【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

文字の大きさ
35 / 165

35 狭間の物語 ◇◇◇ ラフィラス4

しおりを挟む
 大好きな幼馴染……なのに僕は少し負担に感じるようになった。
 僕の事を一番だと言ってくれるのに、アーミュは僕の事を本当には理解はしてくれない……そんな気がする。
 だからかな、僕は徐々にアーミュを持て余すようになっていった。

 僕は別に悪い事をしている訳じゃない。
 アーミュ以外の友達に会いたいだけ。

 アーミュは女の子だし…根本の所で話が合わなかったのも、それが原因の一つかもしれない。
 僕は教師から習った事をもっと復習したかったし、そうする義務が僕にはある。だから帰りはその話を深めたいのに、アーミュはいつだって『つまんない』『あたしにはわかんない』『過去の事なんて関係ないじゃん』……こんな事ばっかり…。

 だけどルシアンは違った。
 公共事業の重要性、税の使い道、果ては魔物談義と幅広い。
 幅広いと言っても、広く浅く…ではなく、それなりに深さもあるから話していて本当に楽しい。
 ルシアンを僕の側近に取り立てられないだろうか……お祖父様にお願いしてみようと思うようになった。
 その為にもルシアンの家名が知りたい。
 例え男爵家の出でも、お祖父様が何とかしてくれる……そんな事を考えていた矢先、衝撃の事実を知る事になった。



 ルシアンは、本当は同性ではなく女の子で、ウィスティリス侯爵令嬢。
 僕の婚約者候補――僕が初めて守りたいと思った女の子だった。

 本当に恥ずかしい限りだよ…。
 女の子を同性と勘違いするなんて……しかも顔合わせもしたと言うのに…僕はなんて間抜けだったんだろう。

 だけどそれ以上に心は弾んでいた。
 側近にとお願いしなくても、婚約者候補なら傍に居られる、居てくれる。
 それこそ未来永劫……。
 彼…いや、彼女と過ごす時間は本当に楽しくて、それがこれからも続くのだと思うと、僕は本当に嬉しかった。



 神様は浮かれた僕に罰を下したのだろう。
 本当にアーミュの事をわかってなかった…それを痛感する。

 まさか、幼いとは言え侯爵令嬢相手に、あんな馬鹿な真似をするだなんて、想像の斜め上を行きすぎだ。
 ……いや、自分の責任でもある…僕とアーミュの温度差を、僕は軽く考えていたんだから。

 本当にロージント公子には感謝しかない。
 彼がウィスティリス嬢を庇ってくれなければ、どうなっていたか……。
 本当に反論の余地もない……そう、アーミュは僕の幼馴染だけど、王宮内での身分は男爵令嬢にすぎない。
 一体どうして男爵家の出でしかないアーミュが、侯爵家の令嬢を害せると思ったのか、許されると思ったのか……きっと僕のせい…。
 僕がしっかりしなきゃいけなかったんだ。

 この件は報告しなければならない。
 僕がしなくても、侍女や護衛達、何よりロージント公子が黙っていないだろう。
 アーミュは取り押さえられて連行されていったのだから、どのみち隠しようもない。

 ウィスティリス嬢の事は気掛かりだったけど、ロージント公子がその場から離れた後、僕もお祖父様の所へ急いだ。





 執務室にはいると、お祖父様が動かしていたペンを止めて顔を上げた。

「フィス?
 何かあったのか?」

 僕は一瞬グッと詰まったけど、何とか声を出す事が出来た。
 つい今しがた起こった事を、僕はお祖父様に説明する。
 お祖父様の表情はどんどんと、険しくなっていった。

「……むぅ…アーミュは何を考えておるんじゃ…。
 にしても騎士達が連れて行ったか……まぁ流石に牢に入れる事はないだろうが…いや、ウィスティリス嬢とジョストルの孫の手前、1日だけでも牢で反省させた方が良いのか…いや、可哀想じゃの……。
 よし、後で騎士団長に話しておく。夜までには解放するよう申し付けておくから、安心するが良い」

 僕は耳を疑った。
 あんな事をしでかしたのに直ぐに開放だなんて、ウィスティリス侯爵やロージント公爵に何と言い訳するんだ…?

 あぁ、そうか……僕だけじゃない…。
 僕とお祖父様が、アーミュを増長させた…。
 僕とお祖父様が、貴族社会のあたりまえを蔑ろにしていたんだ…。

「いえ、お祖父様。
 アーミュのやった事は、到底許される事じゃありません。
 男爵家の者が、侯爵令嬢を故意に害しようとしたんですよ? 直ぐに解放だなんてウィスティリス侯爵やロージント公爵に何と弁明するんですか?」
「う……そ、れは…」

 そうしてアーミュが直ぐに解放される事は無くなった。
 ただ、牢じゃなく懲罰房だったのは吃驚したけれど、それもこれも、僕とお祖父様がアーミュを特別扱いしすぎた結果だ。
 反省しなければならないのはアーミュだけじゃない。

 それを話そうと、こっそり懲罰房へ向かったのに……そこで目の当たりにしたのは、アーミュの醜悪な姿と聞くに堪えない罵詈雑言。

 だけど、そんなモノはまだ序の口だったんだ。
 本当の後悔はまだ……もう少し先で待ち構えていた。



しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】捨てたものに用なんかないでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
血の繋がらない姉の代わりに嫁がされたリミアリアは、伯爵の爵位を持つ夫とは一度しか顔を合わせたことがない。 戦地に赴いている彼に代わって仕事をし、使用人や領民から信頼を得た頃、夫のエマオが愛人を連れて帰ってきた。 愛人はリミアリアの姉のフラワ。 フラワは昔から妹のリミアリアに嫌がらせをして楽しんでいた。 「俺にはフラワがいる。お前などいらん」 フラワに騙されたエマオは、リミアリアの話など一切聞かず、彼女を捨てフラワとの生活を始める。 捨てられる形となったリミアリアだが、こうなることは予想しており――。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります

恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」 「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」 十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。 再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、 その瞬間に決意した。 「ええ、喜んで差し上げますわ」 将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。 跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、 王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。 「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」 聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...