💘Purple Violet⚜️💐 堅物実直なノンケ親友への想いを、27年越しに伝えてテンパるゆるふわ一途イケメンのお話

良音 夜代琴

文字の大きさ
10 / 97

第4話 後悔に溺れる(1/11)

しおりを挟む
その日、レインズは彼らしくないほどに飲んでいた。
彼のお酒は楽しむもので、溺れるものではなかったはずなのに。

「おい、もうそのくらいでやめておけ」
茶色がかった黒髪を後ろに撫で付けた男は、精悍な顔立ちのくっきりした眉を心配そうに寄せて言う。
レインズは親友の黒い瞳をチラと見ると、手元のグラスへと視線を戻した。

「……っ、これが飲まずにいられるかよ……」
普段は花でも背負いそうなほどに整った顔立ちの、いかにも爽やかな金髪碧眼が、今はすっかり荒んだ様子で酔い潰れている姿にルストックは困惑していた。

「何でお前がそんなに荒れるんだ。怪我をしたのは俺だろう?」
男の言葉に、鋭く碧眼が向けられる。
「お前が!! 取り返しのつかない怪我をしたから!!! 俺が荒れてるんだよ!!!」
あまりの剣幕に、黒髪の男が一瞬気圧される。
戦場以外でこいつが声を荒げる事なんて、そうそうない。
むしろ、戦場でだって余裕の笑みを浮かべているような、いつだって飄々としているこの男が……。
「だから、どうしてお前が荒れるんだ……」
ルストックはため息と共に同じ問いを口にするが、答えはなかった。

金髪の親友は、海のような青い瞳を後悔の色に染め切って、唇を噛み締めている。
そうさせているのが自分だということが、ルストックには心苦しかった。

けれど、城下町の酒場で騎士団の隊長格である男が、あまり無様な姿を晒すわけにはいかないだろう。
じっくり話を聞いてやるためには、場所を移すしかないようだ。

「ほら、もう帰るぞ、俺の肩に――……」
そこまでで、男は気付く。
自分がもう、今まで通りの体ではない事に。

ルストックは現在、動かない片足のかわりに片腕で杖を付いて生活していた。

「……いや、すまん。うっかりだ」
茶色がかった黒髪を揺らして、ルストックが苦笑する。
「もう俺では、お前を支えてやれないんだな……」

このあまり酒に強くない、飲むとすぐ酔う親友の肩を支えて家まで送ってやるのはいつもルストックの役目だった。
もう二十年ほどもそうしてきたせいか、そうするのが当たり前過ぎて、そう出来なくなる日が来るなんて思ってもいなかった。

自嘲気味のルストックの言葉に、涙を零したのはレインズの方だった。
目の前でぼろぼろと大粒の涙を零されて、ルストックは慌てて席を立った。
腕でマントを広げて、レインズの顔を誰にも見られないように隠す。

「っ、俺が…………」
ギリっと音立てたのは、レインズの奥歯だった。
「俺が……そばに居たら……っ!!」
予想外の言葉に、ルストックが目を丸くする。

「お……お前……。まさかそんなこと悔やんでたのか……!?」

驚きを通り越して、呆れてしまいそうだ。
俺達は、全然別の場所に派遣されていたのに。
駆け付けられるような場所ではなかったし、実際今日レインズが王都に戻ってくるまで、レインズはルストックが怪我をしたことすら知らなかったのに。

「……お前が、俺の怪我に責任を感じる必要なんて、何ひとつないだろうが」
苦笑と共に告げた言葉は、男が自分で思うよりもずっと優しい声だった。

「俺は……、俺が……許せないんだよっ!」

苦しげに吐き捨てる金髪の男に、ルストックは大きくため息をついた。
とにかく鳥車でも頼んで、ここから移動した方がいいな……。と、顔を上げて店内を見回すと店の隅で見慣れた小柄な男がペコリと頭を下げた。
下げた小さな頭の後ろで、大きな赤いリボンが揺れている。

「ロッソ……?」
「店の東に鳥車を待たせています。よろしければお使い下さい」
「どうしてお前がここに……?」
「団長よりお言葉を預かっております。お二方とも、明日の会議は来なくて良いとの事でした」

「団長が……?」
ルストックは、あの淡い金髪の団長を思い浮かべて苦笑いを浮かべた。

「すまんがロッソ、手伝ってくれるか」
「はい」

「……俺は、一人で歩ける……」
マントの向こうで、レインズの不服そうな声がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

没落令息はクラスメイトの執着に救われる

夕月ねむ
BL
突然父親の爵位がはく奪され、帰る屋敷も家名も失ったローレンス。貴族が集まる学院の寮からも放り出されるところだった彼を、クラスメイトのユリシーズが引き留める。 「侯爵家の私であれば、従者をひとり授業に同席させることができる」と言って。 ユリシーズの従者となったローレンス。けれどその二年後、彼らの関係は再び大きく変わることとなった。 ※FANBOXからの転載です。 ※他サイトにも投稿しています。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...