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エピローグ 騎士の誓い
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「……ん…………」
目を開いたら、視界の端にルスの背中があった。
部屋の中はもうすっかり明るくて、昼よりはもうちょい後だなとカーテンの開かれた窓の外を眺めて思う。
「レイ、目が覚めたか」
俺の寝ていたベッドに腰掛けて本を読んでいたらしいルスが、パタンと本を閉じて振り返る。
起き上がろうとして腹筋に力が入った途端、腹を中心にそこら中が痛んだ。
「いっ…………てぇ……」
腕で体を支えようとするも、腕までもが震えている。
「おはよう。身体は大丈夫か?」
心配そうに覗き込むルスに、俺は叫んだ。
「っっっ、大丈夫なわけあるかっっ!!」
声までもが、酷く枯れている。
「やはりそうか……。明日まで休暇を取った方が良さそうだな。三番隊の明日の予定はどうなっている?」
真剣な顔でルスは俺の休暇取得に向けて確認してくれているが、俺をこんな状態にしたのは、お前だからな……?
俺は恨みがましい目でルスを見上げる。
「そんな顔をしてくれるな。すまない。ちょっとタガが外れてしまったようだ。以後このような事のないよう、十分留意する。どうか許してくれ」
ルスは俺の視線を受け止めて、申し訳なさそうに謝る。
真摯に謝罪されて、俺はじわりと視線を逸らした。
そんな風に言われたら、文句だって言えないじゃないか。
「ぜ……絶対だかんな……?」
拗ねるような自分の声が何だか恥ずかしくて頬が熱くなる。
「ああ、誓おう。これからはお前を抱き潰したりしない。大切に……大切に抱くと……」
うっ……。いや……。別に乱暴されたわけじゃねーけどさ……。
うん。……ちゃんと、大切にはされてたよ。
ただ、お前……絶倫過ぎんだろ……。
昨日のあれこれが一気に甦って俺の頭が茹で上がる。
カーッと熱くなる顔を隠すようにして手首を目の上に重ねる。
「熱があるのか……?」
ルスが俺の額に触れて、首を傾げる。
そんなん熱いに決まってんだろ。今真っ赤なんだからさ!
「ちょっといいか?」
尋ねながら、ルスは俺の腕をそっと退けると額を合わせてきた。
ルスの顔が超近い。ルスの静かな息が顔に当たる。
ルスの体内の匂いに、俺はどうにもたまらなくなった。
「確かに少し熱いようだな……」
黒い小さな瞳が、心配そうに俺を見つめながら遠ざかる。
それが酷く寂しくて、俺は必死で手を伸ばして引き寄せた。
唇を重ねても、ルスは俺の中に入ろうとはしない。
昨夜はあんなに求めてくれたのに……。
俺は何だか悲しくなって、舌先でルスの唇に縋った。
ルスは唇をそっと離すと、困った顔で言った。
「そんな風にされると、また抱きたくなってしまうだろう?」
「お……お前……、どんだけだよ……」
俺は一瞬引き攣った顔になってしまったが、それでもやっぱり求められる事は嬉しかった。
じわりと緩んでしまった頬で苦笑して返せば、ルスは目を細めて俺を愛しげに見て額に優しく唇を寄せた。
「昼食を作ってある。ここで食べるなら運んでこようか?」
そう言ってルスは立ち上がる。
「ん、頼む」
そっか。ルス、俺のために料理作っててくれたのか……。
ルスが運んできたトレイの端には、真新しいスミレの花が一輪添えられていた。
たおやかな曲線を持ちながらも凛とした佇まいの、小さな紫色の花。
わざわざ朝から外に出て摘んできたんだろうか。
……俺のために……?
