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番外編
拉致監禁される中隊長達のお話(3/14)『首絞』(ルストック視点)
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「ぅ、くぅ、ルス……、どう、し、……んんっ」
涙の滲むような声。
薄暗い部屋の中で、レイの寝かされたベッドの上にだけ明かりが灯されていた。
それでも暗い色の目隠しの下で、レイが涙を溢しているのかどうかまでは見分けられない。
イムノスはレイの言葉の続きを聞こうと思ったのか、レイの中を掻き回していた指を止めた。
「は、ぁ……っ、何か……あった、のか……?」
苦しげな息の向こうから、途切れ途切れの気遣うような声。
今まさに『何か』をされているのはお前だろう。
それなのに、俺らしくない俺の様子に、お前は俺を心配するのか……。
イムノスの眉が醜く歪んでゆく。
イムノスはレイに俺を嫌わせたいんだろうか。
そんな事は、何をしたって無理じゃないか?
そんな風に感じてから、思わず自嘲する。
いつの間にか、俺は随分とレイに愛されている自信があるようだ。
「こんな、の、ルスらしく、ねぇよ……。俺……、俺で、良かったら、何でも……するから……。話して、くれよ……」
震える声で、それでも優しく慰めるような声色で、レイは囁く。
助けが必要なのはお前だろうに。
怖い思いも、痛い思いも飲み込んで。
両腕と視界の自由を奪われたままで強引に犯されておきながら、お前はよくそんな健気な事が言えるな。
レイを愛しく思う気持ちがイムノスへの殺意に変わりそうで、俺は頭をなるべく冷静に保つべく、深呼吸をする。
殴らずに許す気は毛頭無いが、騎士団内で殺人はまずい。
……半殺しくらいにしておかなくてはな。
「……何でも?」
聞き返されて、レイがびくりと肩を揺らす。
俺の声でもやはり今の響きには恐怖を感じたのだろう。
直接問わていない俺ですら、肌が粟立つような危うさを感じた。
しん、とほんの一瞬の沈黙が部屋を包む。
その沈黙を、レイが震える声を絞り出すようにして必死で破る。
「ル……ルスが、したい……なら……」
おい!
健気なところはお前の美点だが、そこは頷くところじゃないだろう。
そろそろ気付いてくれ。
お前に触れているのが、俺ではない事に。
「……っ」
イムノスが、その表情に動揺を滲ませて言葉に詰まる。
隊で長くレイを支えてきた男でも、こんなレイを見たのは初めてだったのだろう。
レイは人に意見を求める事はあれど、決断は隊長として自分で下す男だからな。
レイがその全権を委ねてきたことに驚いたのだろうが、イムノス、それはお前に許したんじゃない、勘違いするなよ。
レイが全てを許す相手は、俺だけだ。
イムノスは苦しげな表情でレイに入れたままだった指をその内で乱暴に開くと、一気に引き抜く。
「ぅああっ! んんっ! ……は、ぁ……」
苦悶の声をあげたレイが肩で息をする。
頼むからレイに手荒な事はしないでやってくれ。
レイは俺に血を見せられたところで俺を嫌いはしない。
それはもう、俺がレイを抱き潰してしまった頃にはハッキリしている。
イムノスはレイの両腕を拘束していた鎖の端を解いた。
レイは手首から長い鎖を下げたままではあったが、両腕が自由になる。
今ならイムノスに一撃入れる事もできるだろうが、レイはまだあの男を俺だと思っていた。
レイの腕が、俺を求めるようにイムノスへと伸ばされる。
レイ!! 目隠しを解け!!
全力で叫んでも、俺の声はやはり音にならない。
イムノスは健気に伸ばされた指先に触れる事なく、レイの腰をぐいと持ち上げると、そそり立つ自身を手に取る。
くそ!!
