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旅立ちの前日①

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始まりはいつも晴れ。

ここは白い城がそびえる町、白城町(はくじょうちょう)。

町の中央には広場があり、そこへ続く大通りには一軒の居酒屋が店を開いていた。
そのテラス席にはとんがり帽子を被った女の子が座っている。

「さーてと!そんじゃまあ、盗聴しますかあ!」

テーブルには四角い機器が置いてあり、繋がれたヘットフォンを耳に当てる。

「そうそうこれこれ~!」

女の子は目を閉じて顔を揺らしてリズムを取っている。
かと思いきや、だらーんと、への字の口からよだれを垂らしたり、ぬふふと言いながら足をバタつかせたりした。

なひゃひゃひゃひゃと涙を浮かべて高笑いをした時には、通りを歩く人たちはみんな彼女を見ていた。

居酒屋の横には裏路地があり、そこから歩いてきた2人の男は彼女を見つけると足を止めた。

しばらく眺めていた2人だったが、女の子が椅子の上に立ち上がって空に両手を伸ばしている頃合いに、金髪の男が彼女に近づく。
そして、テーブルに置かれた機器のスイッチを切った。

空から降ってきた何かを掴み取ろうと、しきりに両方の手のひらを握っては広げてを繰り返していた彼女の動きは止まった。

「盗聴の現行犯で捕まえにきたぜ。観念は出来ているか」
「ロイ~!もう何するのよってあら、もう外に出ちゃって大丈夫なの?」

「大丈夫だ。ニマ、今少し時間あるか?ちょっとお願いしたいことがあるんだ」
「お願い事?そうだな~それじゃパフェでいいよ!」
「いつものパフェでいいんだな。よしじゃあ少し待ってな」

ロイはこちらに振り向き手招きをした。

僕が着くと何か飲みたい物はあるかと聞かれたので、何でもいいと答える。
ロイは店員を呼びパフェと2つの紅茶を注文した。

3人は席に着く。

「紹介するよハル。この方はニマ、盗聴魔だ」
「ちょっと誰が盗聴魔よ!誤解を生むでしょ誤解を!盗聴はたまにしかしてないんだから!ん~どちらかといえば慈善事業が趣味のか弱い女の子ってことでよろしくね!」

「ニマはシールドレインに所属しているから前半はあっているね。だけど後半のか弱いは間違いじゃないのか?」
「むむ!なんて失礼な!だいたいね、ロイは女の子に対するマナーがなっていないのよ。ぷんすかぷんすか!」
「ははは。そんなに怒るなよ、悪かったよ」

わちゃわちゃと早口でニマは何かを言ってはいるが、ロイは話を続ける。

「それでニマ、こちらがハルだ」
「始めましてニマさん、ハルと言います」

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