教え上手な龍のおかげでとんでもないことになりました

明日真 亮

文字の大きさ
63 / 131
第4章 帝都アウシルバード編

62 盛り上がる酒席

しおりを挟む
「ヴァン様! お待ちしておりました! 随分と到着が早かったですね!」
「当たり前であろう! お主からの連絡のあと、すぐにリーフに仕事を押し付けて飛んできたのだ! 急に仕事を振られてリーフは泣きそうになっておったがな。ガハハハハッ!」

 フライヤがヴァン様に連絡したのか。それで急いで来られたわけね。なるほど。

『相変わらず騒がしいなヴァンよ。まったく酒のことになると人が変わるな』
「ルシア殿! これは仕方ないのです! 珍しい酒は飲めるときに飲んでおかなければ後悔しますからな! フライヤがすぐに連絡をくれたので間に合いましたわい」

 フライヤとはずっと一緒にいたけど、一体どのタイミングでヴァン様に連絡したんだろう? 僕はふと気になったので聞いてみた。

「ねえ、フライヤ。ヴァン様が来られてびっくりしたけど、いつの間に連絡したの?」

 するとフライヤが答える前に、ヴァン様が僕の方に近付いて来る。

「ガハハッ! レアンデルよ。ほんの少しの間にまた成長したようだのう。充実した魔力を感じるぞ」
「いえ、まだまだ修行を積まないといけません。最近は会う人たちがとんでもなく強いので、早く追いつかなければと焦ってます」
「グハハハッ!! そうかそうか! 確かにお主の周りは強いものが多いのう。この場には龍族だけではなく、獣人族の強者も揃っておるしのう。しかし焦ることはないぞ。ルシア殿についていけば間違いはない」

 うん。旅を始めてから随分と強くなったことは実感してる。ただ、フライヤもそうだけど、レオーネ皇帝やロンジン隊長もすごい実力だって分かるから、僕はまだまだ未熟だなと痛感してるんだよね。

「話が脱線してしまったな。フライヤが吾輩にいつ連絡を寄こしたのかというと、20分ほど前だな。すごく美味しい古酒があると連絡してきたので、大急ぎで飛んできたというわけだ。フライヤとリーフは眷属であるから、どんなに離れていようが念じるだけで吾輩とやりとりができるのだ。フライヤには美味い酒を見つけたらすぐ報告するように命じてあるからな!」

 なるほど。眷属の二人は念じるだけでヴァン様に連絡できるのか。それはすごく便利だな。

「ヴァン様。お話はいったんその辺りにして、この古酒をどうぞ。ロンジンが見つけてきたのですが、これは本当に美味いです」

 レオーネ皇帝がヴァン様に並々と注がれたグラスを差し出す。うん。どう見ても普通の大きさのグラスじゃないね。僕のグラスの倍の大きさはあるよ。
 ヴァン様はそのグラスに注がれた古酒を一気に飲み干した。

「プハ~ッ! これは美味いな!! まろやかでコクがあるのにすっきりとした飲み口。もう一杯注いでくれんか」
「次は私がお注ぎしますぞ。この古酒を東の村で見つけた瞬間にヴァン様が喜ばれる姿が目に浮かびました。なかなかこんな良い状態のものは見つかりませんからな」

 そういうと、ロンジン隊長がヴァン様のグラスに零れんばかりの古酒を注ぐ。

「いや~本当に美味い!! ロンジンよ。よくぞこんな美味しい酒を見つけてくれた。何か褒美を与えたいぐらいだ」
「ヴァン様からは風の加護をいただいておりますし、眷属のお二人にも尽力してもらっていますからな。美味しいお酒を探してくるぐらいお安い御用ですぞ。よろしければリーフ殿の分も用意しておりますのでお持ち帰りくだされ。さあさあ、まだ古酒はたくさんありますぞ! どんどん飲みましょう!」
「ガハハハッ! いつも悪いな。しかし今日はルシア殿もおられるし、こうして大勢で飲むのは格別に美味い! さあ、みんな! 今日はどんどん飲むぞ!」

 その音頭を皮切りにして、ヴァン様は遅れを取り戻すかのようにお酒を飲み、フライヤもレオーネ皇帝も、ロンジン隊長も、そしてルシアもどんどんお酒が進んで盛り上がっていた。

 僕も食事を楽しみながら色んなことを聞くことができた。

 風龍様のヴァン様はラムセティッド大陸のあちこちに出没してはお酒を楽しんでいるそうだ。
 そんなわけでサンネイシス帝国では、ほとんどの住民がヴァン様に尊敬と感謝の気持ちを持ちつつ、親しみを感じているような状況らしい。ここのレオーネ皇帝のプライベートバーには3か月を空けずにやってくるんだって。

 そしてフライヤがヴァン様の眷属だと知っているのは、レオーネ皇帝を始めとした国家の重職を担う限られた人たちだけらしい。大半の人たちは帝国が誇るSランクハンターとしてフライヤのことを尊敬しているそうだ。そういえばレナールさんもフライヤを尊敬しているって言ってたもんな。

 そんなことを話していると少しお酒に酔ったフライヤがルシアに近付いていく。

「ルシア様、ラムセティッド大陸のグルメは楽しんでもらえていますか?」
『ああ。ここの食事は酒に合うように趣向が凝らされていてとても美味いな。お酒好きには最高の場所に違いない』
「そうなんです! 私もヴァン様もお酒が大好きですから、ここの食事はたまらないんですよ! どうしてもルシア様にも味わって欲しかったのです」
『ふむ。我はお主たちほどの酒好きではないが、美味しいものは何でも好きだ。食事も美味しかったが、お酒も大満足だぞ』

 ルシアから褒められたフライヤは満面の笑顔で喜んでいる。本当にルシアのことを楽しませたいというのが伝わってくるよ。
 するとこちらも楽しそうな笑みを浮かべたレオーネ皇帝が話に加わってきた。

「食事とお酒を満足いただけたなら嬉しい限り。そしてヴァン様とフライヤが尊敬するというルシア殿に会えたのは本当に喜ばしいことです。フライヤの話だとレンを鍛えながら旅をしているとか。
 こちらにはいつまで滞在できるのでしょう? よろしければルシア殿とレンに皇宮の食事を振る舞わせてもらいたいと思うのですがいかがですか?」
『是非、ご馳走になろう』

 はやっ! 相変わらずの即答。食事のことになると基本即決なんだよな。

「ルシア。明後日の午後はハンターギルドの帝都支部に行かないといけないよ」
『分かっておる』
「それでしたら明日の夕食はいかがですかな?」
『大丈夫だ』
「決まりですな。そうしたらルシア殿とレンは皇宮の離れを宿泊施設として自由にお使いくだされ。ヴァン様とフライヤもいかがかな?」
「ガハハハ。魅力的な提案であるが、吾輩はここのバーに飲みに来られるだけで十分だ。それに明日も飲みに出かけたらリーフのやつが拗ねてしまうわい」
「私は堅苦しい席が嫌いだが、ルシア様が参加されるのであれば同席しないわけにはいかない。ぜひとも参加させてもらおう」

 ヴァン様は不参加で、フライヤは参加するんだね。

「フライヤが参加するとは珍しいな。しかし堅苦しい席にするつもりはないぞ。服装も今日と同じで構わんしな。単純に美味いものを食べるための食事会だ。大臣たちを呼ぶつもりもないし、身内だけが参加する気軽な食事会と思ってくれ」

 いや、レオーネ皇帝の身内って、皇后陛下や皇子、皇女だろうから、気軽とはほど遠いと思うんですけど……

「ガハハハハ。楽しそうではないか。フライヤも楽しんでこい。ルシア殿をよろしく頼むぞ」
「はい。かしこまりました」

 ヴァン様のOKももらったし、フライヤも気が楽になったみたいだな。

「しかし、フライヤ。一つだけ気になることがあるのだ」
「何でしょうか?」
「お主、レアンデルと随分親しげではないか。フライヤ、レンと呼ぶ間柄のようだし、話し方もくだけていて楽しそうだ。吾輩がレアンデルに友だち付き合いをお願いしたときは見事に断られたのだぞ。どんな技を使ったのだ? ……ずるいではないか!」

 ヴァン様から思わぬクレームが飛んできちゃったよ……。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧井 汐桜香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

「魔法を使わない魔術師を切り捨てた国は、取り返しのつかない後悔をする

藤原遊
ファンタジー
魔法を使わない魔術師は、役に立たない。 そう判断した王国は、彼女を「不要」と切り捨てた。 派手な魔法も、奇跡も起こさない。 彼女がしていたのは、魔力の流れを整え、結界を維持し、 魔法事故が起きないよう“何も起こらない状態”を保つことだけだった。 代わりはいくらでもいる。 そう思われていた仕事は、彼女がいなくなった途端に破綻する。 魔法は暴走し、結界は歪み、 国は自分たちが何に守られていたのかを知る。 これは、 魔法を使わなかった魔術師が、 最後まで何もせずに証明した話。 ※主人公は一切振り返りません。

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。 しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。 さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。 聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。 しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。 それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。 だがその後、王国は大きく傾くことになった。 フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。 さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。 これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。 しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。

処理中です...