💘Purple Violet⚜️💐 堅物実直なノンケ親友への想いを、27年越しに伝えてテンパるゆるふわ一途イケメンのお話

良音 夜代琴

文字の大きさ
65 / 97
番外編

拉致監禁される中隊長達のお話(3/14)『首絞』(ルストック視点)

しおりを挟む
「ぅ、くぅ、ルス……、どう、し、……んんっ」
涙の滲むような声。
薄暗い部屋の中で、レイの寝かされたベッドの上にだけ明かりが灯されていた。
それでも暗い色の目隠しの下で、レイが涙を溢しているのかどうかまでは見分けられない。
イムノスはレイの言葉の続きを聞こうと思ったのか、レイの中を掻き回していた指を止めた。

「は、ぁ……っ、何か……あった、のか……?」
苦しげな息の向こうから、途切れ途切れの気遣うような声。

今まさに『何か』をされているのはお前だろう。
それなのに、俺らしくない俺の様子に、お前は俺を心配するのか……。
イムノスの眉が醜く歪んでゆく。

イムノスはレイに俺を嫌わせたいんだろうか。
そんな事は、何をしたって無理じゃないか?
そんな風に感じてから、思わず自嘲する。
いつの間にか、俺は随分とレイに愛されている自信があるようだ。

「こんな、の、ルスらしく、ねぇよ……。俺……、俺で、良かったら、何でも……するから……。話して、くれよ……」
震える声で、それでも優しく慰めるような声色で、レイは囁く。

助けが必要なのはお前だろうに。
怖い思いも、痛い思いも飲み込んで。
両腕と視界の自由を奪われたままで強引に犯されておきながら、お前はよくそんな健気な事が言えるな。

レイを愛しく思う気持ちがイムノスへの殺意に変わりそうで、俺は頭をなるべく冷静に保つべく、深呼吸をする。
殴らずに許す気は毛頭無いが、騎士団内で殺人はまずい。

……半殺しくらいにしておかなくてはな。


「……何でも?」

聞き返されて、レイがびくりと肩を揺らす。
俺の声でもやはり今の響きには恐怖を感じたのだろう。
直接問わていない俺ですら、肌が粟立つような危うさを感じた。

しん、とほんの一瞬の沈黙が部屋を包む。
その沈黙を、レイが震える声を絞り出すようにして必死で破る。

「ル……ルスが、したい……なら……」

おい!
健気なところはお前の美点だが、そこは頷くところじゃないだろう。
そろそろ気付いてくれ。
お前に触れているのが、俺ではない事に。

「……っ」
イムノスが、その表情に動揺を滲ませて言葉に詰まる。

隊で長くレイを支えてきた男でも、こんなレイを見たのは初めてだったのだろう。
レイは人に意見を求める事はあれど、決断は隊長として自分で下す男だからな。
レイがその全権を委ねてきたことに驚いたのだろうが、イムノス、それはお前に許したんじゃない、勘違いするなよ。

レイが全てを許す相手は、俺だけだ。


イムノスは苦しげな表情でレイに入れたままだった指をその内で乱暴に開くと、一気に引き抜く。
「ぅああっ! んんっ! ……は、ぁ……」
苦悶の声をあげたレイが肩で息をする。

頼むからレイに手荒な事はしないでやってくれ。
レイは俺に血を見せられたところで俺を嫌いはしない。

それはもう、俺がレイを抱き潰してしまった頃にはハッキリしている。

イムノスはレイの両腕を拘束していた鎖の端を解いた。
レイは手首から長い鎖を下げたままではあったが、両腕が自由になる。
今ならイムノスに一撃入れる事もできるだろうが、レイはまだあの男を俺だと思っていた。

レイの腕が、俺を求めるようにイムノスへと伸ばされる。

レイ!! 目隠しを解け!!

全力で叫んでも、俺の声はやはり音にならない。

イムノスは健気に伸ばされた指先に触れる事なく、レイの腰をぐいと持ち上げると、そそり立つ自身を手に取る。

くそ!!
状況的に覚悟はあったが、それでも俺の男が他の奴に犯されるなど、許しがたい。
レイだって俺以外に許す気などないはずだ。
それを知ったレイの絶望を思うと、俺は激しい焦燥と怒りで血が煮え滾る。

ひた。とイムノスのそれを入り口に当てられて、レイが肩を揺らす。
「待っ、俺、まだ……――っっっ!! っぅっっ!!!」
必死の訴えにも耳を貸さずに、イムノスはその内へと侵入した。
レイが、痛みと圧迫感に体を縮めて震える。
応えてもらえなかったレイの両腕が、苦しみを覆うように自身の顔を隠す。