状況的に覚悟はあったが、それでも俺の男が他の奴に犯されるなど、許しがたい。
レイだって俺以外に許す気などないはずだ。
それを知ったレイの絶望を思うと、俺は激しい焦燥と怒りで血が煮え滾る。
ひた。とイムノスのそれを入り口に当てられて、レイが肩を揺らす。
「待っ、俺、まだ……――っっっ!! っぅっっ!!!」
必死の訴えにも耳を貸さずに、イムノスはその内へと侵入した。
レイが、痛みと圧迫感に体を縮めて震える。
応えてもらえなかったレイの両腕が、苦しみを覆うように自身の顔を隠す。
泣いているのだろうか。
そう思うと、すぐにでもその涙を拭って抱き締めたくてたまらない衝動が俺を埋め尽くす。
「っ、ぅ、んっっ、く、うぅ……っ」
無遠慮に何度も奥まで突かれる度、嗚咽のような声が漏れる。
もっと優しくしてやれば、レイはもっとずっと可愛らしい声で啼くというのに。
ガツガツと骨の当たる音が聞こえる。
痛々しい様に、けれど目を背けることはできなかった。
しんと静まり返った部屋に、レイの苦悶の声と、鈍い音だけが続いた。
せめて、俺が許すことがレイの救いになれば良いんだが。
俺に、……それをできる自信がない。
繰り返される抽送に、ようやくその内が解けてきたらしいレイの声が、少しずつ甘く滲んでゆく。
ホッとする思いと、それを許しきれない感情が胸の内で混ざり合う。
俺はどうしてこんなに未熟なのか。
人としても、騎士としても……。
「あっ、ん……っ、……あ、ぁあ……んんんっ」
ガクガクと揺さぶられるレイの荒い息にも、熱が篭ってくるのが分かる。
「ル、ス……」
愛しげに俺を呼ぶ声。
それに応えたいと渇望する思いが胸を焼く。
その愛に炙られたのは、俺だけではなかったらしい。
イムノスは一層表情を歪めて、レイの首筋に指を回した。
やめろ!!!
俺の叫びは音にならないまま、血の気を失ったようなイムノスの青白い指先にじわりと力が込められる。
「ぅ、ぁ……く…………っっっ」
息を絞られて、レイは苦しげに腕を伸ばした。
イムノスの腕を掴もうと上げられたレイの手が、けれど抵抗を諦めるように下ろされる。
おい! もっと真面目に抵抗しろ!!
「ルス……っ、くる、し……」
掠れた途切れ途切れの声が、控えめに訴える。
イムノスは、そんなレイを愕然と見下ろしていた。
「何故……手を……」
その言葉に、イムノスがレイの両腕の拘束を解いた理由を知る。
この男は、レイに抵抗してほしかったのか。
「……このまま殺されても、いいのか?」
静かに尋ねられて、レイが小さく震えた。
イムノスは言葉を聞くためにか、ほんの少し手を緩めてレイに息を継がせる。
空を切るような音を立てて、レイが息を吸う。
それでもまだレイは生命の危機を感じているはずだ。
力が込められたままの手は、レイの首から微塵も離れる気配はない。
「ルスの、手、……冷たいの……、なんか、おかしい、な……」
ぽつりと零された言葉に、イムノスだけが動揺する。
レイは目隠しの下から俺を窺うようにして、言葉を続ける。
「俺、なんか……。そんな、に、……ルスを、怒らせるような事、した、のか……?」
どれだけ涙を溢したのか、目隠しが吸いきれなかった涙の雫が、レイの頬を伝って落ちる。
「……」
答えきれないイムノスの沈黙を肯定と受け取ったのか、レイは狭められた気道からヒュウと音を立てて小さく息を吸う。
「……ルスが、俺を殺して、本当に気が晴れんなら、俺は……死んでもいいよ……」
「なっ……」
俺の心の声は、同じようにイムノスの口から漏れた。
「……でも、ルスなら絶対、後悔すんだろ? 俺、ルスにこれ以上、後悔してほしくないから、さ……」
苦しげに、必死で息を継ぎながら、それでもその肺の酸素を全て使って、俺を宥めようとしているレインズ。
そこまで俺に尽くさなくていい。
お前はまず、自分の身の安全を確保してくれ。
俺の願いは届かないまま、レイは鎖をぶら下げたままの腕をイムノスへと伸ばした。
「だから……、ルス、顔を見せてくれよ……」
レイの延ばした指先が、イムノスの長い髪に触れる。
イムノスが避けなかったのか、避けられなかったのかは分からないが、紺色の髪がさらりと揺れて、レイの体に緊張が走った事はここからでも分かった。
慌てて目隠しを外そうとするレイの両腕を、イムノスは素早く二本まとめて括り上げる。
それでも少しズレた目隠しの隙間から、レイは自分と繋がる男の姿を見た。
「イム……ノス……?」
その言葉は、どうしようもなく震えていた。
涙の滲むような声。
薄暗い部屋の中で、レイの寝かされたベッドの上にだけ明かりが灯されていた。
それでも暗い色の目隠しの下で、レイが涙を溢しているのかどうかまでは見分けられない。
イムノスはレイの言葉の続きを聞こうと思ったのか、レイの中を掻き回していた指を止めた。
「は、ぁ……っ、何か……あった、のか……?」
苦しげな息の向こうから、途切れ途切れの気遣うような声。
今まさに『何か』をされているのはお前だろう。
それなのに、俺らしくない俺の様子に、お前は俺を心配するのか……。
イムノスの眉が醜く歪んでゆく。
イムノスはレイに俺を嫌わせたいんだろうか。
そんな事は、何をしたって無理じゃないか?
