異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

文字の大きさ
230 / 294
Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

68.マジックマッシュルーム

しおりを挟む

 お昼休み(伍の刻)も、おやつ(六の刻)の時間も、景色のいい山小屋で休憩をとる。こんな山で物資を運ぶのも大変なんだろう、食事は山の恵みのシンプルなものだった。特に、何種類ものキノコをたくさん入れた濃いスープは、この街道一の名物料理で、ずっと昔から出汁をそのままに継ぎ足して作っていくらしい。
 鰻のタレみたいなものかな? 作り続ければ、悪くなったりしないのだろう、きっと。カレーのように酸っぱくなったりしないのだろうと自分を納得させ、口に含むと、きのこの風味が舌にまとわりつくような、濃厚なコクと味わいの、ポタージュやシチューのような感じのもので、とても身体が温まった。

《シオリは、そのアカヒラダケはあまり食べない方がいいと思うわ》
《そうネ。味が気に入っても、ヒトカケかフタカケで止めときなサイ》

 なんだか、怖いことを言うフィリシアとサヴィアンヌ。

《別に、心配するほどのことはないワヨ? ただ、醜態は晒したくないでショ?》

 心配するほどのことはないとは言いながらも、醜態は晒したくないだろうと言うのが、矛盾してない?

「あ、やはり、フィオリーナさんも、アカヒラダケは残されるんですね」
 ルーチェさんがさもありなんと言うふうに頷き、見れば彼女もお皿の端に溜めている。

「何かあるんですか? これ」
「そうねぇ、身体が温まるし、栄養もあるんだけど、身体が出来上がってない子供や、魔力の制御が弱い人は、あまり食べない方が、いいかもしれないわね」
 お母様も頷く。お皿の端に、特定の具材を選り分ける娘のお行儀の悪さを咎めないところを見ると、本当に食べないほうが良さそう。
 ていうか、子供にはお勧めできないようなシロモノを名物にする食堂って!?

「魔力酔いするというのが近いかな? 見えないものが見えると言い出したり、お酒に呑まれた人のようにフラフラしたり普段と性格が変わったり。一定時間が経てば効果は抜けて、特に弱い人はしばらく眠り続けるんだけどね。中毒性はないから、もし酔っても心配しなくていいよ」
 お兄さんも笑って言うけれど、それ、心配しなくていいとは思えません。麻薬と酔っぱらいの悪いところどりみたいじゃないですか?

「寒さが厳しい秋と冬だけ提供される特性スープで、春と夏はごく少量の付け合せ程度なんだが。体を温めるのと消耗した魔力や霊力を回復する効果の高さが、このスープが認められる理由だよ」

 冬は雪に覆われる山の北側街道を行く人が凍えたり魔力を消耗した時に、かなりの効果を期待できるのだという。
 中毒性はないとは言っても、そんな話を聞かされると、食べづらい。

 困惑した表情かおでアカヒラダケをり分けていると、
「俺は常に解毒作用が働いてるから、食べても問題はない。シ……フィオの分は俺が食うよ」
シーグが私のったアカヒラダケを、自身のお皿にひょいひょい移していく。

 有り余る魔力を自身の身体能力の強化に変換される狼族のシーグは、体調に異変をきたすような異物を取り込んでも、常に無効化したり、吸収せずに排出することができるという。

「確かに、味はいいんだけどな。温まるし」

 美味しそうに食べてる。温まる効果はそのままに、魔力酔いするのは解毒できるなんて都合のいい身体が羨ましい。

「私のもどうぞ?」
 食べ終わったコッペパンが乗っていたお皿にアカヒラダケを積み上げ、シーグに差し出すルーチェさん。

「私も、今は魔力切れを起こしてる訳ではありませんから、摂り過ぎは良くないと思うので」
 たぶん、魔力過剰に酔うタイプなのだろう。恥ずかしそうに、シーグにささげる。

 ちなみに、ご家族は、ルーチェさんほど魔力に敏感ではなく、今まで悪酔いしたことはないという。
「そういえば、ハシュ兄様もこのきのこには弱かったです」

 詳しくは聞いてないけど、この巡礼旅の途中で会えるはずだと言う離れて住むお兄さんは、ハシュさんと言うらしい。
 ちゃんと、件の紅茶入パウンドケーキは、可愛いレースペーパーでラッビングされて、ルーチェさんの手荷物に入れられている。

「ハシュ兄様に会うのが楽しみです」

 花がほころぶように愛らしい笑顔を咲かせるルーチェさんは、改めて美少女だなぁ、この人と姉妹に間違われるなんて恐れ多いな、とか思った。




しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》 どんなスキル持ちかによって、人生が決まる。生まれ持ったスキルは、12歳過ぎから鑑定で見えるようになる。ロマドは、4度目の15歳の歳の鑑定で、『スキル錬金』という優秀なスキルだと鑑定され……たと思ったが、錬金とつくが熟練度が上がらない!結局、使えないスキルとして一般スキル扱いとなってしまった。  どうやったら熟練度が上がるんだと思っていたところで、熟練度の上げ方を発見!  スキルの扱いを錬金にしてもらおうとするも却下された為、仕方なくあきらめた。だが、ふと「作成条件」という文字が目の前に見えて、その条件を達してみると、新しいスキルをゲットした!  天然ロマドと、タメで先輩のユイジュの突っ込みと、チェトの可愛さ(ロマドの主観)で織りなす、スキルと笑いのアドベンチャー。

処理中です...