【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

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 ベネティの話にパチュリーが目を丸くする。

「は?
 ……………何、ソレ…。
 ネデルミスが何だって我が国に矛先を…?」

 筆頭公爵家の嫁として、後継夫人として社交界でそつなく振る舞ってきたパチュリーだが、そんな話は義父であるジョストルや息子であるレヴァンからも聞かされた事はない。
 隣に座るフィミリーがそっと目を伏せた事にも気付いていない。

「矛先ってぇ、物騒ねぇ。
 でも大丈夫なのぉ? 嫁ぎ先の事なんて調べ回って~…」

 ミリアの心配もわかるが、当のベネティは何処どこ吹く風と受け流し、薄く微笑みまで浮かべている。

「あら、私は当然の事をしたに過ぎないわ。
 嫁いだと言っても私と旦那様…フォマット様とは政略よ?
 子も儲けているのだから、身内としての情はなくもないけど…」
「相変わらず『ベネティ』だわ」

 パチュリーが呆れたように言う。

「ふふ。
 でも私だけではないでしょう?
 王太子…いては国に嫁いだフィミリーと、婿を取ったミリアには少し当てはまらないかもしれないけれど」

 お茶の香りを楽しむように、カップを持ったまま柔らかく口角を引き上げたベネティに、侍女として控えていたソフォナが頷いた。

「そうね。
 婚家の構成人であると同時に生家の構成人でもあるから、無条件に婚家を取ったりはしないわね」

 侍女がして良い物言いではないが、ベネティの娘であるヨラナ以外は誰も気にしていない。
 気の置けない友人というのは本当なのだろう…と、ヨラナは言葉を飲み込んだ。

「そうそう。ソフォナの言う通りよ。
 あくまで『同時に』なのよね。
 だからその時々で、重きを置く方は変わるわ。
 で、今回の場合、私はロズリンドに戻るという選択をしただけの事」

 ベネティの話にパチュリーが腕組みをして、ソファの背凭れに凭れ掛かる。

「ちょっと聞きたいんだけど…。
 その王子は兎も角、王女って……まさか」
「その『まさか』だと思うわよ?
 だってベスピネ王女の事も調べてあるんでしょう? だったら……ねぇ? 想定通り過ぎて爆笑しちゃう?
 まぁ、ネデルミス王家も…対外的にはカプシャ王子とプルチェ王女の出来の悪さは隠したい様子だけど、そんなもの、簡単に漏れ出てしまうわよねぇ。
 なんたって二人して大人しくなんてしてないもの」

 パチュリーの蟀谷こめかみがピキリと引き攣った。

「くっそ王女め……男漁りだけに飽き足らず、とうとう国家間に不和までもたらそうって魂胆な訳!?
 キィィィィ!!!」

 拳をグググッと握りしめていきり立つパチュリーに、隣のフィミリーが慌てて宥めに入った。

「ちょ…落ち着いて」
「落ち着いてられるかってのよ!!
 あんの馬鹿オンナ……あいつのせいでうちのレヴァンが女性嫌いになってしまったのよ!?
 もうお義父様がそれを良しとしてるから、わたしも口出ししないようにしてるし……後継は嫁いだ娘の子を養子に…って話に纏まりそうなんだけど…」

 萎れたパチュリーに、ベネティも重い溜息を零す。

「そこまで酷い事になってたのね…。
 ごめんなさい、あの時もう少し締め上げておくんだったわ」
「ううん…十分やってくれたわよ。
 ベネティが間に入ってくれなきゃ、抗議も届かなかったかもしれないし……」
「いえ、結果的には不十分だわ。
 まさか後継を諦める程だったとは……。
 まぁプルチェ王女には、うちのヨラナも被害を被ってるのだけど…」

 ちらりと自分の娘を流し見るベネティの視線は、かげりを帯びながらも慈愛に満ち溢れていた。





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