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4章 小さな世界に集いしモノ
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ゲーム中の暗殺場面は、ヒロインシモーヌの暗殺失敗という1件しか描かれていなかったので、彼の力量は実のところ不明だ。
そのシモーヌ暗殺未遂も、いつの間にかアイシアが依頼したとか騒ぎ立てられることになり、断罪に繋がっていくのだが、学院に通いだしたとはいえ、その送迎は王家所有の馬車で護衛付き。
学院内でも護衛と言う名の監視が付き、それは王城へ戻ってからも変わらない。
そんなアイシアに、どうしたら裏組織とやり取りをすることが出来たのだ?…と、前世では本気で問い詰めたいとエリューシアは思っていた。
しかもシモーヌときたら、意味深な視線をクリス王子の後ろから送り、余計にアイシアへの疑惑を助長するという屑っぷり。
何の証拠もないのに、そんな所業をする始末だから、本気で嫌悪しかなかった。
っと、それはさておき……。
攻略対象カーティスには年の離れた弟がいる設定になっていた。
ゲーム中の回想シーンでは、そのカーティスの弟が道の真ん中で転んで動けなくなり、そこに運悪く馬車が突っ込んでくるのを、シモーヌに救われるというシーンがあった。
そして時間は流れ、何処かの誰かからの依頼でシモーヌ暗殺に向かうが、ターゲットは弟の命の恩人であったという顛末だ。
ちなみにだが、カーティスルートを選んだ場合、暗殺を失敗に終わらせた以上国外に逃げるしかないと、手に手を取って旅立っていくのだが、もれなくアイシアの断罪付きである……心底解せぬ。
で、だ……その弟クンとの接触が、明確にはされていないものの、スチルや設定資料集から察するに、学院入学前後のように読み取れるのだ。
昨今王都で発生しているという誘拐事件に、シモーヌの関与が否定できない以上、彼女が王都に既に来ている可能性も考えなくてはならない。
もし既に接触されてしまっていたら、暗殺者としての力量は不明ではあるが、裏社会に生きる者を敵に回す事になってしまう。
彼が高い技量を持っていたとしても、エリューシアに危害を加える事は難しいだろうが、周囲はそうではない。
アイシアはじめ家族には護衛が付くが、使用人達はそうではないのだ。
自身が戦闘力を磨いているオルガやサネーラ、メルリナら騎士達は兎も角、ノナリー達戦闘力を持たないものも多い。そんな彼らがもし狙われて被害に遭ったとしたら、エリューシアは間違いなく自分を許せないだろう。
だから、まだ間に合うなら、こちらに引き込むつもりである。
間に合ってなかったら……自分の手を汚す事も視野に入れている。
どれほど魔法技術や魔力、剣技や錬金術など、知識を蓄え磨き上げても、ずっと追い立てられるような焦燥感が消える事はなかった。
その理由は既に理解しているつもりだ。
エリューシアには自分の願いの為に、他者に危害を加え、その命を奪う覚悟が出来ていなかった。
精霊防御やカウンターを喜んだのもそのせいだ。
それらはエリューシアの意志に関わらず発動する。結局自分のせいではないと言い逃れが出来るのだ。
相手が誰であっても発動するので、王家に対しても有効な言い訳になる。
それ以上に自分の手が汚れる訳ではないと、すり替えが出来るのだ。
だが、カーティスについてはそんな甘い事を言っていられない。
自分側に引き込めるなら兎も角、敵になるなら放置するのは危険なのだ。
裏社会に生きる者が、他者の命を奪う事に躊躇するはずはない。いくら力量は分からないと言っても、そんな事は何の慰めにもならないのだ。
そして…これも前世の記憶に基づくモノだから、オルガ達に説明が難しい。
結果から言うと、言い分は通った。
言い訳が功を奏したのかどうかは分からないが、王都の警備に関与する人物に、アーネストが声をかけてくれるという。
エリューシアとしては言い訳に使ったように、学院外にも知り合いがいる方が良いというのも本当だが、前にも言ったように別角度の情報が欲しい事も事実。
ならばと出向く気満々だったのだが、流石に相手にも都合がある。
とりあえず連絡を取って、相手方の都合を聞くことになり、アーネストが早々に手紙を認めて送ってくれた。
余計な用事を増やしてしまったので、両親が今日中に領地への帰途につくのは難しいかもしれず、その事を詫びると、父母は顔を見合わせて笑い首を横に振った。
「リムジールらのおかげで色々とごっそりもっていかれたからね、領地へ戻るのは延期しようかと思っていたんだ。
だからエルルが気にしなくて良いんだよ」
「そう、それにちょっと考えている事もあるから、王都滞在が延びる事は問題ないわ。
ハスレーにも手紙は送り済みよ」
セシリアの微笑みに昏い色を感じ取り、『考えている事とは何か』聞くのはマズいかもしれないと躊躇してしまう。
まぁ今聞かずとも、そのうち機会があるだろうし、なんなら聞く前に判明するかもしれないと、苦笑いで流す事にした。
その後アイシアが起きて来たので、少し遅めの昼食を摂り、それぞれが寛いだり日課をこなしたりしていると、ネイサンが一通の手紙を届けてくれた。
アーネストが受け取り、開いて目を通している。
どうやら警備に携わるアーネストの知り合いから、早々に返信が届いたらしい。
王都警備を統括しているという、第4騎士団の第2部隊の隊長を務める人物なのだそうだ。
今日明日で時間は取れないが、それ以降なら可能と言う返事だった。
早速返信をアーネストが書き、ネイサンに渡している。
その様子に不思議そうにしていたアイシアだったが、事の成り行きを説明すれば納得してくれた。
焦った所で仕方ないので、まずは明日の始業に備えよう。
学業は勿論手を抜くつもりはないが、オルガから聞いたクラスメイトの中に、子爵家養女がいる。
考えなしにダイレクトアタックするつもりはないが、観察は必要だろう。
始業日のスケジュールというと、まずは生徒間の親交を深めるような事をしたり詳細説明等を想像するが、残念ながらガッツリ授業になっている。
まぁ子供とは言え10歳前後で、各自家で既に家庭教師等に学んでいる者が殆どなのだから、そんなものだろう。
(魔法基礎学……改めて時間割を見ても、魔法に関する授業が多いわね。
他は……あぁ、選択授業があるんだっけ。
女子生徒は刺繡なんかを取る生徒が多いみたいだけど、私はどうしようかな……シアお姉様と同じにするか、後々の事も考えて、薬草学や魔具の授業も良いかも)
辺境伯領で医療の勉強はしてきたが、その中でも薬草については現地で入手できる物しか学ぶことは出来なかった。
しかし学院なら……植物園などが併設されていれば、まだ見ぬ薬草について学ぶ事も期待できる。
魔具についても辺境伯家では、王家から制限を受けない、警備など治安維持に関する物が多かった。
特製カツラや特製眼鏡の様な、変装グッズを作る事が出来たのは僥倖だったが、通信や転移など、本当に有用なものについては、殆ど手を出す事が出来なかったのだ。
(まぁ転移は魔法でどうかできたから良いけど、通信手段は早く欲しいのよね…学院でも制限はされるだろうけど、独学よりはマシなはず。
うぅん…どうしよう、魔具関連か薬草学関連か……悩むわ)
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