そんな風に感じてから、思わず自嘲する。
いつの間にか、俺は随分とレイに愛されている自信があるようだ。
「こんな、の、ルスらしく、ねぇよ……。俺……、俺で、良かったら、何でも……するから……。話して、くれよ……」
震える声で、それでも優しく慰めるような声色で、レイは囁く。
助けが必要なのはお前だろうに。
怖い思いも、痛い思いも飲み込んで。
両腕と視界の自由を奪われたままで強引に犯されておきながら、お前はよくそんな健気な事が言えるな。
レイを愛しく思う気持ちがイムノスへの殺意に変わりそうで、俺は頭をなるべく冷静に保つべく、深呼吸をする。
殴らずに許す気は毛頭無いが、騎士団内で殺人はまずい。
……半殺しくらいにしておかなくてはな。
「……何でも?」
聞き返されて、レイがびくりと肩を揺らす。
俺の声でもやはり今の響きには恐怖を感じたのだろう。
直接問わていない俺ですら、肌が粟立つような危うさを感じた。
しん、とほんの一瞬の沈黙が部屋を包む。
その沈黙を、レイが震える声を絞り出すようにして必死で破る。
「ル……ルスが、したい……なら……」
おい!
健気なところはお前の美点だが、そこは頷くところじゃないだろう。
そろそろ気付いてくれ。
お前に触れているのが、俺ではない事に。
「……っ」
イムノスが、その表情に動揺を滲ませて言葉に詰まる。
隊で長くレイを支えてきた男でも、こんなレイを見たのは初めてだったのだろう。
レイは人に意見を求める事はあれど、決断は隊長として自分で下す男だからな。
レイがその全権を委ねてきたことに驚いたのだろうが、イムノス、それはお前に許したんじゃない、勘違いするなよ。
レイが全てを許す相手は、俺だけだ。
イムノスは苦しげな表情でレイに入れたままだった指をその内で乱暴に開くと、一気に引き抜く。
「ぅああっ! んんっ! ……は、ぁ……」
苦悶の声をあげたレイが肩で息をする。
頼むからレイに手荒な事はしないでやってくれ。
レイは俺に血を見せられたところで俺を嫌いはしない。
それはもう、俺がレイを抱き潰してしまった頃にはハッキリしている。
イムノスはレイの両腕を拘束していた鎖の端を解いた。
レイは手首から長い鎖を下げたままではあったが、両腕が自由になる。
今ならイムノスに一撃入れる事もできるだろうが、レイはまだあの男を俺だと思っていた。
レイの腕が、俺を求めるようにイムノスへと伸ばされる。
レイ!! 目隠しを解け!!
全力で叫んでも、俺の声はやはり音にならない。
イムノスは健気に伸ばされた指先に触れる事なく、レイの腰をぐいと持ち上げると、そそり立つ自身を手に取る。
くそ!!
