12 / 16
父と子④
しおりを挟む「変わらなきゃいけない」
「・・・ハル?」
うつむいたまま、手を握りしめて僕は呟いた。
無意識に言葉を口にしていたことも、ロイが聞き返したことにも気付かず、僕はただ真っ直ぐと前を見る。
今の僕はハルだ。
だから、ハルの父さんは僕の父さんだ。
僕は、父さんを救いたい。
僕は出した答えを伝える。
「父さん、僕がいくよ。政府の特命は僕がやるよ!」
領主は驚いた表情をするが、しかし間を置かず反応する。
「いかんぞハル!危険だ。襲撃による傷や記憶喪失で満身創痍なのは分かっておるのだ。それにハルは七曜の加護を受けてはおらん。ここは親に任せておれば良いのだ。ハルよ、それは無用の心配だ」
大広間に来るまでの間、僕はロイから、前のハルは周りの人間に対してかなり反発をしていたと聞いた。
ハルの部屋の状況からみても、相当父さんにも負担を掛けていたのは容易に想像出来る。
それなのに、僕たちがこの部屋に入って来た時の最初に見せたあの優しい目。
あの時に感じたのは、紛れもなく昔父が僕に向けていた瞳だった。
僕が父にしてあげたかったことを、父さんに応えることで叶えられる。
自分自身の問題として、僕はそう思った。
僕はこの世界の父さんを救いたい。
「もう、決めたんだ!父さん。僕は・・・自分の為にも僕が行くんだ!」
僕は玉座に座る父さんを見る。
視線を切ることなく、訴えるように見続ける。
しかし・・・。と、これまでに一度も見せたことが無かった息子の決意に、領主は思わずたじろいでしまう。
マリーンが口を開く。
「領主様、信じましょうよ息子様を。これまでのように、今も信じてあげましょうよ」
マリーンの言葉に、にやりとしたロイも口を開く。
「領主様。このロイ、使用人として最後まで息子様にお供し、特命を経て無事に帰すことをここに誓います」
そう言うとロイは片膝を付き頭を下げた。
僕はロイの方に身体を向いて、ありがとうと感謝した。
領主は考え込む。
そして。
「ふう、私の負けだ。ハルよ、成長したな」
ため息とともに領主は白旗をあげた。
「父さん、ありがとう。僕、必ず成し遂げるから見ていてほしい」
この気持ちは心の中で父にも向けていた。
すべてがうまくいくために、今を好きにやっていこうと強く思った。
「ハルよ、そなたを使節団長に任命する。出発は明日、護衛の者に特命の内容を伝えておるのでな、今日はゆっくりと休むがよい。ああそれと、長旅になる故、出発の準備を怠るでないぞ」
僕は頭を下げた。
マリーンにも頭を下げ、僕たちは大広間を出る。
「ハルよ、必ず生きて戻れよ」
領主の言葉は部屋を出た後のハルには届かなかったが、横で聞いていたマリーンが代わりに答える。
「息子様、かわりましたな」
「見違える程にかわった。これまでいろいろとあったが信じてきてよかった。本当に強くなった」
これほどの愛を感じられて、きっと息子様は幸せですよ。
「ああ、そうだと良いな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる