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第四話

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「ここかぁ……」

新たにやってきた新天地、その名も近くの街。
ここに人が多くいると言われて転移されたが、本当にここで大丈夫なのか怪しい、村八分系街かもしれない。いや、それなら村八分ではなく街八分だな。さて、槍を影に収めて……あ。

「駄神、人間の街って入れるのか?」
『その呼び方やめようね……一応入れるよ。』
「なら良かったよ、言語理解は使える………………いや待て、俺この世界の文字書けたか?」
『あれ?今更気付いたの?』
「殺していいですか?」 
『ごめんごめん、普通に勘弁して。今からスキル付与なんて無理だし、これ以上君にあげれないんだ。その代わり、これをあげよう。神権行使:エル 転送術式 実行ジェネレート

エルの詠唱が終わると共に俺の手に本が渡される。見た目は緑色の童話とか描かれてそうな本だが……

「これ何?」
『それはスキルブックだ。読めば翻訳のスキルが得られるよ。一応それ、在庫扱いだからね……』
「在庫?誰にもスキルとして取られなかったって事か?」
『僕や別の人以外の神様は基本自動翻訳の魔導を掛けていたらしくてね、転生させる時に付与させたりしているが君は違うでしょ?とまぁ、君はそれで何とかなるよ。』
「……最初からこれ渡せばいいんだよなぁ。」

と、本を開き文章を色々と辿りながら見てみる。すっと頭の中に入っていくような感覚が頭の中に感じる……数分も経たずに読み終えてしまうと、本がロウソクの火のように消えてしまった。

『はい、これでOK』
「おー、何となく分かる気がする。」
『そりゃあスキルが適応されてるからだね。あ、今ならスキルを発動しながら見れば即分かるよ。』
「へぇー」

思考のスキルと組み合わせれば強いかな?あと観察のスキルと併用して遠くの看板の文字とか……色々使い道が増えそうで嬉しい限りだ。

「それじゃ、ありがとう駄神。また頼るね」
『その言い方、次からは直しておいてね。』
「気が向いたらしておきまーす」
『……はぁ。ま、頑張れ。』
「それはどうも。」

スキルの啓言が切れ、周囲の確認をして疾駆のスキルを使用して街へ向かって走り出す。そうだ、この間にスキルの復習をしておこう。忘れたら嫌だしなぁ。

まずは最初手に入れたスキル達から。まず言語理解は言う必要ないくらい単純。他言語を理解出来るようになる。ただし、実際に喋ったり翻訳されてないと効果が薄い。頑張れば言語理解でも何とか文字も理解出来た……けど効率が悪いからパス。それなら翻訳手に入れた方が早いからね。次は器用貧乏、これは昨日バグ技みたいなのを発見した。器用貧乏のスキルに器用貧乏をぶっかけるというものである。そしたら少しだけ効果がかさ増しされるというものである。パーセンテージで言えば6%くらいかな?
レベルが少ないスキルにしようすると効果が今なら…Lv.5くらいまで引き上げられる。ただし強くしても恩恵が狭いスキルもあるし、効果時間も決まっている為使い所が限られるかな。でも性能は上がるからないよりマシ。

啓言はあの神様だしんと話せたり他の神と意思疎通が可能なる。もちろんこの世界の神様とも話せたりするようだ……これ強くない?だって神様味方に付けたら心強いし、女神様達から加護を貰うのも可能。イシュタルの求婚だって振るのも……まぁ、この世界にイシュタルはいないけど。性格捻じ曲がってるからなぁ、世界の神は。鑑定は対象を指定して物質的、間接的な解析をするとか。簡単に言えば物の詳細と何が、誰が関与しているかを解析するそう。落し物とかした時に役立ちそうだね、何でも屋やってみるのもありかぁ……では、次は昨日手に入れたスキル達。

見切りは敵の攻撃や動作を観察している時に、強い判断力を発動して行動を予知する。ただ、これ敵を見続けてないと使えないのが問題なんだよね……観察は見切りに適しているスキル。対象を長時間見続ける事が出来て、自動的に対象にピントを合わせたり出来る。機械かな?
回避と疾駆は回避行動が強化されて、疾駆は単に走る行動やスピードが強化。思考は言うはずもない、ただ考え思う事。ただ、レベルが上がると思考を乱しにくくなる。つまり敵の奇襲にも冷静に判断出来るようになるそう。反応は……初手から見てやらしい方かと思ったけど反応速度とかが強化される……黒の剣士かな?
影・闇魔法はまだ触れてない、他魔法関係もね。経験値増長は名の通り、前回も言ったからパス。それで今手に入れた翻訳…他の言語や古代文字、暗号らをこちらの言葉で翻訳してくれる。また、相手と話す時に自分の言語を自動で翻訳して話してくれる機能付き。めちゃくちゃ便利ーぃ!

「(あらかたこんな感じかな……)」

と、自分なりに整理しているとやっと街へ到着した。大きな石材で作られた壁に木で出来た門を守る衛兵二人……うん、凄くテンプレ的なファンタジーな街。取り敢えず全く見た目が同じでお馴染み鎧を来た衛兵達と話してみる事に。あ、翻訳のスキルの発動を忘れずにね。

「すいません、この街に入りたいのですが生憎旅の者で……」
「ん?ああ……見慣れない格好だな。」
「異国の者ですので。この街に入る資格などはありますか?」
「所持品検査で問題が無ければ誰であろうど構わん」

お、ここ結構緩いな。槍は影に入れておいたから大丈夫。

「それじゃあ………………うん、良し。入っていいぞ。」
「ありがとう。金を稼ぐついでに冒険者になりたいのだが、ここにギルドとかはあるかい?」
「ギルド?……ああ、冒険者組合の事か?そんなら安い金さえ払えりゃ登録してくれるぞ。」
「情報ありがとう、持っていってくれ」

と、ローブの影から金額を二枚投げ渡す。なんか後ろが騒がしいがとっとと行こう。情報は最大の金なり、教えてくれた人には感謝を。



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堂々と『冒険者組合』と描かれた看板を観察で速攻発見して扉を開いて中を見渡す。それはもう冒険者みたいな顔立ちやら怪しい事件とか起こしそうな人やら大勢が椅子に座って仲間と酒を飲んでいたり、依頼書?が引っつけてある看板に目を通しながら仲間と相談していたり……と、ファンタジーっぽさがバンッ、と出された雰囲気で個人的に超ワクワクしている。まるで某龍のクエストみたいだ。という事でThe受付の様な場所に立つ女性に話しかける。

「すいません、ここで冒険者登録が出来ると聞いたのですが。」
「はい!冒険者組合にご登録ですね。では、銀貨十枚いただきます。」
「銀貨ね、はいはい……」

そういえば、金貨以外に銀貸もあったね。この世界の基本円は把握済み。この世界では基本銅貨、銀貨、金貨、その上に白金貨……って感じだそう。そこんところ詳しく鑑定したら、最近はお札が使われているそうで銅銀金貸の使用は減っているとか。日本が徐々に銭から紙幣、紙幣から電子マネーに変わっていった様に時代によって紙幣も出てくるのだろう。日本や外国でなくてもどの道紙幣の道は避けられないそうだ。

「はい、いただきました。それではこちらを」

と、渡されたのは見た目で分かる軽々そうな板。一応知っておく為に鑑定しておこう。


[古代機物アーティファクト・鑑定板]

・対象のステータスを掲載、記録する板。かつての世界最強と謳われた文明を持った国が作り上げたアーティファクト。現在ではその劣化版であるアイテムが再現され、本来の鑑定板の技術は失われている。また、鑑定板を持って意識をスキルに向ける事でスキルを隠蔽することが出来る。破壊されると記録した情報が消える。

「(おお、めっちゃ便利なアーティファクト。)」

取り敢えず見られたら困るスキルから隠蔽してから受付の女性に渡す。

「レベル20……結構お高いんですね。何処かで戦闘経験でもなされましたか?」
「ええ、それはもう自分の死が強く感じれるような」
「大変でしたね、ここら近くの辺境は比較的安全なのでご安心ください。レベル20で、お名前はカネキ・ユウキ様ですね。レベル20辺りなら、二階の寝室が自由に使えます。それと、二階にレベル20辺りからでも受けれるクエスト表がありますのでそちらを私の方に持ってきてもらえばクエストを受注します。」
「なるほど、それはありがとう!」
「こちらこそ、高レベルの冒険者様は欲しかったので。」
「うん、また何かあればよろしくね。」

と、話を切り上げて即座に二回へ。高レベルの冒険者……不足してるのかな?それとも何か大きな襲撃でも起きているのか。どっちにしろ、この世界に生まれてきたならば起こるのは……そう、序盤のイベント!じゃあ襲撃イベントか受けるクエスト次第で変わってくるな。
……と、なればだ。英雄王ならここをどう切り抜けるかも重要である。まず、彼ならまず武器やアイテムの補給等を行い、仲間を……あ、そうだ。俺一人も仲間いないや。

「(と、言ってもいきなり男や女に話しかけろと言われてもキツイなぁ)」

もちろんだが、現実世界でこの髪色と目の色で色々と悩まされた。昔から日本語は話せたのに俺なんて言われていたか……外国人だぜ?悲し過ぎる、ちゃんとコミュニケーションは取ってきたつもりだが。
それと、女子の運もない。基本俺に突っかかってくるやつは遊びで突っかかってくる。ぼっちな外国人を構ってあげる私優しい~……ってな感じで。性格とことんクズすぎません?
とまぁ、こんな感じにマトモに人に接した事がないので他の冒険者と仲良くなれるかと言われれば微妙。ラノベの展開で言えばこういう時奴隷とか孤立している冒険者を手篭めにかけるそうだが……俺そんな事したら余計孤立するよね?やめておこう、英雄王でもしない。

「(と、すればやっぱり他人のパーティーに乗っかった方がいいな。冒険者達に課された依頼でも見ながら確認しよっかな。)」

という事で、二回の寝室へ到着した。カギかかかってなさそうなものを選んでみようと鑑定を発動する……あ、これ人入ってない部屋が分かるのか……めちゃくちゃ便利。詳細を更に鑑定すると、部屋に何があるのかもよく……ん?

