捻れて歪んで最後には

三浦イツキ

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微睡みの朝

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「痛みはありましたか? 絶頂は何回ほどありましたか?」
「ちょ、ちょっと、まってください、あの!」

 矢継ぎ早に飛び出してくる到底答えられるものではない質問に混乱しながら、手のひらを突き出して制止をかける。

 反射的に言葉を飲み込んだ彼は一瞬きょとんとした顔を見せたものの、すぐに何かに気がついたように眉をひそめた。

「失礼いたしました。質問の意図を申し上げていませんでしたね。ええと……旦那様が貴方に魔術をかけられたと思うのですが、覚えていらっしゃいますか?」

 とりあえずすぐに答える必要はなくなったらしいことを察して胸を撫で下ろす。無遠慮な質問にも合理的な意図があるならば、一度はちゃんと聞いておきたい。口ごもりつつも魔術の効果を答えた。

「そうです。痛覚の麻痺と快感の増幅。その他諸々細やかな作用も一応ありますが、主なものはこの二つになりますね。……この魔術、実は私が組み立てたのですよ」
「ディミトリさんが……!?」
「まだ貴方には伝えていなかったが、こいつはこう見えて淫魔だ。そういった類の魔術の研究もしている」

 誠実で清らかな男性にしか見えない彼がそんな魔術を作るとはとても思えず驚きで固まっていたところを、新たな事実が強く殴りつけた。

 予想外すぎて飲み込むことができない。確かに耳は尖っているけれど、まさか淫魔だなんて。

「旦那様に許可もいただかず貴方を襲うほど節操なしではありませんのでご安心ください。もっとも、そんな許可を出されることなど絶対にないでしょうがね」

 恐怖で声が出ないのだろうと思われたのか、そんなことを言わせてしまった。しかしもはや否定したり説明する気力も残っておらず、私はただ頷いたのだった。

「本題に戻ります。元々、二つの効果はそれぞれ別の魔術として研究しているところだったのです。調合した薬草で痛覚を鈍らせる方法は病院などで採用されていますが、魔術で瞬間的に感覚をコントロールできるならそれは戦場で活きる。そして快感を増幅させる魔術は、娼館の客に使用すれば満足度の向上とリピートを期待できる。運用方法は考えなければいけませんが、二つとも巨大な市場に売り込めるのですよ」

 まだ正常とは言えない思考回路ではあったが、一応理解しやすいように噛み砕いてくれているのだろう。彼の説明はちゃんと耳に入ってきた。

 実際にエリック様は伯爵という地位に珍しく兵士や騎士を率いて軍隊を持っている。国のものほど大きくはないはずだが、独自の技術を開発できればそれは強みになるだろう。

 そしてこの国の性産業が盛んなことは私ですら知っていた。娼館を目当てに旅行に来る人たちがいるほどらしく、エリック様の領地にもいくつか存在するとアレクシアさんに教わった。おそらくディミトリさんがそれらの指揮をとっているのだと思う。
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