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誰の手を取ればいいの
40.王子として弱い顔立ち?
しおりを挟む恥ずかしいやら驚いたやら。
真っ赤になったり真っ青になったり、頰に両手を添えて再び真っ赤になったり。
目まぐるしく顔色を変えるシスティアーナに、アレクサンドルが優しく(?)肩を支え笑みに目を細めながら、頭を撫でた。
この撫で方は⋯⋯!! さんでぃは、やはり、アレクサンドルだった?
「あ、あの、そんな、すみません。え、と、どうして? 女性だなんて思っていたなんて。その、あの頃からとてもお綺麗でしたから⋯⋯」
「ありがとう。でも、男が綺麗でも仕方がないんだけどね。母に似ているからまだ嫌いではないけど、あまり好きではないんだ。どうせならもっと父に似て、整っていてもせめて男性だと解りやすい顔つきがよかったな。フレックが羨ましいよ」
「そんなっ!? とてもお綺麗でいいと思いますわ。いつまでも見ていられるしわたくしは好きですも⋯⋯の」
一部の親しい人達には、可愛いもの綺麗なもの好きなのは知られてはいるし、自分の顔があまり好きではないと言うアレクサンドルに励ますような意味で言った言葉ではあるが、まるで恋情の告白のようにも聴こえる自分の発言に、システィアーナの顔に熱が集まる。
「本当? 嫌いじゃない? 女々しくて弱そうに見えない? 小さい頃は、ミアの姉だと思ってたんだよね? 王子として、頼りなげに見えないかな?」
どうやら、アレクサンドルにとって、綺麗な顔立ちはコンプレックスだったようだ。
システィアーナは、もう声は出せないほどあがっていて、とにかく首を横に振る。
「そう。本当に嫌いじゃないんだね。よかった」
言ってしまった言葉は引っ込められないし、悪いことを言った訳でもない。なによりアレクサンドルが嬉しそうだったので、ディアナと間違えていた事や少しの失言は取り返せなくても、綺麗な顔立ちが好きだと言ってしまった事は、よかったのだと自分を慰めた。
「今頃なんだけど。メリア? システィアーナの髪やドレスの寝皺なんかを整えてあげてくれるかな? 僕達は執務もあるし席を外すから。この部屋は仕掛けを外せないと開かないから、鍵は心配しなくていいから、仕度できたら自由に出ていいからね。それと、この部屋のことは、他の人には内緒だよ」
「かしこましました」
深々と頭を下げるメリアに笑みで頷き、ソファの傍に立て膝で座っていたのを立ち上がる。
「ティアのおかげで、かなり元気になれたよ。お茶と膝枕、それから可愛い寝顔を見せてくれてありがとう」
壁際で控えていたメリアやファヴィアンには聴こえない程度の小声で、システィアーナの耳元で謝辞を述べるアレクサンドル。
(これ以上は、心臓が持ちそうにありませんわ!!)
システィアーナの心拍数と緊張と困惑は、限界が近かった。
そんなシスティアーナの様子に、楽しげにアレクサンドルはファヴィアンを伴って部屋を出て行く。
焦っていっぱいいっぱいのシスティアーナに変わって、壁にしか見えない扉の仕掛けを外す手順は、メリアが見て確認していた。
どこから調達したのか、湯気を立てる鉄コテで、ソファに横になって出来たドレスの皺を伸ばしていくメリア。
その後も黙々と髪を整え、湯を絞った手巾で僅かに涙の跡のある目元から額の寝汗まで優しく拭い、先程まで寝ていた痕跡をひとつひとつ消していく過程で、システィアーナは再度、穴があったら入りたい羞恥に見舞われる。
(ただ寝顔を見られたとかそれだけじゃなくて、寝崩したドレスや髪、寝起きの痕跡の残る顔を間近で見られながら、恥ずかしい話をしていたなんて!! 目元とか浮腫んでなかったかしら。恥ずかしい!! 次にお目にかかる時、どんな表情をすればいいのー!?)
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