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第5章 ネイスエル女王国編
89 スールフリールでグルメ
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「お待ちしておりましたぞ。ルシア様にレン殿!」
男性に案内されるまま個室に通された僕たちを出迎えたのは、
「宰相様? なぜここにいらっしゃるのですか?」
そう。ネイスエルの宰相であるベルス様が個室の中で待っておられたのだった。
「バハハッ! 私がルシア様にこの店をおすすめしましたが、入るのも大変な人気店なのです。きっと今日来店されると思いましたので、前もって店主に予約を入れていたわけです」
「店主のアビトです。今日はご来店、誠にありがとうございます」
案内してくれた人、店主さんだったんだ!
「私は調理がありますので失礼させていただきます」
店主さんは挨拶をされると、颯爽と退室していかれた。
「そういうわけで、この店の絶品の天ぷらをいただきましょう! 私もここの天ぷらには目が無いもので、勝手ながら同席させてもらった次第です。バハハハハ!」
宰相様は豪快な人のようだな。女王様が剛腕と言ってたのも分かる気がする。
『食事は大勢で楽しんだ方が美味しい。みんなでその絶品を味わうとしよう』
すると、部屋の横の引き戸が開かれる。そこには新鮮な食材がズラッと並べられていて、調理する機材の前に店主が立っている。
「それでは、まずはおすすめから揚げさせてもらいます。そのあとはお好きな食材があればおっしゃってください」
店主がそう言うと、目の前の油に食材を入れて揚げていく。目の前で調理してくれるんだ! しかもオーダーもできるのか! すっごく面白いな。
目の前には揚げたての山菜の天ぷらといくつかの調味料のようなものが並んでいる。天ぷらを運んできた店員の人から食べ方を説明してもらう。なるほど。好みで味を選んで食べていいんだ。これも面白いし、楽しいね!
『美味い!! 衣はサクサクで山菜の風味はしっかり残っておる。そのまま食べても美味しいが、塩を少し付けるのも良いな」
「ルシア様、この天ぷらにはこの店の冷酒が最高に合います。召し上がられませんか?」
『是非、いただこう』
「レン殿には王宮でもお出ししたローネ湖の源泉水に炭酸を加えたものが合うと思いますが、いかがですかな?」
「あのお水、すっごく美味しかったです。お願いします」
宰相様が段取り良く手配してくれる。すごく気の利く方だな。流石は宰相様だよ。
それからも魚や海老や貝の天ぷら、旬の野菜の天ぷらも出てきたけど、どれもこれもめちゃくちゃ美味しかった。油で揚げてるのにしつこくない。いくらでも食べられる気がする不思議な料理だ。
ルシアも僕も宰相様も、気に入った食材を次々に揚げてもらって、ルシアと宰相様は冷酒をどんどん追加で注文して、みんなすっかりいい気分だ。
一通りの食事が終わり、店主のアビトさんや店員さんたちは退室して、今は3人で余韻を楽しみながらお茶を飲んでいる。
『宰相よ。この店の天ぷらが絶品と言うのには心から賛同するぞ。それに加えてお主が次々と注文する冷酒がそのときに食す食材に合ったものを選んでいたので、満足感が更に増した。お主も中々にグルメだな』
「ルシア様にお褒めいただけると嬉しい限りですな。私も食通として、ネイスエルの美味いものを探すのが趣味ですが、ここの天ぷらは外せない一品なのです」
『店選びから料理と飲み物の合わせ方の巧さ。お主も我のグルメ仲間に認定せねばなるまい。
……して、我に何か相談があるのではないか?』
うん? ルシアに相談? 宰相様が?
「……そこまで、見抜かれていましたか」
『何となくだがな。そういう雰囲気を感じただけだ』
「我らがネイスエル女王国のことですので、本来は我々で解決すべきこと。ルシア様に相談すべきものなのか悩みましたが、人智を超えたお方とお会いできたのも運命と思いましてな。お話しだけでも聞いてもらえないでしょうか」
『構わんぞ。我が解決できるかどうかは別問題だがな』
「ありがとうございます」
宰相様の顔が真剣な顔つきに戻っている。よほど深刻な話なのだろう。
「あの、僕はこの場にいて問題無いのでしょうか?」
「もちろんだとも。あなたはルシア様とともに行動をし、私でも分かるほどの特別な力を感じる。きっとウェスタール王国の貴族の子息という枠に納まらない人物なのだろう。一緒に聞いてもらえればありがたい」
宰相様には色々と見抜かれている感じさえするね。
「分かりました。同席します」
すると宰相様は一瞬だけニコッと笑顔を向け、そのあとは真剣な表情で話し始めた。
「話と言うのはクリスタ王女のことでございます」
それからしばらくの間、宰相様のお話しを聞かせてもらった。
『ふむ。……そういう話か。確かにお主たちだけで解決するのは少し難しい話かも知れんな』
宰相様の話を聞き終わったあと、珍しくルシアが真剣な表情で呟いていた。
男性に案内されるまま個室に通された僕たちを出迎えたのは、
「宰相様? なぜここにいらっしゃるのですか?」
そう。ネイスエルの宰相であるベルス様が個室の中で待っておられたのだった。
「バハハッ! 私がルシア様にこの店をおすすめしましたが、入るのも大変な人気店なのです。きっと今日来店されると思いましたので、前もって店主に予約を入れていたわけです」
「店主のアビトです。今日はご来店、誠にありがとうございます」
案内してくれた人、店主さんだったんだ!
「私は調理がありますので失礼させていただきます」
店主さんは挨拶をされると、颯爽と退室していかれた。
「そういうわけで、この店の絶品の天ぷらをいただきましょう! 私もここの天ぷらには目が無いもので、勝手ながら同席させてもらった次第です。バハハハハ!」
宰相様は豪快な人のようだな。女王様が剛腕と言ってたのも分かる気がする。
『食事は大勢で楽しんだ方が美味しい。みんなでその絶品を味わうとしよう』
すると、部屋の横の引き戸が開かれる。そこには新鮮な食材がズラッと並べられていて、調理する機材の前に店主が立っている。
「それでは、まずはおすすめから揚げさせてもらいます。そのあとはお好きな食材があればおっしゃってください」
店主がそう言うと、目の前の油に食材を入れて揚げていく。目の前で調理してくれるんだ! しかもオーダーもできるのか! すっごく面白いな。
目の前には揚げたての山菜の天ぷらといくつかの調味料のようなものが並んでいる。天ぷらを運んできた店員の人から食べ方を説明してもらう。なるほど。好みで味を選んで食べていいんだ。これも面白いし、楽しいね!
『美味い!! 衣はサクサクで山菜の風味はしっかり残っておる。そのまま食べても美味しいが、塩を少し付けるのも良いな」
「ルシア様、この天ぷらにはこの店の冷酒が最高に合います。召し上がられませんか?」
『是非、いただこう』
「レン殿には王宮でもお出ししたローネ湖の源泉水に炭酸を加えたものが合うと思いますが、いかがですかな?」
「あのお水、すっごく美味しかったです。お願いします」
宰相様が段取り良く手配してくれる。すごく気の利く方だな。流石は宰相様だよ。
それからも魚や海老や貝の天ぷら、旬の野菜の天ぷらも出てきたけど、どれもこれもめちゃくちゃ美味しかった。油で揚げてるのにしつこくない。いくらでも食べられる気がする不思議な料理だ。
ルシアも僕も宰相様も、気に入った食材を次々に揚げてもらって、ルシアと宰相様は冷酒をどんどん追加で注文して、みんなすっかりいい気分だ。
一通りの食事が終わり、店主のアビトさんや店員さんたちは退室して、今は3人で余韻を楽しみながらお茶を飲んでいる。
『宰相よ。この店の天ぷらが絶品と言うのには心から賛同するぞ。それに加えてお主が次々と注文する冷酒がそのときに食す食材に合ったものを選んでいたので、満足感が更に増した。お主も中々にグルメだな』
「ルシア様にお褒めいただけると嬉しい限りですな。私も食通として、ネイスエルの美味いものを探すのが趣味ですが、ここの天ぷらは外せない一品なのです」
『店選びから料理と飲み物の合わせ方の巧さ。お主も我のグルメ仲間に認定せねばなるまい。
……して、我に何か相談があるのではないか?』
うん? ルシアに相談? 宰相様が?
「……そこまで、見抜かれていましたか」
『何となくだがな。そういう雰囲気を感じただけだ』
「我らがネイスエル女王国のことですので、本来は我々で解決すべきこと。ルシア様に相談すべきものなのか悩みましたが、人智を超えたお方とお会いできたのも運命と思いましてな。お話しだけでも聞いてもらえないでしょうか」
『構わんぞ。我が解決できるかどうかは別問題だがな』
「ありがとうございます」
宰相様の顔が真剣な顔つきに戻っている。よほど深刻な話なのだろう。
「あの、僕はこの場にいて問題無いのでしょうか?」
「もちろんだとも。あなたはルシア様とともに行動をし、私でも分かるほどの特別な力を感じる。きっとウェスタール王国の貴族の子息という枠に納まらない人物なのだろう。一緒に聞いてもらえればありがたい」
宰相様には色々と見抜かれている感じさえするね。
「分かりました。同席します」
すると宰相様は一瞬だけニコッと笑顔を向け、そのあとは真剣な表情で話し始めた。
「話と言うのはクリスタ王女のことでございます」
それからしばらくの間、宰相様のお話しを聞かせてもらった。
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