教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

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第3章 ハンターの町 ボレアザント編

43 ボレアザントの裏通り①

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「――というわけで、フライヤ様はサンネイシス帝国を救った功績が認められて、Sランクに認定されたというわけさ」

 僕たちはレナールさんから、Sランクハンターであるフライヤさんの偉業の数々を教えてもらった。
 中でもラムセト砂漠に現れた天災級の魔物、クイーンサンドワームを倒した功績が大きかったそうだ。町を二つ壊滅させたその魔物は次の標的をボレアザントに定めたようで、進んできたところを丸二日間の戦いの末、討伐したそうだ。放って置いたらボレアザントは壊滅、帝都にも危険が迫りかねないという状況を一人で覆したらしい。

 その話をルシアが神妙な顔で聞いていた。意外とSランクハンターとかに興味があるのかな?

 そんな話を聞いてるうちに、席を外していたライナスさんが袋を持ってやってきた。

「レナールが盛り上がってる間に素材の報酬を持ってきたぞ。Fランクだから手数料を差し引いて800万ゴルドが入っている。確認してくれ」

 袋の中を見ると白金貨7枚と金貨100枚が入っている。白金貨1枚が100万ゴルド、金貨1枚が1万ゴルドだからピッタリだ。

「間違いありません。ありがとうございました」
「何を言ってる。お礼を言うのはこっちの方だ。貴重な魔石や素材は町づくりや生活の発展に欠かせないものだ。これからも活躍を頼むぞ!」

 ライナスさんと別れた僕たちは今日も宿泊する満福亭に帰ることにした。

「レン、ルシアさん。明日もギルドに来てくれよ。連れて行きたい旨い店があるんだ。明日の夕食は満福亭じゃなくそこに案内させて欲しいんだが」
『レナール。お主の旨い店の案内を断るわけがなかろう。楽しみにしておくぞ』

 ルシアのレナールさんに対するグルメの信頼の厚さが伝わってくるな。

「夕食ということでしたら、ギルド前に17時ぐらいに集合でいいですか?」
「おう! 17時に集合で頼むぜ」

 レナールさんと明日の約束をした僕たちは、満福亭に帰りとっても美味しい夕食をいただいたあと、ルシアから勉強を教えてもらって就寝した。



「ふわ~! 今日もぐっすり眠れたな~!」

 僕たちが泊っている満福亭は料理も美味しいけど、ベッドもフカフカでとても気持ちがいい。

 今日の17時まではお互いに自由行動にしようということで、ルシアとは別行動だ。僕は朝から剣術と魔法の修行をして、満福亭の食事処でお昼を食べて、午後からはボレアザントの街を散策することにした。
 一人で行動するなんて久しぶりだな。新しく訪れた街を一人で歩くなんて、少し大人になった気がするよ。

 満福亭を出たあとボレアザントで一番賑わっているという商店街に来てみた。たくさんの店にたくさんの人! 王都ウェリスビルにも負けないぐらいの賑わいだな。ハンターの町と言われるだけに武器屋や防具屋なども多い。
 僕は色んなお店で商品を見たり、広場の出店で肉の串焼きを買って食べたりして、ボレアザントの町を満喫していた。

 ボレアザントで特徴的だと感じるのは、細い抜け道のような通りが多いことだ。大通りを歩いていれば問題ないけど、細い道に入ると複雑に入り組んでいて迷子になってしまいそうなところがたくさんある。

 そう。今、僕は絶賛迷子中だ。つい、細い道に入るのが面白く感じて、突き進んでいたら迷子になってしまった。まだ集合時間までは大分余裕があるけど、そろそろハンターギルド方面に歩き始めるとするかな。方角は大体分かるから大丈夫だし。
 そうして、僕はハンターギルドの方角に向かって歩き始めた。

「しっかり運べ!! 荷物を載せてしまわないと今日は飯抜きにするぞ!」

 ん? 向こうの通りから男性の怒鳴り声が聞こえるぞ。僕は声の聞こえるところまで近づいて様子を見てみた。
 そこは大きな倉庫のような建物で、中ではたくさんの人が働いているようだ。それにしても働いてるのは子どもばっかりなのかな?
 ここから見える感じだと、色んな種族の獣人の子どもたちが働いている。男の子も女の子も荷物を運んでいるようだ。あんなに重そうな荷物をよく運べるものだな。獣人族は人族より身体能力が高いというのがこれだけでも分かるよ。僕の同級生たちならあんな風に運べないもんね。

「お前、全然働けてないな! 昨日から入った新人だな? しっかり働けないやつは必要ないんだぞ!!」

 えっ? 今、注意された女の子が蹴られて吹っ飛んだよ……

「何やってんだよ、しっかり働けよ。俺たちにもとばっちりがくるだろうが」

 その光景を見ていた男の子が吹き飛ばされて倒れている女の子に文句を言っている。いや、今の感じだと、その女の子の左腕は骨にヒビが入ったか、折れてるかも知れない。

 僕は通りからダッシュして女の子のところに駆け寄った。白い髪に特徴的な耳が生えたウサギの獣人の女の子だ。獣人の年齢は分かりにくいけど10歳ぐらいだろうか。

「誰だよ、あんた」

 さっき女の子に文句を言ってた熊の獣人の男の子だ。

「僕は通りすがりのハンターだ。そこの女の子が怪我をしてるようだから治療をしてあげたい」
「ハンター? 治療? 何言ってんだ、あんた。おかしな冗談は止めろ。さっさと出ていけよ」
「冗談なんかじゃないよ。少しだけ状態を見させてくれないかな」

「おい!! そこのお前は何者だ! 何をしてる!」

 女の子を蹴った狼の獣人の男が向こうから叫んでやってきた。

「僕はハンターです。そこの女の子が怪我をしてるようなので、治療をさせてくれませんか?」
「治療? ふざけんな!! お前は部外者だろうが。ハンターだか知らないが、とっとと失せろ!」

 なんだ? あんたが蹴ったから怪我したんだぞ!? 僕は目の前の男に怒りを感じながらも冷静な態度で話を進めた。
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