使える魔法はセーブとロードとリセットです。

ちさめす

文字の大きさ
11 / 16

父と子③

しおりを挟む
父さんの旅を黙って見守るのか。
それとも・・・。

いろいろな思いが頭を巡る。

僕はこの物語を完結させたいと思っていた。
これは単純な好奇心だ。

父さんが旅に出るという。
しかし、旅に出ると死んでしまうかもしれない。

取れる選択肢は代わりに行く、だろう。
この物語では僕が行くことでハッピーエンドを迎えるかもしれない。

しかしだ。

これまでと同じようにこの小説の世界を楽しもうとした矢先、今までには無かった命の危険を僕は感じた。

この1、2時間の間に、僕は気を失う程に血を流したり、魔物とかいう狼に襲われて肉をえぐられたりした。
恐らく完結する為には、これからもそういった危険が続くことは容易に想像がつく。

僕はこれからもそんな危険と隣り合わせなこの冒険を続けて行けるのか?
別の簡単な本を選べば、もっと容易に楽しむことが出来るかもしれない。

何も、この小説にこだわる必要は無いのだ。

そして、僕はこの世界へと導いてくれた栞の玉を無くしてしまった。
このまま見つけることが出来なければ、僕はこの小説の世界に閉じ込められてしまう。

危険を感じた時に離脱出来ないのは、まるで命綱のない登山だ。
今は一刻も早く栞の玉を見つけることが先決だ。

栞の玉を見つけた後は・・・。

辞めるのも選択だ。

完結させたい理由はただの興味だ。
いつだって辞められる。

それでも。
僕は深呼吸をする。

父の悲しみを繰り返してはいけない気がする。

あの時。
父を失った時。

自分には何も出来なかった。

そのことをここで重ねることはおかしいのかもしれない。

けれど。

今の僕はあの時とは違う。

あの時僕が父の生死に関与出来なかった時とは違い、今の僕は生死に影響を及ぼすことが出来る。

僕の行動で父さんを救うことが出来る。

自分の無力さをただ呪って、母の言葉に答えられなかったあの時とは違うんだ。

これまでの冒険は物語を完結させると、僕が転移したその人物は僕が転移する前の元の状態に戻っていた。
僕が起こした行動が、あたかもその人物が自分自身で選択して行動してきたかの様に、全ての経験が元の人物に帰属するのだ。

僕がここで父さんを救うことは、ハルがハルに戻った時、ハルは父さんを失わなくて済むということだ。

ハルに僕と同じ悲しみをさせてはいけないんだ。
大切な人を失うことはとても辛いことだから・・・。

・・・

僕が小学生になる少し前。

「父!もうすぐ入学式だよ。ねえ!新しい友達はどうやったら出来るの!」

父は答える。

「好きなように接してみなさい」

「それでだめなら、どうしたらいいのか考えてみなさい」

「そうしてまた好きなように接してみなさい」

「そうすると、いつの間にか向こうも好きなように接してくれるんだ」

「そうしたら友達が出来るよ」

「すべてがうまくいくんだよ」

「だから、もし迷うことがあれば、まずは好きなようにしてみなさい」

・・・

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...