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雨降って地固まる
しおりを挟む(四月)
翌日。
私は学校で昨日の出来事を梨花に話した。
雨の境界線については私も見たいという反応を示していたが、謎の言葉については空耳として片付けられたので私もそう思うことにした。
授業中、私は窓の外を見つめる。昨日見たあの幻想的な雨の境界線が頭から離れなかった。
――もう一度見てみたいな。だけどあんな現象なんてそうそう起こらないよねえ……。
と、考えているとチョークが飛んできた。
「痛っ!」
「こら一年! ぼーっとするんじゃない。授業に集中しなさい!」
「は、はい! ごめんなさい……」
――痛たいなあ……。チョーク投げって絶対に体罰だよ……。
◇
だけど私の予想に反し、週末にはゲリラ豪雨が発生した。
自分の部屋にいた私は窓を開ける。外は風が吹き荒れて大雨となっていた。
空を見上げるとまだ昼の三時だというのにどす黒い雲が広がっている。だけど遠くの空は青かった。
――もしかしたら今日も見れるかもしれない!
今の私はもう一度雨の境界線が見たくて仕方がなかった。だからこの雨が止む前に山を登ろうと家を飛びだした。
強風に煽られるせいで傘を上手くさせない。だけど濡れてもいいような部屋着で来たからそこまでは気にしなかった。
家の裏側から山に入った。既に山道は滑りやすくなっているために早歩きのペースで進んだ。時折吹く突風で傘は形を変えた。
道を進むにつれて雨足は強まっていく。
――このペースじゃ三十分は掛かるかも……うう~頂上に着く頃には雨が上がっちゃうよ……!
だけど、傘を両手で支えながらぬかるんだ山道を走ることは危なくて到底できなかった。だから私は傘を畳んだ。帰ったらお風呂に入ればいいだけ。今はとにかく雨が止むまでに頂上を目指したかった。
傘を閉じた瞬間から大粒の雨が私を濡らした。
そして、「よし! いこう!」と駆け上がろうとした時――。
―――――――!
と。
――また聞こえた!? やっぱり空耳じゃなかった!?
―――――――!
「やっぱり誰かいるの!? ねえってば!?」
キョロキョロと周りを見渡す。
と、今度は人がいた。水色の羽衣を着ている水色の髪をしたの男の子だった。
「やーっと届いたよ僕の声が! もーほんとにすごい待ったんだからね!」
「……はい!?」
◇
「私は雨星(あまぼし)。雨の世界の王子だ」
「え? ああ、自己紹介? ……えっと、私は一年暦です」
「一年暦か。いい名前だな! 『境界を跨いだ者』としては恥じぬ名だ!」
「境界を、跨いだ……?」
「っと、挨拶はこれぐらいにして……」
雨星は空を見上げる。
「この雨はもうすぐ止むか……よし。一年暦よ、時間がないから心して聞いてほしい」
そういって雨星は話しはじめる。
まとめるとこうだ――。
雨星は、雨姫(あまひめ)というお姫様と二人で暮らす雨の世界からやってきた。
そして、『雨の境界』というこの世界と雨の世界の繋ぎ目を見守っていたところ、私がその境界を跨いで雨の世界にいってしまったらしい。
もしもこの世界の住人が雨の世界に迷い込んでしまったのなら、雨星がその人をこの世界に連れ戻すという役割を担っている。それに倣い、雨星が私を連れ戻そうとしたが、雨が止んでしまい雨星自身が雨の世界に帰れなくなってしまったのだという。
雨星は私にいった。
「僕が雨の世界に帰るためには、一年暦にはもう一度あの場所で『雨の境界』を見つけてもらいたい」と。
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