スミレの花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」だ。
そのどれもが、ルスにぴったりだと思う。
ルスの摘んできてくれた紫色のスミレには「愛」という花言葉もある。
おそらくおばさんはそれを指して、ルスにこの花を差し出すよう告げたんだろう。
この街のあちこちで、紫色のスミレは毎年咲き誇るから。
俺達が暮らすこの場所で、俺達がずっと愛を見失わないように……。
俺は、ルスが捧げてくれた愛の花を見つめる。
まだ春と呼ぶには肌寒い中で、この花は俺達のために、少し早めに咲いてくれたんだろうか。
俺の体はすっかり綺麗にされていたし、ベッド周りも整えられている。
俺はルスの愛にすっかり心満たされて、幸せな気持ちで口を開く。
「それってさ、ルスが食べさせてくれんの?」
へらっと笑って尋ねれば、ルスは真面目そうな眉を片側だけひょいと上げて答えた。
「俺は口移しでも構わないぞ? お前がその後どうなっても良いならな?」
「なっ……!!??」
カアッと顔を赤くする俺を、ルスは楽しそうに眺めて言った。
「冗談だ」
うっっ。そんな脅しめいた冗談でそんな爽やかに笑う奴があるかっっっ。
そう思いながらも、俺の瞳はルスの笑顔からほんの少しも逸らせない。
ルスはそんな俺に気付いてか、黒い瞳に愛を滲ませた。
あの頃の、少年だったルスの温かい眼差し。
俺はそれに惹かれて、それに焦がれて、ルスの背中をずっと追いかけてきた。
あの娘に注がれる眼差しに、もうずっとルスは俺の物にはならないんだと思って。
背を見てるだけでも十分だと、思い込もうとしてた。
……なのに、ルスは俺を振り返ってくれた。
温かな陽射しが差し込む室内で、ルスの小さな黒い瞳が小さな光の粒を浮かべて輝いている。
その瞳は、溢れそうなほどの愛を湛えたまま俺をまっすぐ見つめていた。
少年の頃とは比べ物にならないくらい深い愛情を湛えた、あったかい瞳。
それが自分だけを見てくれている事が、俺にはまだどこか信じられない。
「……また俺に見惚れてるのか?」
不意に声をかけられて、俺は思わず慌てる。
「わっ……、悪かったなっ!」
反射的に悪態をついた俺に、ルスは小さく笑って言う。
「いいや、お前ほどの男に見惚れられるなんて、光栄だよ」
目が眩むほどに眩しい笑顔。
今、俺の目の前にいるルスは、俺を史上最高に愛してくれている。
「あー……、やっぱ、全部俺の夢なんじゃねぇかなぁ……。もしかして俺、あの東の森でもう死んでたりすんじゃねぇの……?」
「おいおい、急に物騒な事を言うな」
俺は、力の入らない手で自分の頬をつねる。
「……なんか、幸せすぎて、痛いかどうかよく分かんねーや」
へら……と力なく笑うと、ルスがどこか苦しそうに息を詰めた。
「……っ、お前は……どうしてそう……」
眉を寄せて俺を見ていたルスが、ハッと何か思い付いたような顔になって俺に言う。
「体を起こしてみろ」
言われて、起こそうとするもあちこちが痛い。
足の付け根も、尻も、腹も、胸まで痛いし、足にも腕にも疲労が溜まっているのか力を入れようとすればプルプルと震える。
「いっ……てぇな、マジで……」
俺の声を聞いたルスが、苦笑しながら俺の背を支えて壁側に枕を立てるとそこへと俺を座らせる。
食事をとらせるつもりなんだろう。
確かに腹は減っていたし、喉もカラカラだった。
「どうだ。夢なんかじゃないだろう?」
どこか不服そうに言われて、俺も苦笑する。
「ん。ありがとうな……」
そりゃそうか。これが夢だったんじゃ、ルスの気持ちまでなかったことにするようなもんだよな。
「レイ、お前が不安に思う時は、今のようにその不安を俺に聞かせてくれ」
ルスは俺をじっと見つめて言う。
「そうすれば、俺が必ずお前の不安を取り除くと誓おう」
誓いを込めた、ルスの真剣な眼差し。
