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システィアーナの婚約者
39.貴族高等学校と騎士養成所
しおりを挟む王城に戻る予定で、街の様子を車窓から視察するのに、返りは違う道を通る。
より多くの場所をみるためでもあり、道程を変えることで、不穏分子などの待ち伏せを避けるためでもある。
「あ、騎士団?」
「そうですね。あれは、王宮騎士団ではなく貴族高等学校の騎士科を履修している見習い達の養成所みたいなものですね」
「エルネストさまもあそこに?」
カルルの説明に、ユーフェミアが少し身を浮かせるように窓の外を見る。
「ええ、エル従兄さまは、初夏の兵役まで、あそこで学ばれているはずですわ」
12歳を迎えた翌年の新春から貴族高等学校へ入学した時に幾つかコースが分かれていて、エルネストは、次男以下の騎士を目指す者が選ぶ騎士科ではなく、領主代行をしながら跡目を継ぐ長男のための、領地管理に役立つ商業・農業・工業・社交を学ぶ統治科へ進んだ。
兄ユーヴェルフィオを助けるためだ。
他にも、王宮で仕官するための文官科もある。
兵役の前準備として、15歳を迎えた翌年からは選択科目で剣術槍術や馬術などを修めながら、王立騎士団の騎士見習いを始めた。
今期の社交シーズンが終われば、義務兵役に2年間就く。
その間、ただの雑兵にならないために、騎士科の男子らと共に騎士団の上級騎士に師事したのだ。
オルギュストは最初から騎士科に入り、寄宿舎で上級騎士の従騎士をやりながら腕を上げ、高等学校の最終学年の17~18歳の2年間を兵役に充てた。現在卒業して19歳。辺境伯の領地で下級騎士として配属され、運良く小競り合いが起こった折に手柄を立て、小分隊の副官の真似事をさせてもらえるところまで行っている。いや、いたが、王命に逆らって昇進の道を絶たれたので、真似事の域を出られなくなってしまったのだが。
ユーヴェルフィオは跡取りの嫡男なので、兵役は免除である。
ちなみに、アレクサンドルもフレックも、公務の傍ら王宮騎士団で小隊長を務めるという形で、3年間従軍を経験している。
まったく経験がなければ、有事の際に、王家の代表としてまともに軍の指揮を執る事が出来ないからだ。
「ねえ、まだ陽が落ちるまでは時間があるでしょう? 覗いていってもいいかしら?」
ユーフェミアの希望で、急遽、王立学校養成騎士団を見学することになった。
護衛騎士の一人が先触れに入場し、後方の四人が、護衛のための配置を模索する。
「急に予定を変えてしまってごめんなさいね。あなた達の手間をとらせてしまったわ」
「お気になさらず。我々は、王女殿下達の身の安全を考えるのが仕事です。公務の後の余暇くらい、したいことをなさってください」
城に帰るまでが公務、と言えなくもないが、午前中の勉強と午後の視察予定を終えた今は、学生ならば放課後というべき時間。
公務帰りだが公務中ではない、余暇と言えないこともなかった。
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