泣いているのだろうか。
そう思うと、すぐにでもその涙を拭って抱き締めたくてたまらない衝動が俺を埋め尽くす。

「っ、ぅ、んっっ、く、うぅ……っ」
無遠慮に何度も奥まで突かれる度、嗚咽のような声が漏れる。
もっと優しくしてやれば、レイはもっとずっと可愛らしい声で啼くというのに。

ガツガツと骨の当たる音が聞こえる。
痛々しい様に、けれど目を背けることはできなかった。
しんと静まり返った部屋に、レイの苦悶の声と、鈍い音だけが続いた。

せめて、俺が許すことがレイの救いになれば良いんだが。
俺に、……それをできる自信がない。

繰り返される抽送に、ようやくその内が解けてきたらしいレイの声が、少しずつ甘く滲んでゆく。
ホッとする思いと、それを許しきれない感情が胸の内で混ざり合う。

俺はどうしてこんなに未熟なのか。
人としても、騎士としても……。

「あっ、ん……っ、……あ、ぁあ……んんんっ」
ガクガクと揺さぶられるレイの荒い息にも、熱が篭ってくるのが分かる。
「ル、ス……」
愛しげに俺を呼ぶ声。
それに応えたいと渇望する思いが胸を焼く。

その愛に炙られたのは、俺だけではなかったらしい。
イムノスは一層表情を歪めて、レイの首筋に指を回した。

やめろ!!!

俺の叫びは音にならないまま、血の気を失ったようなイムノスの青白い指先にじわりと力が込められる。

「ぅ、ぁ……く…………っっっ」
息を絞られて、レイは苦しげに腕を伸ばした。
イムノスの腕を掴もうと上げられたレイの手が、けれど抵抗を諦めるように下ろされる。

おい! もっと真面目に抵抗しろ!!

「ルス……っ、くる、し……」
掠れた途切れ途切れの声が、控えめに訴える。

イムノスは、そんなレイを愕然と見下ろしていた。

「何故……手を……」
その言葉に、イムノスがレイの両腕の拘束を解いた理由を知る。
この男は、レイに抵抗してほしかったのか。

「……このまま殺されても、いいのか?」
静かに尋ねられて、レイが小さく震えた。
イムノスは言葉を聞くためにか、ほんの少し手を緩めてレイに息を継がせる。
空を切るような音を立てて、レイが息を吸う。
それでもまだレイは生命の危機を感じているはずだ。
力が込められたままの手は、レイの首から微塵も離れる気配はない。

「ルスの、手、……冷たいの……、なんか、おかしい、な……」

ぽつりと零された言葉に、イムノスだけが動揺する。
レイは目隠しの下から俺を窺うようにして、言葉を続ける。

「俺、なんか……。そんな、に、……ルスを、怒らせるような事、した、のか……?」

どれだけ涙を溢したのか、目隠しが吸いきれなかった涙の雫が、レイの頬を伝って落ちる。

「……」
答えきれないイムノスの沈黙を肯定と受け取ったのか、レイは狭められた気道からヒュウと音を立てて小さく息を吸う。

「……ルスが、俺を殺して、本当に気が晴れんなら、俺は……死んでもいいよ……」

「なっ……」
俺の心の声は、同じようにイムノスの口から漏れた。

「……でも、ルスなら絶対、後悔すんだろ? 俺、ルスにこれ以上、後悔してほしくないから、さ……」
苦しげに、必死で息を継ぎながら、それでもその肺の酸素を全て使って、俺を宥めようとしているレインズ。

そこまで俺に尽くさなくていい。
お前はまず、自分の身の安全を確保してくれ。
俺の願いは届かないまま、レイは鎖をぶら下げたままの腕をイムノスへと伸ばした。

「だから……、ルス、顔を見せてくれよ……」
レイの延ばした指先が、イムノスの長い髪に触れる。
イムノスが避けなかったのか、避けられなかったのかは分からないが、紺色の髪がさらりと揺れて、レイの体に緊張が走った事はここからでも分かった。

慌てて目隠しを外そうとするレイの両腕を、イムノスは素早く二本まとめて括り上げる。
それでも少しズレた目隠しの隙間から、レイは自分と繋がる男の姿を見た。

「イム……ノス……?」

その言葉は、どうしようもなく震えていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【完結】言えない言葉

未希かずは(Miki)
BL
 双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。  同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。  ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。  兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。  すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。 第1回青春BLカップ参加作品です。 1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。 2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

後宮に咲く美しき寵后

不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。 フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。 そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。 縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。 ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。 情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。 狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。 縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。

処理中です...