「……ルスさ、俺にホイホイ誓い過ぎじゃねーの?」
俺がドキドキの心臓を堪えながら何とかそれだけ口に出すと、ルスは真剣な眼差しのまま言った。
「俺は、お前になら未来を誓ってもいい」
ぎゅう。と痛いほどに心臓に力が入る。
まさか、そんな言葉が返ってくるなんて、思っていなかった……。
「――……そ……、それっ、て……」
俺の声は、情けないほど上擦っていた。
期待と不安がどうしようもなく混ざり合う。
ルスはベッドの傍に片足で器用に膝を付くと、俺の手を恭しく下からすくうように取る。
「レインズ……。お前さえ良ければ、この先の人生を俺とともに過ごしてくれないか?」
ルスの声がとんでもなく真剣で、優しくて、耳が熱くなる。
「お、俺……っ」
言葉が詰まって、うまく出てこない。
「……俺で、本当に……、いい、のか……?」
ルスの言葉が、ルスの気持ちが嬉しくて、胸が痛すぎて涙が出そうだ。
「ああ、お前がいい」
「――っ、俺も! 俺もルスとずっと一緒に居たいっ」
思わず必死で答えれば、ルスは柔らかく微笑んで俺に誓った。
「ではここに誓おう。俺は一生をお前と共にあると」
「俺も誓う! ルスのそばにいる。ずっとずっと、死ぬまでルスを離さない」
「「騎士の名にかけて」」
俺達の声が重なれば、ルスは嬉しそうに微笑んだ。
ああ……、幸せそうな顔してんなぁ……。
ルスを見つめる俺もきっと今、世界で一番幸せな顔してんだろうなぁ。
胸がじんわりと温かくて、ポカポカして、幸せ過ぎてちょっと苦しい。
幸せそうに俺を見つめるルスがどうにもたまらなくて、俺は小さく震える指を伸ばす。
ルスは立ち上がると、俺から一瞬も目を離さないまま片足でベッドに上がり、その手で俺の頬を包む。
ああ、やっぱルスの手は、あったかいな……。
ルスは黒い瞳を僅かに潤ませて、この世で一番大切だと言わんばかりに、俺にそうっと唇を重ねた。
初めての誓いのキスはとびきり優しくて、ほんのりスミレの香りがした。
目を開いたら、視界の端にルスの背中があった。
部屋の中はもうすっかり明るくて、昼よりはもうちょい後だなとカーテンの開かれた窓の外を眺めて思う。
「レイ、目が覚めたか」
俺の寝ていたベッドに腰掛けて本を読んでいたらしいルスが、パタンと本を閉じて振り返る。
起き上がろうとして腹筋に力が入った途端、腹を中心にそこら中が痛んだ。
「いっ…………てぇ……」
腕で体を支えようとするも、腕までもが震えている。
「おはよう。身体は大丈夫か?」
心配そうに覗き込むルスに、俺は叫んだ。
「っっっ、大丈夫なわけあるかっっ!!」
声までもが、酷く枯れている。
「やはりそうか……。明日まで休暇を取った方が良さそうだな。三番隊の明日の予定はどうなっている?」
真剣な顔でルスは俺の休暇取得に向けて確認してくれているが、俺をこんな状態にしたのは、お前だからな……?
俺は恨みがましい目でルスを見上げる。
「そんな顔をしてくれるな。すまない。ちょっとタガが外れてしまったようだ。以後このような事のないよう、十分留意する。どうか許してくれ」
ルスは俺の視線を受け止めて、申し訳なさそうに謝る。
真摯に謝罪されて、俺はじわりと視線を逸らした。
そんな風に言われたら、文句だって言えないじゃないか。
「ぜ……絶対だかんな……?」
拗ねるような自分の声が何だか恥ずかしくて頬が熱くなる。
「ああ、誓おう。これからはお前を抱き潰したりしない。大切に……大切に抱くと……」
うっ……。いや……。別に乱暴されたわけじゃねーけどさ……。
うん。……ちゃんと、大切にはされてたよ。
ただ、お前……絶倫過ぎんだろ……。
昨日のあれこれが一気に甦って俺の頭が茹で上がる。
カーッと熱くなる顔を隠すようにして手首を目の上に重ねる。
「熱があるのか……?」
ルスが俺の額に触れて、首を傾げる。
そんなん熱いに決まってんだろ。今真っ赤なんだからさ!
