22 / 165
22
しおりを挟む「だから~、わかんないんだって」
同学年の生徒数もそれほど多くないと聞いているので、同じクラスだと思うのだが……。
この辺りは前世及びそれ以前の記憶に、影響されているかもしれない。
「……もしかして複数クラスあったりするんです?
こう、少人数でがっつり学習……とか」
ティルシーは更に残った最後の菓子も、自分の口に放り込み、満足そうに飲み下した。
「んふ♪
はぁ~もう最高、美味しかったわぁ。
おかわりしたい所だけど、流石に太っちゃうわよね……ぅぅ…。
で、なんだったかしら? クラス?
クラスは一つよ」
どう言う事だろう…。
クラスが一つなら、同じ教室で机を並べているのではないのかと訊ねてみると、予想外の言葉が返って来た。
「王子殿下…というより、ピンク金魚が煩くて、別室で授業受けてるらしいのよ。
学年は同じだけど、顔を合わせる機会もないんだもの、わからなくても当然じゃない?」
納得したくはないが、納得せざるを得ない…。
ティルシーが言う『ピンク金魚』とは、恐らくアーミュの事だろう。
色は確かにピンクだし、ラフィラスにべったりだから、金魚の〇と言われても仕方ない。
学院での事は知らなかったが、知ってしまえば更に気の毒に思えてくる。
ラフィラスは友達を欲しがっていた。
けれどその機会さえメイド……ではなく小間使いのアーミュに奪われているとは、全く思いもしなかった。
(私に怒鳴ったのは、木剣を飛ばした犯人だと誤解されたから、ガンを飛ばしてきたのは、てっきり素性が知れない事を警戒されたから……だと思ってたんだけど…。
彼女は四方八方に吠えまくって、最愛の王子サマが人脈を得る機会もぶち壊していると言う事ね。
まぁ確かに不憫ではあるけれど、王子サマ自身もアーミュさんと一緒にいる事を選んでいるのだし、他人がとやかく言う事でもないのかも………)
……………
…………
………………………ィ……ィルス嬢? ウィスティリス嬢!?」
ラフィラスの声に、エリルシアの意識が現実に戻った。
つい回想に耽ってしまったが、そう言えばラフィラスが部屋に来て、時間はあるかと聞いていたのだと思い出す。
「ぁ、申し訳ございません。
……何か御用でしょうか?」
慌てるエリルシアに、ラフィラスはふわりとした柔らかい笑みを浮かべた。
「料理長が新作の菓子を焼いたらしいんだ。
良かったらお茶でもどうかなと。
お祖父様からも、ウィスティリス嬢を是非誘う様にって」
ホメロトスからの声掛となると、無下にする訳にもいかない。
しかし、本当に良いのだろうかと、エリルシアは微かに首を傾けた。
ラフィラスとアーミュは相思相愛っぽいのだから、さっさと婚約なんて拒否れば良いのに…と思ってしまうのだ。
(いやまぁ、新作のお菓子と言うのは興味がありますけどね…。
でも、ずっとアーミュさんに睨まれるのも、精神削られるのよねぇ……はぁ)
何をどう言った所で、断るのが難しいのも事実。エリルシアは引き攣った笑みを貼り付けつつ了承するしかない。
準備があるからと、ラフィラスを部屋から追い出すと、入れ替わりに女性が部屋に入って来た。
ホメロトスからの命で、エリルシアの部屋付きとなった侍女だ。
名前はスザンナ・カルゴー、伯爵家の出のベテランである。
最初はエリルシア付きとなるよう命じられたらしいのだが、王宮に長く滞在する予定はなかった為遠慮した。
しかし、それならば部屋付きに…と強引に押し切られた。
確かに部屋の掃除の担当等もあるだろうし、エリルシアもそれ以上は渋らず受け入れている。
スザンナが髪の手入れをし始めた。
領地では勿論、王都の館でも使用人の手を煩わせる事なく、自分の事は自分でしていたエリルシアだが……そのせいか、人様に何かして貰うと言うのに慣れず、毎回酷く緊張してしまう。
「エリルシア様、そんなに固くならないで下さいまし」
優しく微笑まれて、つい恥ずかしさに俯いてしまう。
恐縮していると、スザンナが溜息交じりに溢した。
「ですが……ぁ、申し訳ございません。
つい…」
「ごめんなさい、私何かしてしまいましたか!?」
気付かないうちにスザンナの手を煩わせてしまったのかもしれない。
振り向いて慌てて謝った。
「ち、違います。
エリルシア様には問題はございません。
ただ……」
言い難い事なのか、スザンナの言葉は歯切れが悪い。
「その……訊ねて良い事なのかわかりませんけど……。
どうかしたのですか?」
エリルシアの問いに、スザンナは再び溜息を落とした。
443
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ
夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」
華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
私を陥れる様な婚約者はいりません!彼と幸せになりますから邪魔しないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアントアーネは、根も葉もない噂に苦しんでいた。完全に孤立し、毎日暴言や陰口を吐かれ、無視され睨まれ、まさに地獄の日々を送っていた。
どうして私が、こんなに苦しまなければいけないのだろう…あの男のせいで…
そう、彼女に関する悪い噂を流していたのは、最愛の婚約者、ラドルだったのだ。そんなラドルは、周りの噂を気にせず、いつもアントアーネに優しく接していた。だが事実を知っているアントアーネは、彼に優しくされればされるほど、嫌悪感が増していく。
全ての証拠をそろえ、婚約を解消する事を夢見て、日々歯を食いしばり必死に生きてきたのだ。やっと証拠がそろい、両親と一緒にラドルの家へと向かった。
予想に反し、婚約解消をしないと突っぱねるラドルだったが、アントアーネは悪い噂を流しているのがラドルだという証拠を突き付け、婚約解消を迫った。その結果、無事婚約解消までこぎつけたアントアーネだったが、彼女を待っていたのは、残酷な現実だったのだ。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同時投稿しています
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる