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しおりを挟むやらかしたアーミュは、騎士達によってその場から連れ出されて行った。
最初は侍女達が連れて行こうとしたのだが、彼女が暴れ出したので、レヴァンが指示を出さざるを得なくなったのだ。
どこへ連れて行かれるのかわからないが、無罪放免と言う訳には行かないだろう。
疲労感が誤魔化しようもなく圧し掛かってきたが、まずはレヴァン公子に庇ってくれたお礼を言うべきである。
「あの、庇って下さってありがとうございました。
失礼して、お召し物に触れても宜しいですか?」
そう言いながらハンカチを手にする。
色味の薄いハーブティーだったし、彼の纏う衣服も黒いので、直ぐ拭き取ればシミにならないかもしれない。
「お心遣い有難うございます。
ですが心配は無用に……レディを守るのは男として当然の事ですから」
「ですが…」
とは言えレヴァンの半身はすっかり濡れている。風邪をひくような季節ではないが、そのまま引き下がる事も出来ないでいると、レヴァンが微かに笑った。
「では貴方のハンカチをお借りしても?」
「勿論です」
「感謝します。
では私はこれで」
そう言って身を翻したレヴァンに、固まっていたラフィラスが慌てて声を掛ける。
「ロージント公子……本当にごめん…。
直ぐに着替えを手配するよ」
「あぁ、いえ、気遣いは無用に願います。
この通り衣服の色は黒ですので、一見ではわからないでしょう」
「しかし!」
言い募るラフィラスに、レヴァンはスッと両目を細めた。
「では……お気遣い下さると言うのでしたら……。
どうぞ御自身の傍仕えの躾くらいはなさってください。
侯爵令嬢に、使用人が故意に茶を掛けようとする等、許されない事ですよ?
その辺りはお分かりですか?」
「ぁ…ぁぁ、わかってる…。
きつく言っておくよ……本当にごめん。
ウィスティリス嬢も本当に済まなかった」
ラフィラスが頭を下げるのを見て、エリルシアは慌ててしまう。
レヴァンは血筋を辿れば親戚なので、平然としたものだったが、流石にエリルシアはそう言う訳には行かない。
「お止めください。
臣下に……しかも侯爵家の次女でしかない私に、尊き御身がそのような謝罪等……反対に身の置き所に困ってしまします。
これ以上は…どうぞお気になさいませんよう、お願い致します」
レヴァンがその場を後にし、ラフィラスも護衛と共に戻って行った。
エリルシアも滞在している部屋に戻る事にする。
室内に入った途端、緊張も抜けたようで、ソファに倒れ込んだ。
基本的にエリルシア以外いない部屋なので、そんな事をしても誰も咎めたりしない。
(あ~~~~疲れた!
もう、本気で疲れたっ!!
しかし大丈夫なのかしら……私は悪役令嬢になる気はさらさらないけれど、あんなに堂々と嫌がらせしてくるなんて、自分の不利になるとか考えないものなの?
お頭が弱いのか、単なる単細胞なのか……一番質が悪いのは、自分が王族と錯覚している場合よね。
ん~王サマは、アーミュさん以外に婚約者を求めてるし、王子サマ自身も婚約者はアーミュさん以外で良いと思ってそう…。
確かにあの日聞こえてしまった話だと、ちゃんと婚約者は高位の令嬢からと言ってたし、アーミュさんもそれは織り込み済みって感じだったように思う…)
エリルシアはソファの上で、ゴロリを寝返りを打った。
(けど、これまでの態度からは、全く織り込んでないって感じよね……。
王子サマの婚約者候補以前の私にさえあんな態度では、この先本当の婚約者が出来たら……うぅ、考えるのも恐ろしいわ。
王子サマを筆頭に、王族の皆々様は眼福ではあるけれど、私は自分の身が可愛いの……やっぱり早々に退散すべき、そうすべき、なんだけど……水脈発見の助けになるような魔具はないみたいなのよね……魔法で探したり出来ないかしら…。
ぁ、そうよ、折角だから魔法について書かれた書物なんかあったりすると嬉しいわね。
前世以前の記憶や知識もあるし、使う事は可能だけど、この世界なりのやり方とかがわかれば、さらに効率は上がると思うもの。
よし、魔法関連の書物を探し出して読破!
これを最後の目標にしましょ)
精神的にも肉体的にも疲れ切っていたエリルシアは、そんな事を考えているうちに、夢の通い路へ旅立った。
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