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2章 SAIKAI
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しおりを挟む陽月が元々あまり社交的ではないと言うのを、他のクラスメイト達は覚えていたらしく、最初の挨拶が終われば放置気味にしておいてくれる。
決して虐められていた訳ではない。
尤も……遠巻きにされていた自覚は無きにしも非ず…ではあるが…。
何にせよ、周囲の賑わいを聞きながら、陽月自身は一人静かに食事をしていた。
酒自体はどちらかと言うと好きな方なのだが、童顔のせいで未成年に間違われた過去もあり、外では飲みたいと思わなくなってしまった。
現在は自宅のようになっている事務所で、仕事が終わってからササミを相手に…の宅飲みオンリーである。
こういう場で、食べる専門だと暇を持て余してしまう。
とは言え、現在は同窓会と言う名の祝いの席である以上、事件の話を聞ける雰囲気でもない。
正直に言うとさっさと話を聞きたい所だが、こればかりは仕方ないだろう。
だが暇は暇なりに過ごしていれば、やがて宴も終焉に近付いた様だ。
久しぶりの邂逅に、連絡先の交換などをしてる皆をぼんやりと眺める。
先に座敷から出ようとしたのだが、それを隣の真に止められた。
別れの挨拶は簡単な物だ。
中には酔狂な輩も居て、陽月に『また会おう』とか言って連絡先を押し付けてくる者も居たが……。
三々五々に皆の姿が遠ざかっていく。
それを見送ると、座敷に残ったのは陽月を抜けば5名。
陽月へのメッセンジャー兼依頼人 則岡真。
陽月を引っ張り込もうと言った張本人 行木英美子。
2年3組委員長だった 井前澄枝。
副委員長にして井前の婚約者 松代勇太。
そして2年3組担任 新居見春平。
全員が、行方不明となり、最近になって死亡が確定した林田花央里と、何らかの関与があった人物だ。
帰路に就く最後のクラスメイトを見送っていると、店員達が食器の片付けに入ってくる。その店員に行木が追加で飲み物を注文している。
そしてテーブルの片付けを終えた店員が座敷の障子を閉めた途端、室内の空気はさっきまでの賑わいがスンと消え去り、代わりの様に重苦しい沈黙が広がった。
そんな中、最初に口を開いたのは行木だ。
「えっと……他の店に移動も考えたんだけど、此処で良いわよね?」
陽月に聞いているのだと、皆の視線から把握して頷く。
「何はともあれ……鷹峰にはごめん。
私が鷹峰を巻き込もうって提案したのよ。
で、依頼の件も了解よ。此処にいる…地蔵さん先生以外の5人で、きっちり支払うから。
ほんとは松代にも頭数に入って貰うつもりなかったんだけど…」
ほんの少し、苦虫を噛み潰したような仄暗い表情で視線を泳がせる行木に、松代がムスっとして口を挟む。
「いや、俺かて1年の時は1組で、林田さんとはおんなしクラスやったし。
何より澄江の友達やで?
仲間外れにせんといて欲しいな」
「って言うのよね…」
行木が呆れたように肩を竦めた。
そして腕時計を確認する。
「まだちょっと時間があるわね」
行木の呟きに、陽月は首を傾げた。
時間もそうだが、さっき『5人』と言っていなかっただろうか?
今、陽月の前に居るのは新居見を除けば4人しか居ない。
「あぁ、ごめん。
あと一人来るから」
なるほど…と頷く。
とりあえず最後の一人が来ない事には話が始まらないのだろう。
陽月も自分の腕時計を確認して、今日は終電に間に合うか微妙だな…と声には出さずに独り言ちた。
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