「ちょっといいか?」
尋ねながら、ルスは俺の腕をそっと退けると額を合わせてきた。
ルスの顔が超近い。ルスの静かな息が顔に当たる。
ルスの体内の匂いに、俺はどうにもたまらなくなった。
「確かに少し熱いようだな……」
黒い小さな瞳が、心配そうに俺を見つめながら遠ざかる。
それが酷く寂しくて、俺は必死で手を伸ばして引き寄せた。
唇を重ねても、ルスは俺の中に入ろうとはしない。
昨夜はあんなに求めてくれたのに……。
俺は何だか悲しくなって、舌先でルスの唇に縋った。
ルスは唇をそっと離すと、困った顔で言った。
「そんな風にされると、また抱きたくなってしまうだろう?」
「お……お前……、どんだけだよ……」
俺は一瞬引き攣った顔になってしまったが、それでもやっぱり求められる事は嬉しかった。
じわりと緩んでしまった頬で苦笑して返せば、ルスは目を細めて俺を愛しげに見て額に優しく唇を寄せた。
「昼食を作ってある。ここで食べるなら運んでこようか?」
そう言ってルスは立ち上がる。
「ん、頼む」
そっか。ルス、俺のために料理作っててくれたのか……。
ルスが運んできたトレイの端には、真新しいスミレの花が一輪添えられていた。
たおやかな曲線を持ちながらも凛とした佇まいの、小さな紫色の花。
わざわざ朝から外に出て摘んできたんだろうか。
……俺のために……?
スミレの花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」だ。
そのどれもが、ルスにぴったりだと思う。
ルスの摘んできてくれた紫色のスミレには「愛」という花言葉もある。
おそらくおばさんはそれを指して、ルスにこの花を差し出すよう告げたんだろう。
この街のあちこちで、紫色のスミレは毎年咲き誇るから。
俺達が暮らすこの場所で、俺達がずっと愛を見失わないように……。
俺は、ルスが捧げてくれた愛の花を見つめる。
まだ春と呼ぶには肌寒い中で、この花は俺達のために、少し早めに咲いてくれたんだろうか。
俺の体はすっかり綺麗にされていたし、ベッド周りも整えられている。
俺はルスの愛にすっかり心満たされて、幸せな気持ちで口を開く。
「それってさ、ルスが食べさせてくれんの?」
へらっと笑って尋ねれば、ルスは真面目そうな眉を片側だけひょいと上げて答えた。
「俺は口移しでも構わないぞ? お前がその後どうなっても良いならな?」
「なっ……!!??」
カアッと顔を赤くする俺を、ルスは楽しそうに眺めて言った。
「冗談だ」
うっっ。そんな脅しめいた冗談でそんな爽やかに笑う奴があるかっっっ。
そう思いながらも、俺の瞳はルスの笑顔からほんの少しも逸らせない。
ルスはそんな俺に気付いてか、黒い瞳に愛を滲ませた。
あの頃の、少年だったルスの温かい眼差し。
俺はそれに惹かれて、それに焦がれて、ルスの背中をずっと追いかけてきた。
あの娘に注がれる眼差しに、もうずっとルスは俺の物にはならないんだと思って。
背を見てるだけでも十分だと、思い込もうとしてた。
……なのに、ルスは俺を振り返ってくれた。
温かな陽射しが差し込む室内で、ルスの小さな黒い瞳が小さな光の粒を浮かべて輝いている。
その瞳は、溢れそうなほどの愛を湛えたまま俺をまっすぐ見つめていた。
少年の頃とは比べ物にならないくらい深い愛情を湛えた、あったかい瞳。
それが自分だけを見てくれている事が、俺にはまだどこか信じられない。
「……また俺に見惚れてるのか?」
不意に声をかけられて、俺は思わず慌てる。
「わっ……、悪かったなっ!」
反射的に悪態をついた俺に、ルスは小さく笑って言う。
「いいや、お前ほどの男に見惚れられるなんて、光栄だよ」
