや形状が形状だ。
誰かに当たれば、怪我を負わせかねないと、咄嗟に身体が動いてしまったのだ。
ぐるんぐるんと回りながら放物線を描く木剣を追い、生垣を飛び越えると人影が見える。
考える暇もなく、その影達を庇う様に立ち塞がり、勢い良く落ちてきた木剣を、エリルシアは手にしていた木剣で叩き落とした。
急いで庇ったが、かなり驚かせた事だろう。
「大丈夫ですか!?」
安否を確認しようと、地面に座り込んでいる人物に向き直った途端、エリルシアは一瞬で石化した。
目に飛び込んできたのは、さらさらの青味がかった金髪……。
そして、その金髪少年に縋る様に腰を抜かしていた、濃いピンク色の癖毛が印象的な少女。
この日……あれほど会わないよう細心の注意を払っていたのに……。
ラフィラス王子とは2度目の…。
噂のメイド少女とは、初めての対面を果たしてしまった。
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