「……3階?」

3階の鑑定結果が2階を鑑定しているのに見せられてきた。取り敢えず詳しく見てみよう。


[3階・2号室]

3階2号室に自身に近いレベル帯の人物確認。対象名「ユズリア・フォーリナー」、二ヶ月前から3階2号室に長期の予約を付けている。この部屋に入った形跡アリ。対象の部屋には金貨や銀貨が多い事が確認出来る。

「(……ゴリゴリ怪しいヤツ来たわ。長期の予約ってここ予約制なのか?それなら後で俺も予約付けよう……この部屋に入った形跡アリってマジか?だとしたら何の為に?それとなんで金貨と銀貨の在り処を仄めかした?)」

考えれば考える程嫌な予感がしてきた。一先ずここに泊まるのは辞めておこう、ここの街に宿屋があるといいのだが……それにしても、俺と同じレベル帯か。あの発言もそうだが、高レベルの冒険者をここにいさせたい理由でもあるのだろうか?いても困らないというのはあるが、何せいきなりあんな事言われたら気になってしまう……個人的に探ってみるか……いや、なんか上手くいく気もしないしやめよう。そういえば鑑定中に視線を感じだけど……後日調査でもしようかな。




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昨日の鑑定にもんもんとしながら一夜を終えた。この街を見渡した感じ、どうやら基本町において必要最低限のものは揃ってる。商店、鍛冶屋、服屋、装備販売店や薬屋、宿屋に図書館……意外と大きい街の様だ。あと街の名前は「リベルトン」と言われている。今更ながら一番確認するべきなんだよなぁ、街の名前とか。と、まぁ……こんな事を後から考えるのも味気ないのでやめた。取り敢えず仕事を受けに冒険者組合へ行っている……のだが。
どうやら仕事をしようとも出来なさそうな事が扉前にて起きているらしい。あっちから喧騒聞こえるし。適当なモブに話しかけてみよ。

「(なんか騒がしいな?)すまん、何かあったのか?」

「ん?ああ、どうやら他の冒険者が持ってた金が無くなったそうだぜ。いつの間にか貯めていたへそくりも無くなってて、部屋を管理している組合の職員が怪しいとかで喧嘩になってんだ。」
「うへぇ、面倒くせ……」

なんだよそりゃ、八つ当たり…………あ?金?



あ、昨日思い切り金の事鑑定が言ってたやんけ。もしかしてアイツか?もしそうなら……なんか大きな事が起きる前に事件の発端のヤツに会いに行くか。冒険者達が群がって狭い人混みを抜けながら何とか喧騒の原因へ辿り着く。

「ふざけんな!こっちは生活賭けてやってんだぞ!」
「し、しかしこちらも、予約されていた部屋には私含め職員は入れませんと何回も説明しておりますが……」
「だったらどうして俺の部屋だけ狙われてんだよ!予約した冒険者の名前はお前達が把握しているんだろうが!」



「あーはいはいちょっと待て!心当たりがあるんだが!」

と、強引な形で割り込む。色々と視線が集まるが不動の心で挑もう。一先ずヘイトを俺に向けて俺の方に話題を集める。

「なんだお前?」
「昨日あの寝室を使おうとしてた者だ。誰かが入ってないか鑑定のスキルで調べたら、ここの3階の2号室の人間が俺の調べていた部屋に入った形跡があったんだよ。何か心当たりあるか、職員さん?」
「その人は確か先々月からずっと予約されているユズリアさんですね。でも、いつの間に2階3号室に……」
「んな事どうだっていいんだよ、何が関係あるってんだ!」
「待て、話は終わってない……俺の鑑定は間接的な情報も調べるんだが、何故か関係がなさそうな金貨と銀貨の情報も出てきたんだ。ただの他人がここにいて、しかもここを鑑定したら金貨と銀貨の話も出てきた……おかしくないか?ただの偶然にしてはな。」
「は……?なんだよそれ……」
「俺も昨日から違和感を感じててな。嘘だと思うなら、俺の話は聞かなかった事にしてくれ……怪しいって思うなら、まず落ち着け。職員さん、無理を言うみたいですまないがここの街の商店の情報全部出せるか?」
「は、はい!分かりました……」
「…………で、お前は受けるか?このまま責めたらお前が変な目で見られるぞ。」

「……分かったよ、一先ずお前の話を信用してやる。俺はフール、お前は?」
「ユウキだ。よろしく……と言ってられんな。ひとまず中で話そう。」
「ああ、テメェの話が嘘ならぶっ飛ばすぞ?」
「嘘で庇う程、俺はお人好しじゃないからな。」
「そうかい……」





……さて、昨日の視線、鑑定の結果と言い……果たしてどうなるかね?





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今回の進捗3(達成!)(進捗3/100)

進捗3『英雄王の力を示すべく、冒険者となる』(達成)→進捗4『英雄王として人を統べる為、仲間か知り合いの者を作る』(進行中)

世界移動回数『1』 世界攻略回数『0』(上限無し)


NEXT→冒険者として『2』






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