目が眩むほどに眩しい笑顔。
今、俺の目の前にいるルスは、俺を史上最高に愛してくれている。
「あー……、やっぱ、全部俺の夢なんじゃねぇかなぁ……。もしかして俺、あの東の森でもう死んでたりすんじゃねぇの……?」
「おいおい、急に物騒な事を言うな」
俺は、力の入らない手で自分の頬をつねる。
「……なんか、幸せすぎて、痛いかどうかよく分かんねーや」
へら……と力なく笑うと、ルスがどこか苦しそうに息を詰めた。
「……っ、お前は……どうしてそう……」
眉を寄せて俺を見ていたルスが、ハッと何か思い付いたような顔になって俺に言う。
「体を起こしてみろ」
言われて、起こそうとするもあちこちが痛い。
足の付け根も、尻も、腹も、胸まで痛いし、足にも腕にも疲労が溜まっているのか力を入れようとすればプルプルと震える。
「いっ……てぇな、マジで……」
俺の声を聞いたルスが、苦笑しながら俺の背を支えて壁側に枕を立てるとそこへと俺を座らせる。
食事をとらせるつもりなんだろう。
確かに腹は減っていたし、喉もカラカラだった。
「どうだ。夢なんかじゃないだろう?」
どこか不服そうに言われて、俺も苦笑する。
「ん。ありがとうな……」
そりゃそうか。これが夢だったんじゃ、ルスの気持ちまでなかったことにするようなもんだよな。
「レイ、お前が不安に思う時は、今のようにその不安を俺に聞かせてくれ」
ルスは俺をじっと見つめて言う。
「そうすれば、俺が必ずお前の不安を取り除くと誓おう」
誓いを込めた、ルスの真剣な眼差し。
「……ルスさ、俺にホイホイ誓い過ぎじゃねーの?」
俺がドキドキの心臓を堪えながら何とかそれだけ口に出すと、ルスは真剣な眼差しのまま言った。
「俺は、お前になら未来を誓ってもいい」
ぎゅう。と痛いほどに心臓に力が入る。
まさか、そんな言葉が返ってくるなんて、思っていなかった……。
「――……そ……、それっ、て……」
俺の声は、情けないほど上擦っていた。
期待と不安がどうしようもなく混ざり合う。
ルスはベッドの傍に片足で器用に膝を付くと、俺の手を恭しく下からすくうように取る。
「レインズ……。お前さえ良ければ、この先の人生を俺とともに過ごしてくれないか?」
ルスの声がとんでもなく真剣で、優しくて、耳が熱くなる。
「お、俺……っ」
言葉が詰まって、うまく出てこない。
「……俺で、本当に……、いい、のか……?」
ルスの言葉が、ルスの気持ちが嬉しくて、胸が痛すぎて涙が出そうだ。
「ああ、お前がいい」
「――っ、俺も! 俺もルスとずっと一緒に居たいっ」
思わず必死で答えれば、ルスは柔らかく微笑んで俺に誓った。
「ではここに誓おう。俺は一生をお前と共にあると」
「俺も誓う! ルスのそばにいる。ずっとずっと、死ぬまでルスを離さない」
「「騎士の名にかけて」」
俺達の声が重なれば、ルスは嬉しそうに微笑んだ。
ああ……、幸せそうな顔してんなぁ……。
ルスを見つめる俺もきっと今、世界で一番幸せな顔してんだろうなぁ。
胸がじんわりと温かくて、ポカポカして、幸せ過ぎてちょっと苦しい。
幸せそうに俺を見つめるルスがどうにもたまらなくて、俺は小さく震える指を伸ばす。
ルスは立ち上がると、俺から一瞬も目を離さないまま片足でベッドに上がり、その手で俺の頬を包む。
ああ、やっぱルスの手は、あったかいな……。
ルスは黒い瞳を僅かに潤ませて、この世で一番大切だと言わんばかりに、俺にそうっと唇を重ねた。
初めての誓いのキスはとびきり優しくて、ほんのりスミレの香りがした。
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