状況的に覚悟はあったが、それでも俺の男が他の奴に犯されるなど、許しがたい。
レイだって俺以外に許す気などないはずだ。
それを知ったレイの絶望を思うと、俺は激しい焦燥と怒りで血が煮え滾る。
ひた。とイムノスのそれを入り口に当てられて、レイが肩を揺らす。
「待っ、俺、まだ……――っっっ!! っぅっっ!!!」
必死の訴えにも耳を貸さずに、イムノスはその内へと侵入した。
レイが、痛みと圧迫感に体を縮めて震える。
応えてもらえなかったレイの両腕が、苦しみを覆うように自身の顔を隠す。
泣いているのだろうか。
そう思うと、すぐにでもその涙を拭って抱き締めたくてたまらない衝動が俺を埋め尽くす。
「っ、ぅ、んっっ、く、うぅ……っ」
無遠慮に何度も奥まで突かれる度、嗚咽のような声が漏れる。
もっと優しくしてやれば、レイはもっとずっと可愛らしい声で啼くというのに。
ガツガツと骨の当たる音が聞こえる。
痛々しい様に、けれど目を背けることはできなかった。
しんと静まり返った部屋に、レイの苦悶の声と、鈍い音だけが続いた。
せめて、俺が許すことがレイの救いになれば良いんだが。
俺に、……それをできる自信がない。
繰り返される抽送に、ようやくその内が解けてきたらしいレイの声が、少しずつ甘く滲んでゆく。
ホッとする思いと、それを許しきれない感情が胸の内で混ざり合う。
俺はどうしてこんなに未熟なのか。
人としても、騎士としても……。
「あっ、ん……っ、……あ、ぁあ……んんんっ」
ガクガクと揺さぶられるレイの荒い息にも、熱が篭ってくるのが分かる。
「ル、ス……」
愛しげに俺を呼ぶ声。
それに応えたいと渇望する思いが胸を焼く。
その愛に炙られたのは、俺だけではなかったらしい。
イムノスは一層表情を歪めて、レイの首筋に指を回した。
やめろ!!!
俺の叫びは音にならないまま、血の気を失ったようなイムノスの青白い指先にじわりと力が込められる。
「ぅ、ぁ……く…………っっっ」
息を絞られて、レイは苦しげに腕を伸ばした。
イムノスの腕を掴もうと上げられたレイの手が、けれど抵抗を諦めるように下ろされる。
おい! もっと真面目に抵抗しろ!!
「ルス……っ、くる、し……」
掠れた途切れ途切れの声が、控えめに訴える。
イムノスは、そんなレイを愕然と見下ろしていた。
「何故……手を……」
その言葉に、イムノスがレイの両腕の拘束を解いた理由を知る。
この男は、レイに抵抗してほしかったのか。
「……このまま殺されても、いいのか?」
静かに尋ねられて、レイが小さく震えた。
イムノスは言葉を聞くためにか、ほんの少し手を緩めてレイに息を継がせる。
空を切るような音を立てて、レイが息を吸う。
それでもまだレイは生命の危機を感じているはずだ。
力が込められたままの手は、レイの首から微塵も離れる気配はない。
「ルスの、手、……冷たいの……、なんか、おかしい、な……」
ぽつりと零された言葉に、イムノスだけが動揺する。
レイは目隠しの下から俺を窺うようにして、言葉を続ける。
「俺、なんか……。そんな、に、……ルスを、怒らせるような事、した、のか……?」
どれだけ涙を溢したのか、目隠しが吸いきれなかった涙の雫が、レイの頬を伝って落ちる。
「……」
答えきれないイムノスの沈黙を肯定と受け取ったのか、レイは狭められた気道からヒュウと音を立てて小さく息を吸う。
「……ルスが、俺を殺して、本当に気が晴れんなら、俺は……死んでもいいよ……」
「なっ……」
俺の心の声は、同じようにイムノスの口から漏れた。
「……でも、ルスなら絶対、後悔すんだろ? 俺、ルスにこれ以上、後悔してほしくないから、さ……」
苦しげに、必死で息を継ぎながら、それでもその肺の酸素を全て使って、俺を宥めようとしているレインズ。
そこまで俺に尽くさなくていい。
お前はまず、自分の身の安全を確保してくれ。
俺の願いは届かないまま、レイは鎖をぶら下げたままの腕をイムノスへと伸ばした。
「だから……、ルス、顔を見せてくれよ……」
レイの延ばした指先が、イムノスの長い髪に触れる。
イムノスが避けなかったのか、避けられなかったのかは分からないが、紺色の髪がさらりと揺れて、レイの体に緊張が走った事はここからでも分かった。
慌てて目隠しを外そうとするレイの両腕を、イムノスは素早く二本まとめて括り上げる。
それでも少しズレた目隠しの隙間から、レイは自分と繋がる男の姿を見た。
「イム……ノス……?」
その言葉は、どうしようもなく震えていた。
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