💘Purple Violet⚜️💐 堅物実直なノンケ親友への想いを、27年越しに伝えてテンパるゆるふわ一途イケメンのお話

良音 夜代琴

文字の大きさ
17 / 97

第4話 後悔に溺れる(8/11)

しおりを挟む
はだけたシャツの胸元へ手を突っ込むと、俺より幾分か薄い胸板があった。
筋肉は当然付いているが、俺ほどの盛り上がりのない胸をそっと撫でる。

「ん、ぅ……」
俺の口内でレイのくぐもった声が漏れる。
胸を撫でられただけで、感じてるのか?
俺は苦笑を堪えつつ、レイがしてくれたように、胸を弄った。

「んっ、……んんんっ」
敏感な突起は既に立ち上がりかけていて、それに触れればレイはビクリと腰を揺らした。
こいつ、どんな声を上げるんだろうな。
なんとなく声が聞いてみたくなって、レイの口を塞いでいた唇を離す。
レイは真っ赤な顔でとろんと蕩けそうな瞳をして、うっとりと俺を見つめていた。
口付けひとつで蕩けるほどに、そんなに俺の事が好きなのかと思うと、何だか少し愛しく思う。
こいつの上に覆い被さりたいところだが、片足が動かないのでは難しいしな……。
俺はレイの肩を掴むとぐいと引いて隣に寝かせた。
レイはちょっと驚いた顔をしたが、まだうっとりと俺の顔を見つめている。

そういやこいつは昔から、振り返れば必ず目が合うやつだったな。
そんなにずっと、俺ばかりを見てたんだろうか……。
くすぐったい気持ちと喜びが、胸に溢れる。
俺は向き合う形で横になったレイの首筋へ、まだ銀糸を引く唇でそっと口付ける。
「あ……」
小さく震えたレイから素直に漏れた小さな声に、俺の背を熱い物が上がる。
そのまま首筋に舌を這わせると、レイはまた震えるような声を漏らした。
「んっ、……う、あぁ……」

こいつ今はちょっと酒臭くはあるが、それでもやっぱり、いい匂いがするよな……。
レインズは昔から花のような香りをさせていた。
それは甲冑を纏うようになっても変わらなかった。
汗と甲冑の臭いが混ざった男臭い連中の中にいて、何故かいつもレインズだけは、ふわりと花のような香りを纏っていた。
気になって尋ねたら、使ってる石鹸だとか化粧品が男臭い俺達とは違うんだと言っていたな……。

俺はそんな事を思い出しながら、良い香りを漂わせるその首筋を丁寧に舐め上げる。
「ぅ、く……ぅん……」
耳元で小さく漏れるレイの声は、何だかたまらない気分にさせた。
入れたい。そう思ってから、しばし考える。
「なあ、下はどうしたらいいんだ?」
尋ねると、レイは半分蕩けた顔で苦笑した。
「じゃあ、俺支度して来るから、……待っててくれよ?」
そう言い残すと、ふらふらした足取りでレイは風呂場へ向かう。

まるで俺が帰ってしまうんじゃないかと心配しているような口ぶりが、俺には少し不服だった。
心配せずとも、俺はそんな不義理なことをするつもりはない。
付き合うと言った以上、最後まで居るに決まっているじゃないか。

あいつが不安がる理由は何だ?
いつもの余裕綽々で優雅ささえ感じるあいつと、今日の余裕なく泣き縋るあいつはあまりにかけ離れていた。
今まで、あいつが余裕を無くした顔を見たのはどれほどあっただろうか。
今日、俺の足が動かないと知った時。
その前は……ああ、蟻の巣まで俺を取り返しに来てくれた時もずいぶん余裕のない顔をしていたな。
その前は……。……そうか、俺の結婚式で泣いてたのも、好きな奴が出来たと伝えた時に泣いていたのも、あれは悲しかったんだな……。

なんだ、結局レイが余裕を失うのは全部俺絡みの事ばかりじゃないか。

俺は小さく苦笑する。気付けなかった悔しさに、少しだけ胸が苦しくなった。
しかしそうなると、俺が付き合い出してから結婚して妻と子を失うまで、十年もの間。
レイは自分の気持ちに蓋をして、俺に笑いかけてくれてたのか。
俺は、あいつの気持ちに気付かないまま、デートの相談やらプレゼントの相談やら本当に何でも尋ねてしまった。
それなのに、あいつは嫌な顔ひとつせずいつも良いアドバイスをくれて、服まで一緒に買いに行ってくれて。
『似合ってるぞ、ルス。これなら彼女も惚れ直すんじゃないか?』
なんて、一体……どんな気持ちで口にしてたんだろうか。

あいつがどれほどの無理をして俺を大事にしてくれていたのか、それに気付く度に、俺は胸が締め付けられた。
子ができたと伝えたら、誰より喜んでくれた。
親兄弟のいない俺にとって、レイはかけがえのない存在だった。
妻の妊娠中も、気の回らない俺に代わってあれこれと差し入れをしてくれて。
子が生まれれば、まるで自分の子の様に可愛がってくれた。

ずっと、本当の気持ちを隠し続けて。
どれほど胸を痛めていたんだろう。
それほどの辛さを話してもらえなかった事は、親友として悔しくもあるが、あいつにとって俺は、ずっとずっと、親友ではなかったんだろう。

そうか。
あいつはきっと、ずっと怖かったんだ。

俺に気持ちを隠している事は、俺を騙している事と同じだったから。
良かれと思ってしていても、やはり罪悪感があったのだろう。

さっきのレイの悲しみと絶望に染まった顔が胸に蘇る。
『っ違う! 違うんだ! 俺は、お前を騙してたわけじゃなくて……』
悲痛な叫びはまるで血を吐くようで、青い瞳は今にも壊れてしまいそうだった。
あいつはそれきり何も言えなくなって、俯いて泣いていた。
肩を震わせて泣くあいつが酷く小さく見えて、何とか慰めてやりたくて、俺はあいつを胸に抱いた。

あいつは罪悪感に苛まれている。
もしかして、俺を好きになってしまった事を、俺に対して申し訳なく思っているのだろうか……?
だとしたらせめて、お前が恥じることは何もないと、俺はお前に愛されて嬉しいと伝えた方が良いな。

……また、読みが甘いと言われてしまうかも知れないが。
俺がじわりと口端を上げると、部屋の扉が開いた。
チラと壁にかかる時計を見上げれば、時間はまだ真夜中というほどでもない。
夜はまだまだ続きそうだ。

今夜はゆっくり、レイの本当の心を暴いていくとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

処理中です...